イベントレポート

第6回国際自動車通信技術展

本田技研、Wi-Fiで車車間通信する「V2Xユニット」で災害に強いネットワーク構築

 「第6回国際自動車通信技術展(ATTT2015)」が3月11日から13日まで、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されている。自動車メーカーや通信・ウェブサービスのベンダーが、自動車に関連する通信技術を披露している。

災害時に車車間通信でネットワークを構築

 本田技研工業株式会社は、Wi-Fi車載通信機「V2Xユニット」を展示している。

本田技研工業が新開発した「V2Xユニット」
「V2Xユニット」の裏面

 車のほか、販売店や充電ステーションといった場所にV2Xユニットを設置することを想定。通常用途であれば、車両の情報や充電時間などをWi-Fi経由で取得できるツールとして利用できる。また、車車間通信など、ユニット同士が接続し合うことで、ローカルネットワークを構築できる。

 Wi-Fiの特性上、ユニット同士の接続できる距離が短く、車同士がすれ違う際に通信する仕組みのため、リアルタイム性は乏しいという。しかし、災害時などでモバイルネットワークが遮断された場合でも情報を伝達できるネットワークとして利用できる。また、国によって仕様が変わる車車間通信と異なり、Wi-Fiは共通規格であり、スマートフォンなどの一般的な機器もネットワークに参加できる。

 ATTT2015の同社ブースでは、東京FMの「V-Lowマルチメディア放送」を利用した災害情報の受信デモを披露。V-Low波の受信ユニットで受け取った緊急速報は、V2Xユニットを経由し、Wi-Fiでスマートフォン/タブレットに通知される。また、車車間通信により、V-Low受信ユニットを装備していない車両でも緊急速報を取得できる。災害時は、V2Xユニットを備えた販売店や充電ステーションもWi-Fi子機に切り替わり、広域なアドホックネットワークを構築する。

 本田技研工業では、「おもてなしアプリ推進協議会」に、V2Xユニットと、Wi-Fi通信用APIやUI開発キット(SDK)を提供。ネットワークを使った訪日外国人向けのアプリ開発を行っている。そのほか、災害時の安否報告アプリや、ネットワーク内の人同士で情報交換するアプリなどの開発も進めている。V2Xユニットは、Wi-Fi以外にもモバイルネットワークやGPSなども利用でき、同ネットワークを活用したアプリを展開できる。なお、APIやSDKの一般提供は、現在進めている取り組みの成果次第だという。

 本田技研工業ブースの説明員によると、同社車種へのV2Xユニットの搭載はこれから検討段階に入るとしており、ビジネスモデルも今後詰めていく段階。他社メーカーへの働きかけは検討しているが、具体的に話が進んでいる状況ではないという。今回の展示は、V2Xユニットによるネットワークをまず知ってもらうのが目的であり、活用用途の一例として災害時利用を提案したという。

車以外にも、モバイルネットワークやGPS、スマートフォン、通信ナビゲーションシステムと連携できる「V2Xユニット」
充電ステーションをWi-Fiスポットとして活用できる「V2H対応充電器」
東京FMのマルチメディア放送波(V-Low)を用いた災害情報通信システム
V2Xユニットによるネットワークを災害以外での利用を目的とした取り組みも進めている

(山川 晶之)