イベントレポート

Helping Small Business Think Big

Googleアジア太平洋地域社長「LINEよりもスモールビジネスに注目すべき」

 Googleは17日、アジア太平洋(APAC)地域の中小企業の取り組みを紹介するプレスカンファレンス「Helping Small Business Think Big」をシンガポールで開催。APAC地域の社長を務めるカリム・テムサマニ氏が登壇し、ウェブを活用して大企業に挑む中小規模の「スモールビジネス」の可能性の大きさを強調した。

カリム・テムサマニ氏

スモールビジネスを始めるなら「今」

 今やアジア太平洋地域の中小企業は、大企業と同じ土俵で戦えるようになったと語るテムサマニ氏。例えば、15年前にフィリピンで起業した人は、新聞やテレビで広告をするには多大な費用が必要となり、誰が広告を見たかを把握するのは雲をつかむような話だった。

 これに対して現在は、Google AdWordsを使えばテレビCMの数十分の1の予算で世界中のネットユーザーに情報を発信できる。地域やキーワードを絞って配信したり、広告の反応を把握することも容易だ。「あらゆる企業にチャンスが与えられる時代になった。特にスモールビジネスを始めるのは今がチャンス」とテムサマニ氏は話す。

 スモールビジネスの重要性は数字にも表れている。アジア太平洋地域の国々では全体の80〜100%が中小企業が占めているほか、同地域の労働人口の8割近くが中小企業で働いている。「これまでアジア地域では財閥などの大企業が寡占していたが、ネットによってスモールビジネスが後押しされるようになった」。

アジア太平洋地域の国々では企業の80〜100%が中小規模となっている

 例えば、インドでお土産をネット販売するChumbak社は、Google AdWordsに広告を出稿したことで、海外の購入者が増加しただけでなく、日本で商品を販売するまでに業務を拡大した。香港でタトゥーショップを営むTattoo Temple社もAdWordsを展開した結果、輸出できない商品であるにもかかわらず、海外からの引き合いが増えたという。「つまり顧客を探すのではなく、顧客があなたを探すのだ」。

 「インターネットを活用すれば顧客を探せるし、物流を考慮せずに製品を届けられる。大きな投資は不要で、大量の商品在庫を抱える必要もない。もはや工場で大量に作った商品を店舗に並べて買ってもらうのを待つ時代ではない。スモールビジネスはいまや世界中の顧客を相手にすることができ、つまり巨大なビジネスとなっている」。

アジアで注目すべきはLINEではなくスモールビジネス

 スモールビジネスは、Google Appsをはじめとするクラウドサービスを活用することで、運営コストを抑えられるようになった。こうしたことからシンガポールでは、Googleに出稿する中小企業の数が、米国を上回っているという。テムサマニ氏は、「アジアで次の成長を見るときに、LINEやFacebook、Googleを考える前に、何百万の中小企業がネットを使って大きくなっていることに注目してほしい」と呼びかけた。

 「ウェブがビジネスを成長させる。それは農業や医療、ラーメンであっても、あらゆる産業に当てはまる。中小企業はインターネットを活用することで、従来の伝統企業との差がなくなる。Googleはこうした中小企業のビジネスを大きなビジネスに変える力となりたい」。

 「Google AdWordsは、中小企業がオンライン広告を出稿するにあたって最も簡単に、コスト効率が高くキャンペーンできる方法のひとつ」と説明するテムサマニ氏。次の段階では、YouTubeの動画広告やGoogle AdSenseを使って自社ブランドの認知を高めることもできると話す。

 中小企業を対象としたオンラインマーケティングは、FacebookやYahoo!も注力している。この点については、「多くのプレイヤーが参加するほど中小企業ビジネスが活性化する」と歓迎のコメント。日本の中小企業に関しては、「現在もGDPへの貢献度は大きいが、Googleの各種ツールを通じて海外進出のチャンスがある」と期待を寄せた。

(増田 覚)