テレワークグッズ・ミニレビュー

第145回

インパクト/ドリルドライバーを使い込んで発見した、DIYライフの満足度を爆上げできる優秀ビット

インパクトドライバー、ドリルドライバー、電動ドライバーと組み合わせて使うのにオススメのビットを探してみた

 以前、ドリルドライバーとインパクトドライバー、どっちを選ぶかをテーマにレビューをお届けしたが、なかなか大きい反響があった。コメントを見ていると、筆者的には意外に多かったのが、どちらか選ぶならインパクトドライバー、という声が目立った印象だ。その理由としては、インパクトドライバーはコントロールレバーの回し具合で調整ができて、どんな状況でも対応できるから、といった意見があった。

見た目はそっくりだが使い勝手は結構違うドリルドライバーとインパクトドライバー

 前の記事を読んでいない人のために簡単に説明すると、ドリルドライバーというのは、電動ドリルにドライバーとしての機能も持たせたもので、ドリルと違って逆回転ができるのと、クラッチ機能があって、ある程度の負荷がかかると回転が止まるようになっているもの。ネジを締め込んだときに締め付け過ぎを防げるというわけだ。

 一方のインパクトドライバーはというと、ある程度の負荷がかかると、内部のインパクト機構が働いて、ガツンガツンと回る方向に衝撃を与える。木材などに太いネジ、長いネジを締め込む時に、衝撃によって最後まで締め込むことができるのを目指したもの。

 前の記事で比較したマキタのペン型インパクトドライバーと、同じくマキタのペン型ドリルドライバーだと、見た目はそっくりなのだが、スイッチ部分に大きな違いがあって、ドリルドライバーは、高速と低速の2段階の速度調整ができるものの、あとはオン・オフのみ。それに対してインパクトドライバーは、スイッチを回す度合いによって柔軟に速度を調整できる。

 だから、ちゃんと使いこなせれば、インパクトドライバーのほうができることは多いのかもしれない。ただ筆者が長年ドリルドライバーのオン・オフスイッチに慣れてしまっているので、インパクトドライバーでもつい全開マックスにしてしまって、結果的にネジをなめてしまったり(ネジ頭の十字の溝がつぶれてドライバーがかからなくなること)、ネジそのものをねじ切ったりしてしまっていたわけ。

 ただ、前回の記事の後、読者の皆さまの反応を読んでから、インパクトドライバーを使い込んでみところ、確かに慣れてくるとこっちはこっちで使いやすく感じてきた。

 結局はというと、ドリルドライバーで下穴を開けて、インパクトドライバーでネジを締めるというふうに、“どちらか”ではなく、“どちらも”活用している。見た目そっくりな工具だが、2本あっても無駄にはならなかった。

見た目はそっくりだしできることも似ているが、それでもそれぞれの意味がある

 とはいってもなかなかDIYレベルで2本ともそろえるというのはハードルが高いと思うので、今回は組み合わせるビットによって、それぞれのメリットを生かし、デメリットを防ぐ方法を紹介したい。

インパクトドライバーをドリル代わりにして下穴を開けたい!!

 まずインパクトドライバーだが、ドリルドライバーとは名前も違うとおり、基本的にはドリルでの穴開け向きの道具ではない。というのも、インパクトの衝撃でドリルの刃が折れることがある。

 ただし、まったく無理、というわけではなくて、先ほどのスイッチの微調整でゆっくり回すようにすれば、回転中のインパクトを抑えられて、ドリルの刃を折らずに穴開けができる。そんなわけで、ベテランであればインパクトドライバーで穴開けもできるというわけだ。だが、回転速度を下げる分、ドリルドライバーでの穴開けと比べると作業に時間がかかってしまう。

インパクトドライバーの速度調整機能を使ってゆっくり回転させれば、ドリル刃を使うこともできる
ドリルドライバーはダイヤルをドリルの絵に合わせれば、普通の電動ドリルとして使える

 そんなわけで、穴開けがメインの人ならやっぱりドリルドライバーを使った方が幸せになれる。

 ただし、ネジの締め付けがメインの人でも、穴開けしたいときがある。それが下穴を開ける時だ。インパクトドライバーであれば、下穴がなくても締め込めてしまうが、そうすると木のほうが割れてしまいがち。加えて真っ直ぐねじ込むためにも、できればネジを打ち込む前に下穴を開けておきたい。

 そんなときにオススメなのが、下穴錐(したあなきり)と呼ばれるモノ。筆者も全ての製品を確認したわけではないが、多くの六角軸の下穴錐は、インパクトドライバーでも使えるものとして売られている。

 実は筆者、今回調べるまで、下穴は普通のドリルを使っていた。使っていたのがドリルドライバーだったので、別にそれで困っていなかったが、下穴用の細いドリルだと長さも短いので、長いネジを打つときには長さが足りない、といったことが起きていた。

 それで、記事執筆時にいろいろと調べていたところ、このインパクトドライバーでも使える下穴錐という存在を知るに至った。正直インパクトドライバーで下穴は開けられないと思っていたので、これには結構びっくり。

 ということで実際に買ってみた。コーススレッドぐらいだと3mmの下穴錐がちょうどいいらしいが、筆者の場合だともっと細いネジを使う機会も多いので、アネックスのカラーハイス下穴錐 3本組(ACK3-2253)を購入した。これは2mm、2.5mm、3mmがセットになったもの。ハイス鋼を使い、刃先を二条溝構造とすることで折れにくくしているのだとか。

アネックスのカラーハイス下穴錐 3本組(ACK3-2253)

 一般的なドリルが、ドリル刃の部分の太さは変わらず、先端だけが錐状になっているのに対して、下穴錐は根本部分から先端に向かって徐々に細くなっていく形状。

下穴錐の先端。先に行くほど細くなっていて、しかもインパクトで折れにくい形状になっている
電動ドリルに加えて、インパクトドライバーでも使えるとの表示

 先端が細いので、穴を開ける中心点に先端を当てやすいし、穴の開け始めがいとも簡単に入っていく。さらに木ネジを締めるような感じで、回転させると自ら中に入っていこうとして、通常のドリルよりも簡単に穴が開けられる印象だ。

先端が細いので位置が合わせやすい
回転させるとねじ込まれるようにスルスルと入っていく

 実際のところ、インパクトドライバーを使っても、引っかからずに入っていくので、インパクトが発生しにくい感じだ。

 これはインパクトドライバーじゃなくてもかなり使いやすい。通常のドリルだと、センターを合わせるのにも気を使うし、いざドリルを回し始めると、その拍子にわずかに刃先が暴れて穴の位置がちょっとだけずれるようなこともあったが、下穴錐だと、開けたい位置を狙って、ずれることなくスムーズに穴が開けられる。これは結構感動だ。

 もちろん下穴を開けておけば、ネジを打ち込むときにも曲がることがないし、インパクトのパワーで木が割れることも防げる。インパクトドライバーに限らず、ドリルドライバーのユーザーも、もし普通のドリルを使って下穴を開けているなら、下穴錐を使ってみると、これまで感じていた不満が一気に解消するのでオススメだ。

ドリルドライバーにダイヤモンドで滑りにくいビットを

 続いてドリルドライバーの不満点だが、意外とドライバーのカムアウトをしがち、という点だ。カムアウトとは、ドライバーを回しているときに先端が浮き上がって外れてしまう現象で、繰り返していればネジの頭をダメにしてしまう。

 手回しのドライバーだと、筆者はPB SWISSのものを愛用していて、もう本当に溺愛するぐらい気に入っているのだが、電動ドライバー向けのビットとなると、これまで気に入ったものが見つかっていなかった。PB SWISSからもビットは出ているが、それらはハンドツール用のビットで、電動ツール向けのビットは筆者の知る限りない。

 なにか無いかといろいろ調べた結果、ダイヤモンドの微細な粒子を表面につけることで、それがネジに食い込んでカムアウトしにくくする、というビットを発見した。

 それが「アネックス ダイヤモンド龍靭ビット」という製品。電動ドライバー向けのビットだと、磁力化することでネジが先端にくっつくようにしているものがあるが、この製品は磁力化していないもの。それでも先端がネジに食い込むため、先につけたネジが外れないのだという。

アネックス ダイヤモンド龍靭ビット

 ハンドツールでも、ドライバーの先端をギザギザにすることでカムアウト防止を謳う製品はあって、以前に使ったこともあるのだが、筆者の経験上、あまり効果的だと感じたことがない。そのためこのダイヤモンドの粒子というのもどこまで効くのかと懐疑的だったのだが、調べてみると結構口コミも良い。先入観で判断するのもよくないし、試してみることにした。

 この製品の面白いところとして、プラスのサイズが細身の+1と一般的な+2が用意されているのだが、さらに先端の形状として、一般的な太さで先端の欠けに強いという「タフ」に加えて、先が細くなっていて、ネジに刺すときに溝が見やすい「スリム」が用意されているということ。さらに長さも65mm、85mm、110mmの3種類が用意される。

長さは65mm、85mm、110mmがある
おなじ+2で左がスリム、右がタフ。これだけ太さが違う

 ペン型ドリルドライバーと組み合わせるなら一番短い65mmが使い勝手が良いと思うが、110mmがあると、入り組んだ場所で作業しやすいほか、以前紹介した電動ドライバーなどと組み合わせるのにもオススメだ。

ペン型ドリルドライバーとインパクトドライバーに65mmと110mmをつけてみたところ
電動ドライバーには85mmか110mmがちょうどよさそう

 ということでまずは噛み込み具合をチェックすべく、ネジにはめてみる。

 するとくっついた!! ちょっとびっくりするぐらいよくくっつく。グッと強く押しつけるようにすると噛み込むような感じになって、引っ張らないと取れないぐらいになる。

 磁力を使うことでネジが外れにくくする(この場合はカムアウトを防ぐのではなく、ネジを保持する目的)方法は良くあるが、これは磁力ではない。そこで磁石が付かないステンレスのネジでも試してみるが、こちらもしっかりとくっついた。

先端をマクロレンズで撮影してみた。が、特別ザラついているような様子は見られない。かなり細かい粒子なのだと思われる
ご覧のとおり、しっかりとネジを保持してくれる
こちらはステンレスのネジだが、ネジ側を持ってビットをぶら下げる形にしても落ちないほどしっかりくっついている

 あまりにしっかりくっつくので、どこまでいけるかと、ネジの方を持って、ペン型インパクトドライバーをぶら下げてみた。最初はちょっと持ち上がったところで落ちてしまったが、さらにグイッと強くネジに差し込んでみたところ、持ち上げられるどころか、その状態で多少振っても落ちないほどになった。これはスゴい!

なんとインパクトドライバーごと持ち上げられてしまった。しかもちょっと振ったぐらいでは落ちない。ネジはステンレスなので磁力ではない

 続いて実際にねじ込んでみる。これは条件をそろえるのが難しく、どれぐらいしっかり抑えるかでカムアウトのしやすさは変わってしまうので、比較するのは難しいが、わざとあまり力を掛けないでやってみても、カムアウトしにくい印象だ。

 また、緩めるほうもやってみる。緩めるときは抑える力がどうしても弱くなるので、カムアウトしがち。前回のレビューでも、緩める時にドリルドライバーでコツコツとカムアウトしている動画を見てもらった。

 しかしダイヤモンド龍靭ビットだと、しっかりと噛み込んでいる感じで、そう簡単にはカムアウトしなさそうだ。

抑える力を弱めにしてみてもカムアウトすることなくネジを締め込んだり緩めたりすることができた

 もちろん絶対にカムアウトしないわけではないので、ちゃんとカムアウトしないようにしっかりと持って作業すべきなのは間違いないが、作業環境によっては力が入れにくい状況もある。これはそんなときの保険としても頼れる印象だ。

 ただし、ビット単体としては決して安い方ではない(と言っても数百円というレベルだが)。だから、毎日何百本もネジを締めて、ビットも消耗品という人にはオススメしにくいかもしれない。むしろ、1つのビットをずっと使い続けるようなアマチュアDIYerにこそ、オススメしたい製品だ。

 素人に高い工具は不要、という意見があるのも分かるが、筆者は素人ほど良い工具を使った方が良いと思っている。プロなら工具がダメでもテクニックでなんとかできるかもしれないが、素人にはそれはできないからだ。

 しかもアマチュアのDIYだと、使用頻度もプロに比べれば低いので、一度買えばそれなりに長く使える。その間、もし普通のビットだったら何回カムアウトするのか、しかもカムアウトするとビット側も傷が付くので、ますますカムアウトしやすくなる。何度もカムアウトしてネジの頭がつぶれれば、今度はその外れなくなったネジを緩めるための工具を買うことになるかもしれない。それは無駄な出費だし、さらに何度も失敗すればDIYも楽しくなくなる。

 だからこそ、素人ほどこうした良い工具を使うことで、失敗が減らせるし、失敗が減って作業がサクサク進めば、DIYがもっと楽しくなる、と個人的には思っている。

 というわけでドリルドライバーはもちろん、インパクトドライバー、電動ドライバーでもこのビットはかなりオススメと言えそうだ。

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