イベントレポート

第22回東京国際ブックフェア

DNPブース、デジタル絵本を読み聞かせる「Pepper」やリアル店舗とネットの連動施策など

 国内最大の本の展示会「第22回東京国際ブックフェア(TIBF2015)」が1日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕した。世界20カ国から470社が集結し、電子書籍やデジタルを応用した取り組みについて展示している。

 大日本印刷(DNP)のブースでは、ロボットを使った絵本の朗読や、リアル書店とネットを結ぶ取り組み、電子書籍の配信サービスなどを紹介している。

リアルとネットを結ぶ取り組み

 ブースでは、DNPとミライトが共同で開発したデジタル情報スタンド「PONTANA」を展示。あらかじめスマートフォン/タブレットにインストールしたアプリから、サイネージにWi-Fiで接続。気になるコンテンツを画面でタップするとダウンロードされる。「本棚から本を取るように」電子書籍の立ち読みや購入ができる。また、観光地や地域に設置することで、観光情報やフリーペーパーを配信するためのシステムとしても期待できるとしている。提供開始時期は2015年内を予定している。

 施設や店舗など、特定のエリアに最適な電子雑誌を特集記事単位で、スマートフォンやタブレット端末に配信するサービでは、産婦人科クリニック向けサービスを展示。主婦の友社の「Pre-mo」「Baby-mo」などの育児雑誌やムック、マンガ、実用書籍、子供向け絵本など25タイトルをラインナップする。ホスピタルネットが提供するタブレットレンタルサービス「HosPadマタニティ」と連携し、病院の待合室や入院患者向けに提供するとしている。提供開始時期は今夏ごろとしている。

デジタル情報スタンド「PONTANA」
スマートフォンなどに専用アプリのインストールとWi-Fi接続を完了した上で、サイネージのコンテンツをタップするとダウンロードされる
電子書籍以外にも、機器が設置された場所に関する観光情報やフリーペーパーの配信にも利用できるとしている
産婦人科クリニック向け電子雑誌配信サービス。通常であればユーザーが持ち込んだ端末を使うが、ユーザーテストではタブレット端末を貸し出したほうが読まれたという

 DNPでは、2014年12月よりリアル書店の店内在庫や店の位置を検索できるアプリ「honto with」を提供している。欲しい本を検索すると現在地から一番近い在庫のある店舗を表示し、店舗によっては本棚の位置まで表示できる。商品ページからネットストアや電子書籍ストアへの導線も用意している。そのほか、紙書籍購入で電子書籍を半額で購入できる「読割50」や「hontoポイント」を書店で購入できるカードの販売なども行っている。

 店舗向けの施策としてはこのほか、DNP傘下の文教堂が運営するコミック・アニメ専門店「animega」と連動した、電子書店「まんがこっち!」への誘導施策を展示している。書店にFelicaに対応した機器を設置。Felica対応の携帯電話・スマートフォンでかざすと、まんがこっち!のリンクに誘導する。マンガやライトノベルは封をされている場合が多く、電子書店で立ち読みした後で電子書籍・あるいは店頭の本を購入することができる。

リアル店舗の書籍の在庫を確認できる「honto with」
書籍を購入すると電子書籍が半額で購入できる「読割50」など、リアル店舗とネットの連動施策を展開する
書店に電子書籍ストアへの誘導機器を設置。立ち読みできない書籍で電子書籍の立ち読みを案内することで、電子書店への誘導を図りつつリアル店舗での購入を促す

 また、スマートフォン/タブレットに採用されている静電容量式タッチパネルを応用したカード識別システム「TouchCode」も展示。紙やフィルムなどに導電性材料でパターンを印刷。5点タッチ以上に対応した静電容量式タッチパネルにカードをかざすと、指定されたURLやコンテンツを表示できる。パターンは理論上数億種類あるとしているが、タッチパネルの精度によっては認識しないこともある。1年前に発表したシステムだが、徐々に販促用途などで使用されてきているという。

伝導性素材をパターン印刷し、スマートフォン/タブレットの静電容量式タッチパネルで認識させる「TouchCode」
スマートフォンにしおりをかざすと、特定のURLにジャンプする

Pepperが子供に絵本を読み聞かせたりクイズを出題

 DNPでは児童向けのデジタル絵本を展開している。TIBF2015では、デジタルコンテンツとソフトバンクロボティクスの「Pepper」を使った絵本の朗読システムを初披露した。Pepperが絵本を読み聞かせたり、絵本の内容に関するクイズなどを出題し、子供とコミュニケーションを図るという。システムは完成したばかりで、実際の子供を対象としたテストなどはこれからとしているが、将来的にはショッピングセンターなどにこのシステムを配置し、親が短時間だけ子供を遊ばせておく用途などを想定しているという。AIはDNP独自のものを実装している。

 また、キュレーション型ECリンクサービス「MEETTY」を展示している。スマートフォン/タブレット向けのウェブサービスで、キュレーターが書籍や商品の紹介を行い、それを購入できるECサービスへのリンクを貼る。サイト閲覧者は、キュレーターのお勧めする商品を気に入った場合、そのリンクから購入できる。企業がキュレーターとして、お勧めする書籍などの広告コンテンツも配信することができる。

「Pepper」を使った絵本朗読システム
キュレーション型ECリンクサービス「MEETTY」

 そのほか、マンガの翻訳作業を簡略化するブラウザーベースの多言語版マンガ制作プラットフォームを展示している。これまでマンガの翻訳作業は、海外など遠方に住んでいる訳者がテキストベースで翻訳作業を行っていたため、セリフ位置のミスなどが発生していたという。今回のプラットフォームにより、特定のソフトウェアを用意することなく、マンガの吹き出し位置に直接翻訳した文章を記入することができる。現在はまだ開発中としており、TIFFでの読み込みしかできないが、InDesignのデータを直接読み込めるよう改良中だ。

 DNPのオリジナルフォント「秀英体」に「秀英角ゴシック金 M」「秀英角ゴシック銀 M」「秀英アンチック」「秀英四号かな」「秀英四号太かな」を追加。コンテンツで利用する場合は、モリサワのフォント製品として購入可能。電子書籍やアプリのUIなどで利用する場合は、DNPからライセンス取得する必要がある。また、参考出展として同社の画像処理技術を応用した、活版印刷を再現したエフェクトを展示している。

多言語版マンガ制作プラットフォーム。セリフ部分に翻訳文章を入れることができる
これまでの翻訳作業はテキストベースが殆どだったという
DNPのオリジナルフォント「秀英体」に追加された「秀英アンチック」「秀英四号かな」「秀英四号太かな」
活版印刷を再現したエフェクトも展示していた。同社の画像処理技術を応用しているという

(山川 晶之)