ファイル共有ソフトの著作権侵害対策、毎月摘発で抑止効果!?
ACCS専務理事の久保田裕氏 |
文化庁長官官房の川瀬真氏 |
権利者団体や利用者団体などで構成される「デジタル時代の著作権協議会(CCD)」は23日、「適正なコンテンツ流通の実現」をテーマにしたシンポジウムを開催した。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の専務理事で、CCDの権利問題研究会の主査を務める久保田裕氏が、ファイル共有ソフトによる著作権侵害やその対策の現状について語った。
久保田氏は著作権侵害の実態として、ACCSや日本レコード協会などが実施したファイル交換ソフトの利用実態調査を紹介。それによれば、インターネット利用者のうちファイル交換ソフトを使っている人は、2007年度の9.6%から2008年度には10.3%に増加。また、2007年度に「Winny」で流通したファイルのうち47%は何らかの著作物で、うち97%は著作権が存続しており、かつ著作者の許諾がなく流通されていたとしている。
ファイル共有ソフトでダウンロードした経験のあるファイルの種類では、音楽関連ファイルが81.2%で最も多く、映像関連ファイルが64.5%と続いた。ソフトウェアは22.9%だったが、この結果について久保田氏は「一見すると少ないが、ニンテンドーDSのソフトなどは複数のタイトルが一括してアップロードされている」として、ファイル共有ソフトによるソフトウェアの被害が甚大であると訴えた。
「ファイル共有ソフトによる被害の想定金額を出しているが、金額にかかわらず『いつでも欲しい情報を無料で入手できる』状況と同じだ。こうした中でユーザーは情報に対価を払うとは思えない。調査によれば、ファイル共有ソフト利用者の5割弱は今後も使うと答えているが、一部のファイル共有ソフトはファイルをダウンロードすると同時にアップロードする機能もある。つまり、こうした(ダウンロードと同時にアップロードするタイプの)ファイル共有ソフトを使っているユーザーは、著作権侵害を行っていることになる。」
ファイル共有ソフトによる著作権侵害への対策としては、1)アップロード行為者に対する刑事摘発、2)ファイル共有ソフトの使用停止を促す啓発活動、3)アップロード行為者に対する発信者情報開示請求――を行っていると説明。しかし、現時点ではいったんアップロードされたファイルを完全に削除するのは事実上困難であるとして、苦しい胸の内を明かした。
また、著作権法違反では被害者の告訴が必要とされる「親告罪」が採用されていることから、権利者が自らの権利を主張する際の負担が大きいと説明。「初期放流者を特定するには高度な技術が必要で、それに伴う費用も高い。弁護士費用も出ず、権利を主張できないケースもある」と述べ、権利侵害行為に対する懲罰的な賠償請求が法制度に盛り込まれなければ、権利者はフェアなビジネスを行えないとした。
久保田氏は、アップロード行為者に対する刑事摘発が現状では「年間3~4件ペース」と説明した上で、「その程度では違法アップロードへの抑止にはならない」と指摘。警察庁が中心となり開催する協議会では、「1カ月に1件程度摘発することで、ファイル共有ソフトの利用者への抑止効果が出る」といった議論もあると紹介し、自らも取り締りを強化する必要性を訴えた。
また、技術的な対策としては、コンテンツにDRM(デジタル著作権管理)技術を施してコピーやアップロードを抑制したり、コンテンツの再生回数や再生期間を制限する「許諾コード」などの手法を導入すべきと主張。さらに、政府の2009年度補正予算に事業費119億円が盛り込まれた“マンガの殿堂”などを引き合いに出し、適正なコンテンツの流通を実現するには著作権侵害対策につながる技術開発を重視すべきと訴えた。
シンポジウムではこのほか、文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長の川瀬真氏が来賓の挨拶を行い、改正著作権法が2010年1月1日より施行されることが決まったと報告。今後は、著作権保護期間の延長、私的録音録画補償金の見直しといった「積み残しの課題」に加えて、日本版フェアユース導入の可否などについても慎重に検討していきたいと話した。
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(増田 覚)
2009/6/24 11:00
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