テレワークグッズ・ミニレビュー
第123回
ネジザウルスGTよりスゴい!! “なめたネジ”を回せるレスキュー工具を集めて一番オススメな神ツールを選んでみた
2025年3月14日 12:12
ネジの頭がなめてしまって困った経験がある人は少なくないのだろう。というのも先日ENGINEER(エンジニア)の「ネジザウルス」のセール情報を掲載したところ、けっこうな反響があったのだ。
自作PCの組み立てや通信機器のメンテナンスなどでも使う工具、一旦こだわり出すと、いろいろと試したくなるものだし、語りたくなる気持ちもよく分かる。筆者はクルマも自転車もほぼDIYで整備しているので、仕事部屋には大小3つのツールチェストが並んでいる。良い工具、適した工具を使うことは、DIYでの失敗も防げるし、不意なケガも減る。だから、工賃を払ったつもりで工具はケチらずにそろえてきた。
そして件のセール情報で紹介された「ネジザウルスGT」も7~8年前に購入して使っている。だがその後にもっとよさそうな工具が登場しているので、今回は工具マニアの筆者が、なめたネジを外すにはこれがオススメ! と思える工具を見つけてみたい。
ペンチタイプのネジザウルスGTは使い方が難しい
ネジザウルスGTとは、ペンチ状の工具だが、通常のペンチとは別もので、ネジの頭がつかみやすいように、先端を工夫してあるもの。
工具としてはとんでもなく大ヒットした商品で、ネジザウルスGTの登場で、工具メーカーのエンジニアの社名は一躍有名になった。
なので、決して悪い工具ではないと思う。のだが、筆者が不器用だからなのか、使い方が難しくてあまり活用できていない。つかみながら回す、というのがなかなかむずかしいのだ。そしてネジをつかんで回すなら、他にもっと適した工具を持っている。それがバイスプライヤーという工具だ。
バイスプライヤーとは、ペンチなどと同様にものを挟むプライヤーの一種なのだが、ロッキングプライヤーとも呼ばれるとおり、挟んだ状態でロックすることができるのが特徴。
ペンチタイプのネジザウルスGTの場合、ネジの頭をグイッと挟みながら、同時に回す必要がある。だが、ネジの頭が薄いタイプや作業しにくい場所にあると、これがなかなか難しい。
それに対して、バイスプライヤーであれば、まずはネジの頭をガッチリとロックすることに専念できる。「つかむ」と「回す」を分業できるので、失敗も減るし、結果的に作業時間も短縮できる。
できる結果が同じでも、より簡単に確実にできるというのは、工具の本質としてとても重要なことだ。
ネジザウルスはネジザウルスでもバイスプライヤーのネジザウルスVP
そして実は、ネジザウルスにもこのバイスプライヤータイプのものが存在する。それが筆者がネジザウルスGTを買った直後に登場した「ネジザウルスVP」シリーズだ。
基本的には一般的なバイスプライヤーとほとんど変わらないが、違うのはつかむ部分の溝の入り方。普通のバイスプライヤーの場合、つかむ部分のギザギザが横方向のみなので、縦につかんで回すというのにあまり向かない。その点、ネジザウルスは縦方向にも歯があるので、縦につかんで回すのにも適しているというワケだ。
それと、小さなネジに合わせて小ぶりなサイズがラインアップされているのも面白いところだ。
さて、そのネジザウルスVPシリーズだが、バリエーションが豊富でどれを選ぶべきか悩むかも知れない。
ただ、あくまで筆者の主観だが、オートアジャストタイプはあまりオススメできない。というのも、C.H.HANSONというメーカーのオートアジャストタイプのバイスプライヤーを持っているのだが、コレが買ったもののほとんど使っていないのだ。
簡単にバイスプライヤーの使い方を説明すると、通常のバイスプライヤーは、柄の部分にある調整ネジを締め込むことで、アゴのしまり具合を調整できる。つかむ相手の大きさや、どれぐらいガッチリつかみたいかによってそこを調整するわけだ。
これがオートアジャストタイプの場合、相手の大きさにかかわらずアゴの開度を自動調整してくれる。
ただし開度は自動調整できるものの、挟みこむ強さの度合いは、内側にある小さいネジを回して調整する必要があって、ガッチリ強くつかみたいのか、あまり傷つけないようやんわりとつかみたいのかによって、調整する必要がある。ただ、その具合がいまひとつ分かりにくく、なかなかに調整が難しいのだ。
仕事で毎日同じような作業をくり返すような場合には向いているのだろうが、毎回つかむモノが変わるような個人のDIYだと、結局その都度調整する必要があって、だったら調整しやすいスタンダードなバイスプライヤーのほうがいい、となってしまう。
というわけで、オートアジャストタイプ以外のモデルの中から、あとはサイズが選ぶポイントになるが、本誌読者だとおそらくPC回りの作業が多いかなと思ったので、小さいモデルのネジザウルスVP-1と、狭いところでも作業しやすそうなミドルノーズタイプのネジザウルスVP-3をまずは選んでみた。
期待のネジザウルスVP! だがしかし落とし穴が……
で、届いて早々だが、ちょっと残念なお知らせになってしまった。
うーむ、買う前に写真を見れば気がつけたかもしれないが、まさかそんなタイプがあるとは思わずまったく気がつかなかった。
というのが、なぜかロック解除レバーがない。
一般的なバイスプライヤーの場合、調整ネジの付いていない側のハンドルにもうひとつのレバーが付いていて、それを内側に倒す(メーカーによっては外側に開くものも)ことでロックを簡単に解除できるようになっている。そうしないと、強くロックした場合に、開くのが大変なのだ。
それがネジザウルスの場合、解除レバーがないのでチカラワザで開くことになる。あまり強くロックしてしまった場合は、調整ネジを緩ることで、開きやすくできる。ただしその状況だと調整ネジを回すのも固いので、六角レンチで緩める必要がある。かといって毎回六角レンチで緩めるのは面倒で、解除レバーの使い勝手を知っている身としては、ただただ「なんで?」と思ってしまう。
これはあくまで筆者の推測だが、同社はペンチなどでも滑りにくいグリップにこだわっているので、樹脂製のグリップをつけることを優先したのではないかと思う。バイスプライヤーはあくまでつかんだ状態をロックできるだけなので、つかむ力は握力だよりになる。その点、樹脂製で適度に太く、滑りにくいこのグリップだと、力が入れやすく、サイズの割に強くロックしやすい。特に普段工具を使い慣れていない人だと、樹脂グリップのほうがよろこばれるのかもしれない。
良くできているのは、調整ネジの部分に六角レンチが掛けられるようになっているところだ。先ほども書いたとおり、強くロックした状態だと調整ネジが固くて回らないのだが、ここに六角レンチを掛けることでそれができるようになっている。解除レバーがない代わりに調整ネジで対応する、ということなのだろう。
だからこれはこれで1つの正解なのだろうが、解除レバーの使い勝手に慣れた身としては、やっぱりちょっと残念に感じてしまう。
筆者はエンジニアの工具は好きで、他にも同社の工具を使っている。価格は高すぎず、それでいてクオリティは高くて、普段は工具をあまり使わないような人にも広くオススメしやすい工具のメーカーだ。おそらくこの製品も、そういったあまり工具を使わない人に向けて作っているのかもしれないが、筆者のニーズにはちょっとハマらなかった。
ズバリ! コレがオススメの神ツール!!
と、ここで終わってはなんなので、他にも探して、これはオススメできる、と思えたものを見つけたので紹介したい。
それが、スリーピークス技研というメーカーの「トラスねじバイス」というシリーズだ。スリーピークスは金物で有名な燕三条にある日本の工具メーカーで、実は筆者はあまり知らなかったのだが、工具好きの間では最近注目のメーカーらしい。
こちらもバイスクリップタイプのネジ外しに特化した工具で、コンセプトはネジザウルスVPシリーズとほぼ同じだ。こちらにはオートアジャストタイプはなく、サイズは大小、そしてロングノーズタイプが用意される。こちらは一般的なバイスプライヤーと同様にグリップも金属で、解除レバーが付く。
それと口先の形状がすこし特徴的で、ネジザウルスは基本的に縦でつかむことを前提に作られているのに対して、こちらは横でもネジをつかむことを想定して作られている。特にその形状が、ウォーターポンププライヤーのようなゆがんだ菱形になっていて、どんなサイズの円形でも三点で支持できるようになっている。実のところ、バイスプライヤーはその構造上、縦につかんで回す、つまりねじる方向に対してはあまり強い工具ではないので、横でつかめるならその方が使い方としてはオススメでもある。
ということで、全長130mmとコンパクトな「DS-130T」、標準的な200mmサイズの「DS-200T」、そして先細でロングノーズタイプの「DS-165T」の3サイズとも買ってみた。
で、ここまで遠回りだったので、結論をサクッと言ってしまうと、PCの自作などがメインであれば、オススメは一択、先細でロングノーズタイプのDS-165Tだ。
筆者の場合、クルマもいじるし、これまで使っていたバイスプライヤーが200mmサイズだったこともあって、同シリーズのなかで一番大きいDS-200Tもいいんじゃないかと思っていたが、眠っていたデスクトップPCを出してきて中のネジを緩めてみたところ、圧倒的にハマったのはDS-165Tだった。
というのも、基板のネジの場合、ネジの周囲にコネクターの出っ張りがあったり、カードがすぐ横にあったりで、けっこう手狭で奥まった場所にネジがあることが多い。
そうした場合に一般的なバイスプライヤーだと、周囲のコネクターなどにぶつかってしまってネジまで届かないことがあるが、先細のDS-165Tであればそういった狭い場所でもネジにリーチできる。
また、DS-165のようなロングノーズタイプの場合、先端でつかんだ場合にロックする力が少し弱くなってしまうが、こちらも杞憂で、PCで使われるようなネジであれば、そもそもそんなに固く締まっていないので、全然問題なさそうだ。
もっと大きなネジや、さび付いてガッチリ固着しているボルトなどの場合は、大きいサイズのDS-200Tがあったほうが良いと思うが、PCまわりに限定するのであれば、DS-165Tで十分だと思う。
もしネジザウルスの中で選ぶのならミドルノーズのVP-3だろう。こちらも先細なので狭いところのネジもつかみやすい。
ただ、どちらかを選ぶなら、やっぱりスリーピークスのDS-165Tがいいと思う。
というのも、狭いところでの作業の場合、何度も持ち替えて少しずつ回さなければいけない状況があって、その時に、解除レバーのあるスリーピークスだと、つかんで、離して、という作業を片手で簡単にできて、作業効率はこっちのほうが断然いい。
それと先ほど横でもつかめると書いたが、DS-165Tの場合先端のほうでも横づかみができるのに加えて、根本の方でも横でつかめるようになっている。根本のほうが大きい力でロックできるので、大きなボルト、固いボルトを緩めたいときは、根本を使うことで対応できるわけだ。
もちろんもっと狭い場所もあるし、ネジの頭の形状、固着具合によっては外せないこともあるだろう。ただどれか一つを選ぶのであれば、このDS-165Tが一番オススメだ。
でもまずはネジをなめないためのテクニック
なめたネジを緩める工具は他にもいろいろとあるが、まず第一になめないことが重要だ。
そのためのキホンとなるのがドライバーの使い方。ご存じの方も多いと思うが、ドライバーを使うときは押す力と回す力が7:3になるようにする。まぁ厳密に7:3である必要はないが、要は回す力より押しつける力が大きいことが重要だ。
そしてホームセンターや100円ショップで売っている組みドライバーは使わないほうがいい。というのも先に書いたとおり押す力が7なのだ。あの小さいグリップではそんなに強く押せないと思う。また、お持ちのドライバーが古くて、刃先が丸まっているようなら新しいものに買い換えよう。
筆者のオススメのドライバーは、PB SWISS TOOLS製のもの。価格はホームセンターで売られているようなものよりは高いが、刃先の精度が高く回す力が伝えやすいし、力を強く掛けても、粘る感じがあってなめにくい。なめにくいと刃先の摩耗も減るので、結果的に長く使えて、結果的にはコスパがよくなる。
筆者の場合だが、ざっと15年ぐらい使ったところで、そろそろ刃先がくたびれてきたので新しいモノに買い換えた。プラスドライバー4本で7000円しない程度で15年使えるなら、決して高くないと思う。
それと、錆びて固着してしまった場合は、ワコーズの「ラスペネ」がオススメだ。KURE5-56でもいいのだが、価格は高いが効果も高い。たかが油と思うかもしれないが、その効果は絶大。固着している場合は、ネジをなめる前に一度吹き付けて、浸透するまで少し時間を空けてから緩めてみるといい。こちらもオススメの商品だ。
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