イベントレポート

第21回東京国際ブックフェア

完全オフライン仕様、災害用非常袋にも1台の電子書籍端末「honto pocket」

アガサ・クリスティー100冊入りモデルなど

 大日本印刷株式会社は、同社開発による電子書籍端末「honto pocket」を年内にリリースする予定だ。東京ビッグサイトで開催中の「第21回東京国際ブックフェア」で参考出展している。

 honto pocketは、E Ink製の電子ペーパーディスプレイを使った電子書籍端末で、単三電池2本で駆動する。今のところ詳しいスペックは明らかにされていないが、本体はだいたい文庫本サイズで、重さは約110g(電池を除く)。1.5GBのメモリを積んでおり、EPUBフォーマットの電子書籍を最大150冊(一般的な文庫本換算)収録できる。

 大日本印刷では、honto pocketを単体ハードウェアとして販売するのではなく、例えば全集やシリーズ、選書などの複数の電子書籍をあらかじめインストールした上で、それぞれ専用のパッケージにして書店などで販売することを想定している。

 展示ブースではサンプルとして、早川書房のアガサ・クリスティーの文庫本シリーズ100冊や、双葉社の「若さま同心 徳川竜之助」全13巻をインストールし、本の外箱を思わせる装丁の専用パッケージに入れた商品を展示している。

 また、「青空文庫のあゆみを知る50冊〜ポケットの中の青空〜」として、ボイジャーが選んだ青空文庫作品をまとめたパッケージや、ユーザーが選んだ作品をhonto pocketにまとめて提供することも考えられるという。

 なお、購入したユーザーが後から好きな電子書籍を追加したり、入れ替えたりするような使い方には現時点では対応しておらず、全集などを購入するような感覚で各パッケージを買いそろえるかたちになる。複数のパッケージを購入すると複数台のhonto pocket端末を所有することになるが、大日本印刷では、購入後に会員登録や通信設定などの作業が不要ですぐに読めるため、高齢者などにも簡単に利用してもらえるとみている。また、前述のようにパッケージは本の外箱風の装丁のため、紙の本とあわせて本棚に並べておくことが可能だ。

 honto pocketの具体的な価格は未定。インストールされる作品によって異なり、紙の本で全部そろえるよりは安価な設定になる見込みだ。

 honto pocketについてはすでに昨年の東京国際ブックフェアで披露されており、「涼宮ハルヒの憂鬱」をインストールしたパッケージが参考出展されていた。その時点では電子書籍端末は既製のハードウェアだったが、その後、大日本印刷が独自の作り込みを行い、今回、honto pocket専用に開発したハードウェアの展示となった。

 具体的には、「すべての人が読書を楽しめる環境の提供を目指す」との考えのもと、これまでの商品デザインプロセスから除外され、不便を感じているユーザーを対象に調査を実施。高齢者や弱視のために普段はルーペを使って本を読んでいる人、上肢障害があり片手の握力が弱い人からの声を聞いて改良した。操作ボタンは「左/上」「右/下」「メニュー/決定」の機能を持つ物理ボタン3つだけと最小限にしたほか、フォントのサイズを7段階から選択できるようにした。

 最も特徴的なのは本体の形状で、全体的な厚さは7〜8mmといったところだが、単三電池の格納スペースとなっている下部だけが裏側に丸く膨らんだデザインにしている。使用時にこの部分を持つことで、重量バランスと適度な厚みにより、握力の弱い人でも持ちやすくなっているという。

 さらに大日本印刷では、honto pocketを活用した「LIFE BEST」という商品コンセプトも提示している。ブックコーディネーターの江口宏志氏が手掛けたもので、LIFE BEST(ライフベスト)というネーミングには「救命胴衣」と「人生のベスト盤」という2つの意味を込めている。

 前者は、災害などの非常時、インターネットにつながらない状況でも必要な情報を読むことができる電子書籍端末として提供するものだ。「非常時に生活するための情報」「過去の非常事態での対処例」のほか、日常でも使える「DIY、ものづくりのための本」を収録する。大日本印刷のブースには、懐中電灯や包帯、薬などとともにhonto pocketを保管しておける救急箱風のケースを展示している。

 後者は、「毎日を楽しくしてくれる本」や「退屈をまぎらわしてくれる本」を収録するというもので、繰り返し読みたい本、時を経ると印象が違う本を選んだという。「いつもは非常袋に入れておき、非常食の賞味期限を確認する時に『LIFE BEST』を読む。そんな風に使ってください」と説明している。

(永沢 茂)