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専用端末&新サービスが続々登場! 電子書籍最前線
読書の新しいスタイルとして、長年に渡って注目を集め続けている電子書籍。「今年こそ普及元年」と言われ続けながら、完璧なブレイクを果たしていない――。それが多くの人々の認識ではないだろうか。
しかし、普及に向けた歩みは、決して止まっているわけではない。大手の出版社や電子機器メーカーを中心に、新サービスの発表、合弁会社の設立、そして専用端末のリリースなどが着実に行われており、市場環境はむしろ複雑化しているといっても良い。各社の最新サービスや製品を通じて、2012年の最新電子書籍動向をチェックしていこう。
●まさに花形! 電子書籍リーダー
近年、電子書籍が特に注目されている理由の1つは、電子書籍に適した(と考えられる)端末が、現実に普及した点にあるだろう。中でもスマートフォンやタブレットはタッチパネルをほぼ100%採用。ページをめくる感覚が容易に再現できる。加えて、目に優しい省電力ディスプレイ(電子ペーパー)を採用した専用端末も増加傾向にある。各社の最新モデルを見ていこう。
◆Reader
http://www.sony.jp/reader/
ソニーが発売中の電子書籍リーダー。電子ペーパー(モノクロ表示)を採用しているため目に優しく、長時間読んでも疲れづらいのが最大の特徴。省電力性に優れ、1回の充電で数週間に渡って連続運用できるのも魅力だろう。2011年9月発売の最新モデル「PRS-G1」(直販サイト価格2万5800円)は3G通信機能を内蔵。外出先でもワイヤレスで気軽に電子書籍を買えるようになった。
電子書籍の購入は、Readerからアクセスできる専用ストア「Reader Store」が基本。PCサイトから購入してUSBケーブルで転送することも可能。なお、同ストアでは、講談社や角川書店など複数の出版社の書籍が取り扱われている。
◆BookPlace
http://dynabook.com/pc/bookplace/
「BookPlace DB50」は、東芝が2月に発売開始したばかりの新製品。直販サイト価格は2万1900円。電子書籍リーダーと位置づけられているが、表示用デバイスはバックライト内蔵のTFTカラー液晶となっており、性質的にはタブレットに近い。
書籍の購入には、同名のオンラインストア「BookPlace」を利用する。無線LAN機能を内蔵しているため、端末上で直接購入できる。
◆UT-PB1
http://ec-club.panasonic.jp/mall/sense/open/product/UT-PB1/
2011年8月に発売を開始した、パナソニック製電子書籍リーダー。26万色表示のカラー液晶ディスプレイを採用する。無線LAN機能のほか、カメラも内蔵している。直販サイト価格は2万9800円。対応する電子書籍ストアは、楽天の「Raboo」。
◆楽天とKobo社の電子書籍事業とのシナジー
http://corp.rakuten.co.jp/event/kobo/ja/
通販大手の楽天では、電子書籍リーダーの開発ですでに実績のあるKobo社(カナダ)を1月付けで正式に買収。自社ブランドで国際的な電子書籍事業を展開すると発表しており、日本国内での専用リーダー発売にも期待できそうだ。最新モデルは2011年10月発売のカラー液晶採用機「Kobo Vox」。電子ペーパー(E Ink)採用モデルも展開している。また、スマートフォン向けにも汎用のオンラインストア(アプリ)を準備している。
◆Kindle
http://www.amazon.com/gp/product/B0051VVOB2/
米Amazon.comが販売する電子書籍リーダーのシリーズ。カラー表示対応の「Kindle Fire」(199ドル)を筆頭に、廉価な電子ペーパー採用機なども揃えている。日本ではいまだ正式販売されていないが、個人輸入などの形で購入することは可能。とはいえ、付随するオンライン電子書籍ストアが日本で展開されない限り、有効活用は難しいだろう。早期の国内サービス開始を期待したい。
◆nook
http://www.barnesandnoble.com/u/nook/379003208/
米国の書籍小売店チェーン「Barnes & Noble」が展開している電子書籍リーダー。日本国内においてはKindleほどの知名度は得ていないが、知っておいて損はない。最新モデルは「NOOK Tablet」で199~249ドル。
◆GALAPAGOSメディアタブレット
http://www.sharp.co.jp/mediatablet/
2010年9月の発表当初、“電子書籍リーダー”として強くアピールされていた「GALAPAGOS」だったが、現在はより汎用的なタブレットとして販売展開されている。アプリ「GALAPAGOS App」を使えば電子書籍の購入・閲覧も可能。最新モデルは「EB-A71GJ-B」。WiMAXを内蔵しているが、一般小売店の通販などで気軽に購入できる。
●スマートフォン対応はもはや当然?! 各社の電子書籍ストアをチェック
続いては、電子書籍ビジネスの核とも言えるオンラインストアを見ていこう。比較ポイントは各種あるが、結局は「自分の欲しい本が売っているか」「手持ちの端末で読めるか」に尽きる。これまでの紙の本であれば、どの書店に行ってもすべての出版社の本を買えるが、電子書籍は未だその段階には達していない。ひとまず、自分の好きな作家や漫画家の名前を片っ端から検索して好みのストアを探し、その上で対応端末やライセンス条件などを比較してみるといいだろう。
◆Reader Store
http://ebookstore.sony.jp/
ソニーのReaderおよびSony Tablet向け電子書籍ストア。利用にあたってはいずれかの端末を持っていることが前提で、PCのブラウザーからは購入のみ可能(閲覧は不可)。一般書籍が豊富だが、漫画もある。
◆Raboo
http://www.rakuten.ne.jp/gold/raboo/
楽天市場内の電子書籍ストア。基本的に専用リーダー向けのサービスとなっており、いまのところソニーのReader各種およびパナソニックのUT-PB1にのみ対応している。
◆紀伊國屋書店BookWeb 電子書籍ストア
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/indexp.html
http://bookwebplus.jp/
書店チェーン大手「紀伊國屋書店」の公式サイト。通常の紙書籍通販と並んで、「BookWebPlus」「Kinoppy」の名称で電子書籍サービスも同時展開している。対応端末はWindows、iOS、Android。なお、ソニーのReaderからも閲覧可能。
◆電子文庫パブリ
http://www.paburi.com/
日本電子書籍出版社協会および株式会社モバイルブック・ジェーピーが運営するオンラインストア。特定の出版社やジャンルに偏らないラインナップを心がけているという。対応環境はWindows、Mac、iOS、Android。ただし、作品によっても対応状況が異なる。
◆eBookJapan
http://www.ebookjapan.jp/ebj/
2000年5月創業の株式会社イーブックイニシアティブジャパンが運営する電子書籍ストア。漫画のラインナップが豊富だが、文芸書やノンフィクションなども数多く揃う。購入した書籍はPCのほか、iOSやAndroid端末から閲覧可能。「トランクルーム」というシステムを活用し、購入データを各端末間でムーブできる。
◆ボイジャーストア
http://voyager-store.com/
電子書籍のフォーマットとして国内でポピュラーな「.book(ドットブック)」形式の開発元である株式会社ボイジャー。「ボイジャーストア」の名義でモール型のオンラインストアも展開中。これまで運営してきた「理想書店」は、この中の1店舗という位置付けになった。対応端末はPCおよびiOS。
◆BookLive!
http://booklive.jp/
株式会社ビットウェイのグループ会社である「株式会社BookLive」が運営。閲覧用端末はマルチ対応で、Windows、iOS、Androidに加えWindows Phone 7.5をもサポートしている。複数の出版社が作品を登録している。
◆BookPlace
http://toshibabookplace.booklive.jp/
東芝の同名電子書籍リーダー向けストア。上述の株式会社BookLiveが運営を行っているため、配信作品やサービス内容は「BookLive!」と非常に良く似ている。ただし、対応端末など異なる部分もある。
◆ビットウェイブックス
http://books.bitway.ne.jp/
運営元の株式会社ビットウェイは、凸版印刷株式会社のデジタルコンテンツ事業部門の分社化によって誕生した企業。2006年には出版社36社が資本参加している。「ビットウェイブックス」自体はおもにPCを対象とした電子書籍ストアとなっており、スマートフォンやタブレットへの対応は非常に限定的。
◆TSUTAYA.com eBOOKs
http://tsutaya.com/ebooks/pc/
書店・レンタルビデオ店チェーン「ツタヤ」の展開で知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の系列企業が運営する。総合電子書籍ストアと位置付け、各種サービスを段階的にスタート。現在は、同社が「eBOOK+」と呼ぶ、ビジュアル重視の独自電子書籍をリリース中。現在はPCのみの対応だが、iOS、Androidにも順次対応する予定。
◆GALAPAGOS STORE
http://galapagosstore.com/
シャープの子会社が運営する電子書籍ストア。複数の出版社が作品を登録している。旧名称「TSUTAYA GALAPAGOS」の時代はカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社も資本参加していた。サービス自体はAndroidアプリ形式を取っているため、シャープ以外のメーカーから発売中のスマートフォンでも利用できる。PC向けアプリも公開中。
◆iBooks
http://www.apple.com/jp/ipad/built-in-apps/ibooks.html
http://www.apple.com/jp/ipad/built-in-apps/newsstand.html
アップルのiOS端末向け電子書籍サービス。オンラインストアには日本語表記の書籍がほとんどないため、現状でのフル活用は難しいだろう。一方、雑誌の定期購読サービス「Newsstand」には、日本でおなじみの雑誌もかなり登録されている。
◆Google eブック
http://books.google.co.jp/ebooks
Googleが展開する電子書籍ストア。ただし日本においては、“販売”を現在を実施しておらず、著作権フリーの書物を読めるにとどまっている。対応端末はAndroid、iOS、PC向けブラウザーなど。ちなみに、書籍の全文検索サービス「Google ブックス」と名称こそ似ているが、サービスはまったく異なる。
◆Yahoo!ブックストア
http://bookstore.yahoo.co.jp/
ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」が展開中のWindows、Mac、Android対応電子書籍ストア(iOS端末は非対象)。閲覧にはいずれも専用ビューアーを利用する。漫画が充実しており、例えば「NARUTO―ナルト―」は36巻までリリース中。そのほか、講談社や角川書店系の作品も並ぶ。
◆電子書店パピレス
http://www.papy.co.jp/
1995年オープン。運営元の株式会社パピレスでは「日本最古の電子書籍ストア」をアピールしている。対応端末はおもにWindowsおよびMac。ただし2011年10月から一部のコンテンツを「MEDUSA」形式で提供開始したことにより、スマートフォンから閲覧できるようになった。この際、閲覧用アプリが不要なのも特徴(ブラウザーを利用する)。
◆電子貸本Renta!
http://renta.papy.co.jp/
株式会社パピレスが2007年4月に開始したサービス。その名の通り、貸本形式の電子書籍サービスとなっており、48時間の閲覧権を105円から購入できる。なお、無期限レンタルという制度も用意されている。PC(ブラウザー)、iOS、Androidに幅広く対応。一度購入手続きした書籍は、期間内なら端末問わずに何度でも閲覧できる。
◆BOOK☆WALKER
http://bookwalker.jp/pc/
角川書店系列の電子書籍ストア。角川スニーカー文庫、角川コミックス・エースなど、同社作品のラインナップが中心のため、グループ外出版社の書籍をはほぼ取り扱われていないようだ。また、コンテンツの閲覧にはiOSもしくはAndroid端末が必要。PCでは購入こそできるが、閲覧には未対応となっている。
◆ニコニコ静画(電子書籍)
http://seiga.nicovideo.jp/book/
ニコニコ動画のイラスト版であるニコニコ静画だが、さらに電子書籍の販売サービスも展開中。ブラウザーから直接閲覧できる。iOS用アプリもリリース済み。なお、作品は角川書店系以外にも複数の出版社から提供を受けている。
◆BooksV
http://booksv.fmworld.net/
富士通株式会社が独自展開する電子書籍ストア。市販のPCおよびAndroid端末に幅広く対応する。サービスの利用にあたっては、@nifty IDやGoogleアカウントをログインIDとして使えるのも特徴。
◆honto
http://hon-to.jp/
大日本印刷株式会社(DNP)、株式会社NTTドコモ、丸善CHIホールディングス株式会社が共同出資する「株式会社トゥ・ディファクト」が運営する。2010年11月のサービス開始当初はDNPが単独運営していた。対応端末はWindows、iOS、Androidなど。
◆2Dfacto(トゥ・ディファクト)
http://www.nttdocomo.co.jp/service/entertainment/2dfacto/
http://www.nttdocomo.co.jp/service/entertainment/dmarket/spmode/book_store/
上記の株式会社トゥ・ディファクトの名前を冠した電子書籍サービス。NTTドコモのスマートフォン向け展開時にのみ、この名称を前面に押し出しており、アプリなども提供しているが、基本的にはhontoとほぼ同様のサービスを展開している。なお、ドコモではspモード内の「dマーケット」でも電子書籍サービスを提供中。
◆LISMO Book Store
http://book.lismo.jp/
auの携帯電話およびAndroidスマートフォン向け電子書籍ストア。小説、実用書、コミックなどを幅広くラインナップする。書籍の購入は端末上のアプリから行う方式となっており、PCのブラウザーからは検索のみ可能。
◆ソフトバンク ブックストア
http://mb.softbank.jp/mb/smartphone/service/bookstore/
ソフトバンク製Androidスマートフォン向けのストア。他の携帯電話会社系サービス同様、毎月の通話・通信料金と合算して、電子書籍の代金を支払える。
●まだまだあります! 電子書籍アレコレ
最後に、電子書籍リーダーやオンラインストア以外の話題にも触れておこう。電子書籍のフォーマット、スマートフォンアプリのストアで買える電子書籍、DRMフリーのストア、あるいは電子書籍探しのポータルサイトなど、知っておいて損はない。
◆XMDF情報スクエア
http://www.xmdf.jp/
XMDFはシャープが開発し、国内でも非常に普及している電子書籍フォーマット。閲覧端末の画面サイズやユーザーの文字サイズ設定によって動的にページ要素が再配置される「リフロー型」、文書を画像として扱うことで複雑なレイアウトができる「イメージ型」、これらを混合させた「ハイブリッド型」いずれの形式の文書にも対応する。こちらのサイトではXMDFのあらましを解説するほか、XMDFコンテンツ作成用のオーサリングツールなども配布している。ちなみに、ボイジャーが開発したフォーマット「ドットブック」も、日本ではよく知られている。
◆epubcafe
http://www.epubcafe.jp/
国際的な電子書籍フォーマットとして知られるEPUBについての日本語情報ページ。イースト株式会社および日本電子出版協会が運営している。EPUB自体はオープンな規格となっており、ライセンスフリーで誰でも無料で利用できる。ファイル構造もHTMLに近い。アップルやGoogleが積極的に採用することでも知られる。
◆iBooks Author
http://www.apple.com/jp/ibooks-author/
Mac OS向けの電子書籍作成ソフト。無料で提供されており、個人でも比較的簡単に電子書籍を作成することができる。さらに、作成したコンテンツをiBookstoreで有料販売する道も開かれている。こういったソフトが市場にどんな変化をもたらすか、注目が集まる。
◆講談社スマートフォンアプリ
http://apps.kodansha.co.jp/
講談社は各社のオンライン電子書籍ストアに作品を提供しているが、その一方で、スマートフォンの専用アプリ形式でも多数のコンテンツを販売中。伝記「スティーブ・ジョブズ」はその代表例と言えるだろう。
◆小学館 電子書籍・アプリ
http://www.shogakukan.co.jp/digital/genre/_id_1
アプリ形式の電子書籍は、大手から中小の出版社まで幅広く利用されているが、小学館も例外ではない。「デジタル大辞泉」「ランダムハウス英和大辞典」のような高額書籍から比較的安価な動物写真集まで、バリエーションも豊富。
◆O'Reilly Japan Ebook Store
http://www.oreilly.co.jp/ebook/
プログラミングやITの分野を専門的に扱う出版社。こちらのサイトで販売される電子書籍はなんとDRMフリー。有償の電子書籍と言えば、不正コピー防止用のDRMを施すことが通例なだけに驚かされる。
◆ブックパブ
http://bookpub.jp/
こちらもDRMフリーのオンライン電子書籍ストア。自由国民社や主婦と生活社など10社が参画している。作品数は250点ほどで、大手ストアと比べた場合はさすがに少ない。フォーマットはおもにPDFとEPUBを採用する。
◆ダ・ヴィンチ電子ナビ
http://ddnavi.com/
本や作家にまつわる情報誌「ダ・ヴィンチ」のウェブサイト版。紙の書籍だけでなく、電子書籍をも対象としており、その書評も豊富。キーワード検索もできるので「読みたい電子書籍がない」と嘆く前に一度覗いてみるといいだろう。
◆hon.jp
電子書籍の総合データベース。ストアの区別なく、横断的に一括検索できるのが特徴。書籍タイトルだけでなく、出版社や著者名をキーに検索することができる。
◆日本電子出版協会
http://www.jepa.or.jp/
電子出版に関する調査・研究を行う団体。正会員登録しなくても、一部のコンテンツはウェブサイトから無料で見ることができる。中でも「JEPAニュース」内では、直近の電子書籍関連記事(URL)をクリッピングしており、なかなか便利。
◆日本電子書籍出版社協会
http://www.ebpaj.jp/
2010年2月発足の一般社団法人。電子文庫出版社会が前身で、現在は「電子文庫パブリ」の運営元でもある。2011年末にはEPUBビューアーに関する検証チームを設立。端末別のEPUBタグ再現性などを調査するという。
(2012/3/2)
[森田 秀一]