携帯書籍サイトの健全認定制度開始、成人向け“ゾーニング”促進
EMA事務局の岸原孝昌氏(左)、事務局長の上沼紫野氏(右) |
一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)は30日、「サイト表現運用管理体制認定制度」の運用を開始し、携帯サイト運営事業者からの認定申請受け付けを10月8日より開始すると発表した。成人向けコンテンツをコーナー分けするなどして青少年に配慮しているサイトを“健全サイト”として認定するもので、認定サイトは携帯電話フィルタリングサービスの閲覧制限対象から除外される見込みだ。
携帯サイトにおける文章表現や画像、動画、電子書籍、ゲームなど、コンテンツの“表現”が広く対象となるが、中でも電子書籍や電子コミック、グラビア、ゲームを販売・提供しているサイトを主に想定している。
EMAによると、多くの携帯向け電子書籍サイトは現在、成人向けコンテンツと一般コンテンツが1つのサイトで混在しているのが実情。一部に青少年に不適切なコンテンツがあるだけで、そのサイト全体が携帯フィルタリングサービスの閲覧制限対象となってしまい、青少年に有用なコンテンツの流通の阻害要因にもなっている。それと同時に、こうした過度な利用制限をきらい、携帯フィルタリングサービスを解約するユーザーが出てくるなど、青少年有害情報対策のために用意されたサービスが有効に機能しないことにもつながっているという。
「サイト表現運用管理体制認定制度」は、書店やコンビニストア、ビデオ店などにおいて成人向け商品をコーナー分けして提供する“ゾーニング”を、携帯電話向けの電子書籍サイトなどにも導入しようとするものだ。成人向けコンテンツを別サイトに分離したり、サイトが1つであってもコーナーを分けるなど、青少年が利用することを前提とした閲覧制限措置を求める。
●ゾーニング基準はサイト運営事業者が策定、自主管理体制構築
ゾーニングの方法と認定範囲(「サイト表現運用管理体制認定基準 概説書」より) |
閲覧制限すべき要件としては、「性」「暴力」「自殺」「犯罪」「その他」の5項目。具体的には、1)画像・表現・描写などにより著しく性欲を刺激するもの、2)暴力的又は陰惨な画像・表現・描写などにより興味本位に暴力行為又は残虐性を喚起・助長するもの、3)自殺を誘引・助長・ほう助するもの、4)犯罪行為及び刑罰法令に抵触する行為又は誘引・助長・ほう助するもの、5)その他、青少年の健全な育成を著しく阻害するおそれがあるもの――となっている。
例えば電子書籍サイトの運営事業者は、そこで提供しているすべてのコンテンツについて、これらの要件について“レベル”を判定し、そのレベルに応じた配慮をとる必要がある。
例えば、EMAが例示しているレベル判定表では、「性」の項目について、レベル0が「性表現を含まないもの」、レベル1が「性表現が適切に抑制され、最小限にとどまっているもの」、レベル2が「社会通念上認められる範囲であるが、性表現が青少年に対して注意・配慮が必要なもの」、レベル3が「社会通念上認められる範囲であるが、直截な性表現を含み、青少年に対して注意・配慮が必要になるもの」、レベル4が「興味本位に性行為を喚起・助長するもの」「18禁コンテンツ」「違法コンテンツ」となっている。
「サイト表現運用管理体制認定制度」の認定申請するサイトは、このうちレベル4のコンテンツが掲載不可となり、提供したい場合はゾーニングしてサイトやコーナーを明確に分離する必要がある。一方、レベル0~3までのコンテンツは掲載することが可能だが、レベル2と3については、注意を喚起した上で閲覧できるようにしたり、比率が少ないこと、トリミングやぼかしなどの表現の一部変更することなどが条件となる。
EMAではこうしたレベル判定表や、5つの要件に該当する46項目の表現(例えば「キス」「下着」「水着」「喘ぎ声/擬音」など)について、レベルを判定するのに参考となる例示集も公開した。ただし、これはあくまでも例示であり、実際のゾーニング基準はサイト運営事業者が策定して管理することになる。EMAでは、各社の作成した基準が最低限の基準をクリアしているかを判断するかたちになる。
なお、ゾーニングの必要がある成人向けコンテンツを、別サイトではなく同一サイト内でコーナー分けした場合は、成人向けコーナーを除いた部分が今回の“健全サイト”認定の対象となる。そのため、フィルタリングデータベースで判定することなどを考慮し、少なくともサブドメイン単位でコーナー分けするのが望ましいという。
「サイト表現運用管理体制認定制度」の審査料は、サイトの規模などで異なり、50万円から300万円程度。審査結果が出るまでの期間は、最短で1カ月程度、最長でも3カ月以内には審査結果を出したいとしている。
認定期間は、認定日から1年間で、その間、追加・変更されたコンテンツについても表現レベルを継続的にチェックし、月ごとにEMAに報告する必要がある。認定期間満了後は再審査を行い、認定を更新するかどうか判定される。
関連情報
(永沢 茂)
2009/9/30 20:18
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