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もったいないことになっている「暮らしのIoT」に拡張性・将来性・セキュリティを! 77企業参加の「コネクティッドホームアライアンス」
2017年9月14日 16:53
「コネクティッドホームアライアンス」は9月14日、自動車・食品業界から新たに47の企業が参加することを発表した。
コネクティッドホームアライアンスは、「暮らしのIoT」サービス実現を目指して、家電・住宅業界などから30の企業が参加して7月に発足された組織。東京大学生産技術研究所教授で工学博士の野城智也氏は、アライアンスの目的について「業種、企業の違う製品間の壁を取り除いていく」とした。
暮らしのIoTについては「例え同じものでも、その人にとって見て痒い所に手が届く使い方までサポートしていく技術」とし、「企業が良かれと思っても、ユーザーから見たらノーサンキューなこともある。(製品を)作ってみて、ユーザーの反応を見て、さらに改良を進めるプロセスの繰り返しによって、愛していただけるIoTサービスが作れる」とし、「いいのもを作ったら終わりでなく、生活者から見て使い勝手のよい提案につなげたい」と語った。
「暮らしのIoT」は「産業用IoT」とは全く違うもの
発足時から参加している東京急行電鉄株式会社取締役常務執行役員の市来利之氏は、「東急では、10年後・20年後の人々の暮らしがどうなっているのか、鉄道敷設や宅地開発をはじめとして、生活をより便利に豊かにする街作りを100年近くやってきた。その流れの中で言えば、暮らしのIoTは、産業用IoTとは全く違うもの」とした。
産業用IoTについては、「工場のライン各所にチップを埋め込んで生産工程を効率化したり、機器の状態を把握して製品寿命を予測したりするもので、効率化とか、経済合理性を目標にしたもの」とし、「暮らしを快適に豊かにすることが目的の『暮らしのIoT』とは直接関係ない」と述べた。
「IoTの波は既にやってきており、例えば米国では、何年も前から実用化され普及している。しかし、日本ではまだまだこれから。完全に周回遅れの状況は残念で、現状は各社が独自に活動して、もったいないことになっている」との見方を示した。
そして「ユーザーにはメーカーは関係ない。大事なのは、メーカーを問わず、さまざまなものがつながり、簡単に使えること。(暮らしのIoTには)拡張性、将来性、セキュリティが求められる」と述べた。
そして、外出先からスマートフォンで家の中が見られるIPカメラを例に挙げ、「いい商品だが、こうした製品と(2015年2月より)イッツコムが始めているインテリジェントホームの決定的な違いが2つある」とした。インテリジェントホームでは、米国で10年近く前から使われているセキュリティ的に強固なプラットフォームを用いており、「ID、パスワードだけでなく、すべての信号が暗号化され、サーバーから端末の挙動や通信を監視して、電池が少なくなってきたことも分かる」という。そして「家庭で安心して使うためには、こうした万全の仕組みや体制が必要」とした。
2つ目に挙げたのは拡張性だ。「鍵が開くことで、扇風機やライトが連動するが、どうせならテレビやエアコン、カーテンも動かしたいし、ユーザーからは『洗濯機、冷蔵庫、車につながらないのか』、『声をかけるだけで動けばもっと便利だ』といった期待もある。これに応えることが、我々の重要な役割」とした。
コネクティッドホームアライアンスは、「そのために生まれたもので、日本を代表する多くの会社が、連携することで、世界に誇るべきジャパンクオリティのIoTを実現できる」とした。
IoTの新たな需要を掘り起こす、成功のカギは鍵?
コネクティッドホームアライアンスでは、家電との接続や見守りを主な対象として、1)車とどうつながるかまで含まれる「住まい」、2)重要なセキュリティを担保し、万全でない製品に対する問題提起や、つながるときの接続ポリシーなど、最も技術的要素が強い「オープンシステム」、3)IoTにより集積される多くのデータの活用や、そこに含まれる個人情報の取り扱いまでを視野に入れた「データ活用」の3つの研究会を設置する。
市来氏は「参加企業にはどこかに参加していただくことになる」とし、これらの中に「数社程度が参加する程度」の分科会が設置され、個別のIoT分野や製品についての実証実験、共同でのデバイス開発が実施される見通しとのことだ。
市来氏は「それぞれの参加企業では、すでにいろいろな研究開発が行われている。これをどうやって摺り合せしてつないでいくのか、日本全体としてのルール作りも必要だろう」との見方を示し、既存のIoT製品にとどまらない「新たに需要を掘り起こすことまでやっていきたい」と述べた。
そして、「日本の暮らしにIoTを広げるには、我々だけではどうにもならない。さまざまな企業に得意分野で活躍してもらいたい。小さなパイを奪い合うのでなく、みんなでパイを大きく育てよう、と仲間内では話している」と語った。
また、東急での取り組みとして、「暮らしが豊かになるよう、IoTをどれだけ活用できるか、準備を進めたい。今後展開するマンションや一戸建てには、可能な限り標準装備にしていきたい」とした。
4月に発足したパナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社取締役専務執行役員の奥村康彦氏は、「IoTでは異業種トップとの連携が必須」と述べ、「サービス検証を通じて、暮らしを豊かにする新しいサービスの創造をしていきたい」と語った。
鍵の国内シェアで6割以上を占める美和ロック株式会社代表取締役社長の和氣英雄氏は、「鍵には4000年の歴史があり、あなただけを入れてあげるという認証情報を持ったもの。これがスマートフォンと融合することで、非常に多くのいろいろなことができるようになる」とした。
そして、「「特定の人が情報を持っている人が得をして、持っていない人が損をする。これが顕著な社会になってはいけない。まさに成功のカギは鍵にある。孤立した家庭の多い悲しい世の中ではなく、鍵とスマートフォンが融合することで、心温かい家庭に寄与できると感じている。日本国民の安全安心、快適な社会、心温まる家庭の実現ができるまで頑張っていきたい」と語った。