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“アニメの殿堂”準備委員会発足、ポケモン社長や里中満智子氏ら


文化庁長官の青木保氏

 マンガやアニメ、ゲームなどを収集展示する拠点施設として、2009年度補正予算に117億円が盛り込まれた「国立メディア芸術総合センター(仮称)」。文化庁は2日、施設の事業内容や管理運営のあり方などを検討する準備委員会を設置した。

 国立メディア芸術総合センターをめぐっては、“アニメの殿堂”と報じられたり、民主党代表の鳩山由紀夫氏に「巨大な国営マンガ喫茶」と揶揄されるなど、注目が集まっているせいか、2日に開かれた第1回会合には多くの報道陣や傍聴者が詰めかけた。

 委員会は漫画家の里中満智子氏、アートユニット「明和電機」の土佐信道氏、NHK解説委員の中谷日出氏、ポケモン代表取締役社長でゲームクリエイターの石原恒和氏ら14人で構成し、メディア芸術に詳しい東京大学大学院教授の浜野保樹氏が主査を務める。

 第1回会合には文化庁長官の青木保氏が出席。青木氏は、マンガやアニメ、ゲームなどのメディア芸術は日本が世界をリードしている反面、これらを世界に発信するための文化拠点が存在しないと述べ、国立メディア芸術総合センターを設立する意義を説明した。

 「さまざまな懸念も寄せられているが、国民に理解をしてもらうには、我が国のメディア芸術の発展に真に貢献することに尽きる。準備委員会はこのための重要な根幹を担っており、活発な議論を通じて基本計画を策定してもらいたい。」

特設サイトから納税者のアイデア募集、里中満智子氏が提案

国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会(第1回)の様子

 会合ではこのほか、事業内容や施設内容、管理運営のあり方に関する検討課題が各委員から挙げられた。漫画家の里中氏は「先日の発表では全体像がつかめず、世間の反対意見ももっともだと思った」として、事業内容が固まっていないことを指摘した。

 その一方、「何をするかが決まっていないからこそ、みんなの意見ですばらしいものができる」と期待を寄せた。具体案としては、新たに委員会のサイトを開設して、納税者からアイデアを募ってはどうかと提案した。

 事業内容について里中氏は、「マンガに関しては原稿を展示することよりも、作品全体に触れてもらうことが重要」と指摘。また、マンガの原画を施設内で保管するとともに、古いマンガをデジタルアーカイブ化する必要性を訴えた。

 アーカイブ化に関しては、人気レースゲーム「セガラリー」などを手がけたキューエンターテインメント代表取締役の水口哲也氏も、「昔のフォーマットなどで作られた名作をプレーする方法がなくなっている」と同意を示した。

 「デジタルの分野でもアーカイブ化に関しては同じような危機感を抱いている。いかに昔のフォーマットのゲームを集めるかが課題だ。国民から寄贈してもらうような仕組みもよいアイデアだと思う。」

 「明和電機」の土佐信道氏は、メディア芸術総合センターにショールームとしての機能を持たせるべきだと主張する。「ライブラリーとしての機能だけでなく、海外の人たちが『こんな商品があるのか』と見てもらえるような箱の方向性も必要だ」。

アーカイブ化の予算不足を指摘する声が多数

 エンターテインメント分野のシンクタンク、ぴあ総合研究所代表取締役社長兼所長の林和男氏は、国立メディア芸術総合センターの補正予算が主に建設費や土地購入費に充てられていると指摘。その上で、アーカイブ化の予算を確保できるのかと疑問を呈した。

 「アーカイブを優先して予算を振り分けないと、まさに箱だけになってしまう。国の予算117億円で施設を作るにしても、そこから先の運営はどうするのか。まずは何に焦点を当ててお金をかけるかの議論が必要だ。」

 補正予算の振り分けについては、建築に詳しい筑波大学教授の植松貞夫氏も懸念を示した。「人材育成、調査研究、施設管理などを自己収入だけで賄うのは到底できないだろう。収益性の高い活動を考えたり、国からの支援がなければ厳しいのではないか。」

 なお、メディア芸術の有識者で構成された「メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会」が4月に提出した報告書によれば、施設の運営は独立行政法人国立美術館が外部に委託し、運営費は入場料などの自己収入で賄うことが適当としている。

 施設の運営費に関する委員の指摘について文化庁は会合の席で、「運営費がかかるのは2011年度以降。運営費は委託先の民間団体が賄うことになるが、人材育成やアーカイブの経費については、文化庁としても2011年度以降の予算を確保したい」との考えを示した。

 この発言を受けて、国立美術館で法人本部事務局長を務める甲野正道氏は、「一番の心配事は管理運営について。基本的なところを自己収入で賄うとなると、委託する団体としても誰も手を挙げなくなるが、文化庁の説明は力強く思う」と話した。

 なお、委員会のスケジュールは、7月中に基本計画案をとりまとめるという強行日程。8月には基本計画案を踏まえた企画提案を行い、10月に採択・決定する流れ。10月以降、建設業者や管理運営団体を公募し、工事着工に移る予定としている。

 第2回会合は7月8日、第3回会合は7月10日に開催され、それぞれ関係者からのヒアリングを行う。


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(増田 覚)

2009/7/2 22:01

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