イベントレポート

一風堂からタトゥー業者まで、Googleが認める世界の「スモールビジネス」

 2000年10月に米国でサービスを開始した検索連動型広告「Google AdWords」。世界で初めてAdWords広告を出稿したのは、米国東海岸のロブスター通販業者だったが、その後も中小規模の「スモールビジネス」を展開する企業が続々と出稿している。

 17日にシンガポールで開催したプレスカンファレンス「Helping Small Business Think Big」では、Googleの広告を導入してビジネス拡大に成功したアジア太平洋地域の中小企業を招待。「スモールビジネス」の成功者たちがその経緯を話した。

海を超えたインドの冷蔵庫マグネット、日本の100店舗で販売されるまで

社長のVivek Prabhakarさん

 インドの土産物を販売するChumbak社は、社長のVivek Prabhakarさんと、妻のShubhraさんが共同で設立。世界中を旅行するのが趣味だったという2人は、旅行先で土産物を買っては家族や知人に渡していた。特にお気に入りだったのが冷蔵庫用のマグネットだ。

 そんな中、インドには著名な観光地や人物をモチーフにした冷蔵庫用マグネットがないことに気付く。そこで2009年、自ら製作したマグネットとともに、洋服やアクセサリーなどインドをテーマとした土産物の販売を開始した。現在は国内150店舗で取り扱われるようになった。

 通販サイトを開設したのは2010年4月。これにあわせて、Google AdWordsに出稿したところ、店舗に来たことがない顧客からの注文が続々と寄せられ、手応えを感じた。さらにVivekさんを驚かせたのは、日本からの問い合わせだった。

 マグネットに興味を持った日本人が、自身の店舗で販売したいという相談だった。サンプルを送った8カ月後には、日本での販売がスタート。現在では東京や横浜、京都などで100店舗で販売されている。「初めての注文ではゼロが2つか3つ多いのではと疑った(笑)」。

Chumbak社が販売する冷蔵庫用マグネット

24カ月待ちの人気タトゥーショップ、AdWords効果で顧客の7割は外国人

Tattoo TempleジェネラルマネージャーのChris Andersonさん

 冷蔵庫マグネットのような物販であれば国境を超えることも考えられる。しかし、輸出ができないタトゥーを手がける香港のTattoo Temple社は、Google AdWordsを通じて海外からのファンを増やすことに成功した。

 2006年に設立されたTattoo Templeは、中国書道のカリグラフィーをモチーフにしたタトゥーで人気を集めている。自社サイトでは彫り師が手がけた15万件以上の作例を掲載するほか、ビデオ電話での相談に応じたり、iPhoneアプリを通じてタトゥーの啓発も行なってきた。

 「タトゥーはニッチ中のニッチな商売。それだけに自社サイトをショーケースとして活用するだけでなく、ユーザーの啓発につながる情報を提供することを心がけている。」(Tattoo TempleジェネラルマネージャーのChris Andersonさん)

 プロモーションとしては、Google AdWordsやYahoo!リスティング広告、Facebook、Pinterestなど「ありとあらゆる手段」で自社のサイトをPR。世界各国で5万語のキーワードを用いて、テキストや動画などの広告を展開してきた。

 その中でも最も手応えを感じたのがGoogle AdWordsだったとChrisさん。「自分が決めた予算内で管理できるのが良かった。ユーザーの反応を見てキーワードを試行錯誤して変えたら、AdWords経由の売り上げがものすごいことになった」。

 プロモーションの結果、2009年と比べて売上高は3倍に。当時は1日5〜6件だった問い合わせが、現在は100件を超えた。香港以外の顧客は70%を占め、欧米やオーストラリア、シンガポール、ロシア、日本からも訪れている。Tattoo Studioで最も人気の高い彫り師のJoey Pangさんを指名するには、24カ月待ちの状況だという。

Tattoo Templeの作例

倒産寸前のダンボール通販業者を救ったのはわずか3ドルのAdWords

 マレーシアのクアラルンプールに拠点を構えるBoxman社は、カスタムサイズの段ボール箱をECサイトで販売する会社として2010年9月に設立された。当初は、限られたサイズのダンボールを用意し、それから徐々に少量かつ多様なサイズのダンボールを扱おうとしていた。

 しかし、サイト開設から3カ月間の訪問者はほぼゼロ。「口コミで自分たちのサイトを見つけてもらえるだろう」と目論んでいたが、期待はずれに終わってしまった。そこで営業スタッフを雇用してマレーシア中でダンボールの潜在購入者を開拓したものの、損失だけが増えていったという。

 3カ月間の無収入状態が続く中、目を向けたのがGoogle AdWordsだった。ネットに詳しくなかった創業者のEugene Fongさんは、ヘルプページを見ながらAdWordsを独学。その後、「1日10マレーシアリンギット(RM)」という予算の上限を設けてAdWords広告を開始した。米国ドルに換算すると3ドルである。

 10RMのAdWordsを実施したその次の日には、Boxmanに初の問い合わせがあり、その1週間以内に初の売り上げが計上された。それから2年後の現在では、Boxmanへの問い合わせ件数は400%増え、売上高は毎月30%の成長を続けている。サイト訪問者の70%はAdWordsを経由しており、広告費1RMあたり21RMの収益をもたらしているのだという。

BoxmanのECサイト

競争激化のラーメン業界、「一風堂」初のネット広告が売り上げの起爆剤に

一風堂を運営する株式会社力の源カンパニー社長室の加島輝光さん

 福岡県に本拠を置く博多ラーメンの人気店「一風堂」は、1985年10月にわずか10席のカウンターの店で始まった。現在は約200人の社員を抱え、ニューヨークやシンガポール、クアラルンプール、シドニーにも出店している。

 海外展開を進める一方で、ラーメン競争が激化する国内では売り上げが停滞。3年連続で国内売り上げが減少したことを受け、2012年夏に一風堂としては初のオンライン広告に踏み切った。

 手法としては、Googleのディスプレイ広告を国内で展開。時間帯は平日の正午前後を指定し、フード関連サイトやニュースサイトを対象に配信した。「お昼時のビジネスパーソンに訴求したかった」(一風堂を運営する株式会社力の源カンパニー社長室の加島輝光さん)。

 初のオンライン広告で費用対効果を測定したかったという一風堂では、店舗で告知していない特別メニューをディスプレイ広告に表示。その結果、サイト訪問者が通常時で平均50%増、最も多い日で3倍に増えるなどの成功を収めた。

 その後は、サイトを訪問してクーポンを印刷すれば「替え玉無料」という導線を設けたオンライン広告も展開。こうした施策や店舗でのキャンペーンなどが奏効し、前年比10%減だった売り上げが5%増えた。今後は海外でのオンライン広告も検討するという。

(増田 覚)