イベントレポート
Adobe Live -Best of MAX-
「Adobe Creative Cloud」の新機能を日本のクリエイターに披露、モリサワの社長も登場
(2015/11/13 06:00)
アドビシステムズ株式会社(Adobe)は11日、米国で開催された「Adobe MAX 2015」の日本向けイベントとなる「Adobe Live -Best of MAX-」を都内で開催し、「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」の新機能などを紹介した。
基調講演の冒頭に登壇したアドビシステム代表取締役社長の佐分利ユージン氏は、Adobe CCのユーザー数が全世界で530万人に達し、日本でも前年対比で増加していると、サービスの好調さをアピールした。また、今春から日本語に対応したクリエイターコミュニティ「Behance」も、3年前は5000人だった参加数が今では7万5000人にまで拡大。70万人いると言われている日本のクリエイティブ人口の約1割が参加している計算になるという。
イベントでは、Adobe MAXで公開されたAdobe CCの最新アップデートを紹介した。Adobe CCで強化された機能の多くは、「Creative Sync」と呼ばれるテクノロジーがベースにある。Adobeの各モバイルアプリやデスクトップアプリと機能連携を実現するほか、各デバイス間での素材・ファイル共有など、ユーザーのワークフローそのものを変化させる力を秘めている。
また、Adobeが6月に提供開始したストックフォトサービス「Adobe Stock」をアピールした。Stockは、ロイヤリティフリー写真4500万点以上を提供するもので、各種デスクトップアプリ、モバイルアプリとの親和性を高めている。デスクトップアプリ内で素材の検索から決済まで可能で、決済前に使用できるサンプルイメージのままクリエイティブの制作ができ、決済完了とともに加工の設定そのままで本物のイメージと差し替えできる。
モバイルアプリでは、写真の修正や顔のレタッチなどに特化した「Photoshop Fix」を10月にリリースしたほか、ドローイングツール「Photoshop Sketch」の新機能として、水彩絵の具を再現できるようになった。アプリ間の連携も強化しており、例えばカンプ作成アプリ「Comp CC」で配置したオブジェクトの追加や修正を行う際に、ほかのモバイルアプリに切り替えて作業可能。作成したデータをComp CC上に戻って適用することができる。
また、スマートフォン/タブレットのハンディさを活かし、カメラや写真をベースにクリエイティブの素材を収集する「Capture CC」を紹介した。このアプリは、写真からカラーパレットを作成する「Color CC」、写真からベクター画像を生成する「Shape CC」、画像からカスタムブラシを生成する「Brush CC」、写真や風景から色味を取り込む「Hue CC」の4つのキャプチャーアプリを統合している。新機能として、カメラから万華鏡のようにパターン画像を生成する機能が追加された。
デスクトップアプリのアップデートでは、「Surface」や「VAIO Z Canvas」などのタッチデバイスへの対応を行った。「Illustrator CC」では、新しい「Shaperツール」により、デジタイザーペンでのオブジェクトの描画・移動・削除ができるようになった。Surfaceでは、キーボードを外すとタブレット専用のUIに自動で切り替わる。「Premiere Pro CC」では、プロジェクトパネルのスワイプやピンチイン/アウト、タイムラインへのドラッグ、編集ポイントの指定も可能だ。
ウェブ関連のツールでは、まもなく提供予定の「Dreamweaver CC」にて、他のデスクトップアプリと同様にライブラリパネルが追加される。すでにパネルが追加されたデスクトップアプリと同様、ライブラリ内の素材を利用可能。配置した素材は元素材とリンクされており、デザイナーが元素材をPhotoshopなどで修正すると、Dreamweaver上で配置した素材にも反映される。また、コーディングなしでデザインツールのようにウェブサイトを制作できる「Adobe Muse」では、レスポンシブデザインに対応した。
そのほか、2016年上半期にベータ版が登場予定のモバイル向けサイト/アプリのUIデザインツール「Project Comet」を披露した。高速なUI/UXのデザインが可能で、検索結果画面など同じアイテムを繰り返す画面では、「リピートグリッド」を選択することで瞬時に複製可能。オブジェクトのギャップも1箇所の修正ですべての箇所に反映できる(個別設定も可能)ため、手間なくUIを構築することができる。また、各ページの遷移はボタンと対応するページをマウスで結び付けるだけで設定でき、遷移時のワイプの方向なども選択可能。
Adobeでは、フォントライブラリ「TypeKit」において、モリサワグループのフォント20書体を無償提供している。講演に登壇した株式会社モリサワ代表取締役社長の森澤彰彦氏は、「今回の書体提供は、パートナーシップの進化。28年前にリュウミンL-KLと中ゴシックBBBの2書体から始まったパートナーシップだが、その後さまざまなポストスクリプト書体を投入し、新しいデザインワークの中で利用できるTypeKitに書体を提供させていただいたのは進化の第一歩」と述べた。また、「書体は、動画やゲームの中、紙媒体などにも使われている。さらに色や動きを加えることで、よりユーザーのクリエイティビティを発揮できるツールになる」とした。
このほか、Adobe Live -Best of MAX-では、実際にAdobe CCを活用しているクリエイターや企業などが、実例を用いながらワークフローやTipsを披露するセミナーも催されていた。