イベントレポート
NTT R&Dフォーラム 2015
NTT、モービルマッピングシステム搭載車を走らせ電柱・電線の3次元データ生成、歪み・たるみを計測
(2015/2/20 18:28)
NTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)で2月19日・20日に開催されたイベント「NTT R&Dフォーラム 2015」では、日本電信電話株式会社(NTT)が研究・開発しているセキュリティ、データ解析、インフラ設備保守などの最新技術も紹介していた。
セキュリティでは、DDoS攻撃を受けた際に、正常な通信と攻撃を自動識別し、正常な通信のみを通したまま攻撃のみブロックできるリジエント・セキュリティ技術を紹介していた。大規模トラフィックで回線帯域を埋め尽くす反射型DDoS攻撃のほか、少量パケットでサーバーのコネクションを埋め尽くすSlow DoS攻撃にも対応するという。未知の攻撃については、しきい値などを使い、攻撃かどうか怪しい部分を判断。可能性がある場合はオペレーターに通知し、最終判断を促す。実装については、これからNTT各事業者と連携していくとのこと。
また、標準化方式(FIDO Alliance、GSMA Mobile Connectなど)を活用したパスワードレス認証システムでは、標準化方式ではカバーできない運用コストやプライバシー、ビジネス適合性といった要件をネットワーク側で補完することで、サービス事業者の運用コスト増加を抑えつつ、認証技術の導入を容易化。パスワードレス認証では、認証鍵と端末を括り付けることで、ネットワーク側で預かった認証情報を複数端末で共有する。また、鍵の関連付けにより、複数端末の使い分けが容易になるという。
データ解析技術では、オンライン機械学習向け分散処理フレームワーク「Jubatus」を利用した、リアルタイム解析の例を紹介。監視カメラ映像から人の特性(メガネ、服の色、ネクタイなど)をリアルタイムで解析したり、生体情報のリアルタイム解析、SNSからの市場動向調査といった活用ができる。通常のPC上でも動作するのが特徴。一旦ローカルで処理してからサーバーで共有するため、端末ごとに検知の差が出ることもあるという。
ネットワーク技術としては、イベントによるユーザー集中や突発的なトラフィック急増に対する制御技術を紹介。これまでの予測技術では、トラフィックの波形をベースに負荷を分散していたが、例えばOSのアップデート配信によるダンロード数の増加といった突発的なトラフィック急増には対応できず、対応が後手後手に回っていたという。そこで、トラフィックを分類し、動画サイトなどの安定的なトラフィックには最適なネットワーク経路を割り当て、予測できないトラフィックには、事前に複数の経路を用意して分散させる。今後は、イベントなどの外部要因も含めてマネージメントしたいとしている。
無線LAN技術としては、2019年の標準化を目指している次世代無線LAN規格「IEEE 802.11ax」での実装の候補の1つとなっている、アクセスポイント(AP)同士の電波干渉抑制技術を紹介。現在、同一環境下で複数のアクセスポイントから同じ周波数帯域で電波を送信する場合、電波が干渉してしまいスループットが向上しないという問題を抱えている。そこで、ネットワーク側で複数のAPをトータルで制御し、アクセスポイント同士や通信機器などの電波干渉度合いを計測し、干渉を抑えつつスループットを向上できるという。
インフラ設備の保守では、3基のGPS、レーダーシステム、カメラで構成されるモービルマッピングシステム(MMS)を搭載した車を走らせることで、電柱・電線の3次元データを生成する技術を開発。レーダーによる点と位置情報を組み合わせ、電柱の歪みや電線のたるみを計測することで、1本1本見回り点検していた保守業務の負荷軽減を目指す。実際の歪み計測との誤差は1cm程度と精度は高く、しきい値を設けることで、保守の必要のある設備を割り出すことができる。
静止している絵が風になびいたり、人物画の表情が変化する投影技術「変幻灯」に紹介していた。これは、目の錯覚を利用して絵が変化しているように見せる技術。機材は一般的なウェブカメラやプロジェクターを利用しており、取得した画像からエッジを検出して加工した結果をプロジェクターで投影する。
そのほか、テラヘルツ帯電磁波を利用し、見通しの悪い煙霧の中でも視界を確保する技術を紹介。光を制御し、可視化に適した強力なテラヘルツ波を発生させることに成功した。煙霧のほか、非金属の物質を透過する性質を利用し、物体表面からは見えない内部の血管、不純物、異物を検出する非破壊検査が可能になるという。