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Amazon.co.jpで誰もが無料で紙の書籍を出版できる「著者向けPOD出版サービス」、インプレスR&Dが開始、5000円でISBN付与も可能

 株式会社インプレスR&Dは26日、Amazon.co.jpの提供する「プリント・オン・デマンド(POD)プログラム」(以下、Amazon POD)を利用した紙書籍の出版サービスを著者個人に提供する「著者向けPOD出版サービス」の提供を開始した。書籍を1部単位で印刷・製本・販売できるもので、登録料・利用料は無料。

 インプレスR&Dでは、PODを活用した無在庫販売による出版サービス「NextPublishing」を2012年3月に開始しており、Amazon PODの正式な取次社となっている。その後、2015年4月には、POD流通部分を出版社向けに提供開始。さらに2015年10月には、対象を出版社以外の企業や学校などの団体へと拡大していた。

 著者向けPOD出版サービスは、この対象を著者個人へとさらに拡大したもの。個人で保有するPDFデータをアップロードし、書誌情報をフォームに入力するだけで、最短1週間程度でAmazon PODを通じて書籍を販売できる。PDFデータの版面のサイズや余白などが、Amazon PODの仕様に沿っているかを確認できる機能を備えているのも特徴だ。

 少部数しか販売が見込めず商業ベースに乗りにくいようなコンテンツはもちろん、絶版となった作品、あるいは絶版になったまま出版社側ではPOD用のデータを用意するコストさえもかけられずに死蔵されてしまっている作品の原稿や、ネットメディアなどの連載を著者自身が再構成・書籍化するなど、著者の保有するコンテンツを紙の書籍として販売できるため、「著者自身の判断で、出版社を経由しない新しい出版を実現する」としている。

PDFデータをアップロードすると、Amazon PODで印刷可能な版面が赤い枠線で示され、はみ出している場合に修正する必要があることが確認できる
書籍や著者名といった書誌情報をフォームに入力する

 著者向けPOD出版サービスでは、書籍を1冊販売するごとに、Amazon.co.jpが定める印刷費と、インプレスR&Dの販売手数料(書籍の販売価格の40%)が発生する。書籍の販売価格は、この印刷費+販売手数料の合計額を上回る価格であれば100円単位で自由に設定できるため、この差額を著者が利益として受け取ることができる仕組みだ。

 Amazon PODが定める印刷費は、モノクロページ数×2.5円+カラーページ数×6.9円+180円。インプレスR&Dが受け取る販売手数料については、ほかの出版社と同等の条件とのこと。例えばモノクロ50ページ、カラー7ページの場合は最低600円から出版できることになる。販売可能な書籍は、判型は四六判・A5判・B5判・A4判の4種類のみ。ページ数は24~828ページ(A4サイズは750ページ、カラーは最大500ページ)まで。

 書籍の販売前に、実際に印刷・製本された見本を購入することも可能だ。モノクロ書籍は810円から、カラー書籍は1430円からで、それぞれページ数により価格は変動し、送料(500円)も別途必要となる(価格はいずれも税別)。例えば、販売前に見本を用いて誤字脱字などを見直す校正作業を行って内容をブラッシュアップすることもできる。また、出版書籍を定価の70%で購入できる著者優待販売なども利用可能。

 このように出版までを無料で利用できるが、有料のオプションとして、紙やページ数の違いによる背厚の調整なども行う「印刷用表紙データ作成支援」(2000円)、「ISBN付与」(5000円)、出版可能な「印刷用本文データ作成支援」(5万円~)、「表紙作成」(5万円~)といったサービスもあわせて提供する。ISBNは、書籍特定用に世界共通で定められた番号。これがなくとも著者向けPOD出版サービスを利用した書籍の販売は可能だが、Amazon.co.jpの販売ページにおいてジャンル設定ができず、検索性も損なわれるなど、商品紹介の掲載方法などに制約があるという。

 なお、著者向けPOD出版サービスでは、内容の査読や校正といった、いわゆる編集作業は行われない。また、本文のレイアウトや表紙・奥付などの制作も、有料オプションを利用しない場合は著者自身が行う必要がある。アダルト作品の出版も可能だが、出版の責任は著者本人のみが負う形となる。インプレスR&Dでは、公序良俗に反するもの、誹謗中傷、出版社が出版権を保有するもの、他者の著作権を侵害するものなど知的所有権を侵害する書籍について、販売・利用停止などの措置を取る場合があるとしている。