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3D地図を活用してドローンが自律飛行、KDDI・プロドローン・ゼンリンが提携して「スマートドローンプラットフォーム」

(左から)株式会社プロドローン代表取締役の河野雅一氏、KDDI株式会社執行役員常務商品・CS統括本部長の山本泰英氏、株式会社ゼンリン上席執行役員第二事業本部長の藤沢秀幸氏

 KDDI株式会社、株式会社プロドローン、株式会社ゼンリンの3社は、モバイル通信ネットワークを活用したドローン専用基盤「スマートドローンプラットフォーム」の商用化に向けて業務提携すると発表した。同プラットフォームは、ドローン機体および3D地図、運航管理、クラウドなどの要素で構成されるプラットフォーム。モバイル通信ネットワークにつながったドローンの自律飛行や衝突回避など、飛行ルート管理に加えて、ドローンが取得したビッグデータの蓄積・分析も行える。

 KDDIは、4G LTEネットワークやその基地局の利活用、クラウドサービスなどに必要なアセットを提供する。

 プロドローンは、2本のロボットアームを持つ大型ドローンや、負圧で壁面や天井面に張り付いて検査できるドローン、水面に着水して水中の映像をリアルタイムに伝送できるドローン、ハイエンド向けの産業用ドローンなど、さまざまなニーズに応じたドローンシステムを提供する。また、同社は4G LTEネットワークに接続して遠隔地からも自由にコントロールできる機体の開発やその制御システムの開発も行う。

2本のロボットアームを持つ大型ドローン「PD6B-AW-ARM」
ロボットアーム付き中型ドローン「PD6-AW-ARM」
負圧で壁や天井に張り付いて作業できる、社会インフラ検査ドローン「PD6-CI-L」
水面に着水して水中を撮影できる「PD4-AW」

 ゼンリンは、同社が保有する地形・建物情報をベースに空域情報を3次元化した“空の3次元地図”の研究開発も推進し、ドローンの自律飛行において、機体を安全に誘導するための基盤構築を目指す。

 19日に開催された記者発表会では、KDDI執行役員常務商品・CS統括本部長の山本泰英氏、株式会社プロドローン代表取締役の河野雅一氏、株式会社ゼンリン上席執行役員第二事業本部長の藤沢秀幸氏が、同プラットフォームについて紹介した。

 「今までのドローンは、限られた無線空間内で人が立ち会いながら操作しているため、エリア外に出ると制御できなくなりましたが、4G/5Gネットワークとドローンを組み合わせた『スマートドローン』では、広範囲でのドローンの自律飛行や、遠隔地からの制御が可能となります。これを実現するために、ドローンの機体と3次元地図、複数のドローンを制御するための運航管理システム、クラウドの4つを、それぞれ1本ずつソリューションとして提供するのではなく、プラットフォームとして提供したいと考えています。当初はB2Bのソリューションを提供する予定ですが、その先はB2Cのソリューションも実現させたいと思います。また、全国の基地局にドローン向け気象観測装置を設置したり、各地の局社をドローンポートとして整備したりと、自社のインフラをさまざまな形でドローンのために使っていきたいと考えています。」(KDDIの山本氏)

 「従来のドローンは、測量や空撮など、遠くからのセンシングが中心でした。しかし、私たちが開発した“直接作業型”のドローンであれば、目の前にあるものを掴んで運ぶ、スイッチを押す、ケーブルを切断する、危険物を回収する、救難具を届けるなど、ドローン自体が直接作業することが可能になります。このドローンは、大型機の制御やアームの制御など、高度な技術が必要で、現在のところ我々だけが成功しています。ただし、ドローンサービス事業者がドローンによる複雑な作業を確実にこなしていくためには、高機能なドローン機体だけでなく、地上との通信技術や、管制技術の確立が急務となっています。そこで我々は今回、高品位な通信ネットワークを持つKDDIと、飛行に不可欠の詳細な地図データを持つゼンリンとの『スマートドローンプラットフォーム』に参画しました。今回の3社による協業には大変期待しています。」(プロドローンの河野氏)

 「ゼンリンは今年9月、ドローン事業推進課という新しい組織を作り、ドローン事業化の取り組みを強化しています。ゼンリンでは現在、自動運転用の高精度地図を整備していますが、そのような地図が持つ『先読み情報』『経路設定』『自己位置特定』『誘導・制御』といった役割は、ドローン用の“空の地図”にも必要となります。当社は道路の情報や地物の高さ情報などを保有していますが、今回のプラットフォームへの参画によって、高さ情報を組み込んだドローン用の自律飛行地図を作っていきたいと考えています。」(ゼンリンの藤沢氏)

 さらに、記者発表会の会場(渋谷ヒカリエ)から、名古屋にあるドローンを遠隔操作するデモも実施された。操作スタッフは、プロドローンのロボットアームの開閉に連動したグローブをはめて、リアルタイムで機体の状況を監視しながらAED装置をアームで掴み、別の場所に移動させることができた。

 3社は今後、同プラットフォームの商用化に向けて実証実験を行うとともに、同プラットフォームを活用して、設備検査や農業支援、災害救助などのソリューションや、撮影サービスなどのコンシューマーサービスを提供していく予定だ。