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インターネット救急車、実用実証実験へ〜奈良先端大


隊員はウェアラブルコンピュータを装着している。めがね状の装置にカメラとヘッドマウントディスプレイが実装されており、コンピュータ本体などは隊員が着ているベスト内に格納されている

 奈良先端科学技術大学院大学の砂原秀樹教授と生駒市消防本部が開発を進めている「インターネット救急車MobileER」の第4回目の公開実証実験が10月3日に行われた。

 「インターネット救急車MobileER」の実証実験では、これまでに救急隊員が装着したウェアラブルコンピュータから、受け入れ先の医師へ画像と音声を用いたコミュニケーションを実現する機能が実現されていた。

 今回の実験では新たに、実用段階に必要となる機能としてマルチキャスト型通信機能を実現し、受け入れ病院を決定する段階からの円滑な支援機能のデモンストレーションを行った。

 システムは、救急車内に設置されたMobile IPv6(RFC3775)/Network Mobility(RFC3963)をサポートするモバイルルータを核とし、心電図等の救急車内の各機器及び救急隊員が装着するウェアラブルコンピュータをインターネットに接続できるようにしている。

 救急隊員のウェアラブルコンピュータで撮影された動画は、いったん消防本部のサーバーを経由して、受け入れ先の病院の医師のコンピュータに伝達される。また、音声による隊員と医師間のコミュニケーションもサポートされており、動画像を見ながら傷病者への対応を医師から隊員へ指示することが可能となっている。医師側の設備は、Adobe Flash再生に対応したWebブラウザが利用できるコンピュータがあれば利用可能で、特別なハードウェアやソフトウェアは必要としない。

 今回、新たに追加されたマルチキャスト型通信機能では、救急車からの動画像配信を複数の病院へ同時に可能としている。

 救急車が現地に到着し傷病者への対応を開始すると同時に複数の病院側へ通知がなされることで、従来のように1件ずつ受け入れ病院を探すのに比べ、受け入れ側病院の決定が効率的かつ円滑になされることを狙っている。

 また、動画像は複数の病院へ同時に配信されるため、傷病者の状況に応じて受け入れ先病院をより専門性の高い病院に切り替える際にも、隊員及び医師同士のコミュニケーションを円滑にすることが可能となる。

 開発に参加している奈良県立五條病院の副院長今西正巳氏は、「現在のシステムの完成度は高く、できるだけ早い時期の現場への導入が望まれる」とコメント。一刻をあらそう救急現場への早期導入への期待を述べた。

 また、砂原教授は「実際の救急医療現場ではより高精細で色再現性の高い画像が必要であると言われている。このため、導入にはモバイルブロードバンド環境の普及が前提となるので、生駒市へのWiMAXの展開を待って実用実証実験の段階へ進みたい」と今後の計画を述べた。

医師側のブラウザ画面。実験ではWebブラウザはFirefoxが利用されていた。下の波形は心電図からの情報で、上が心拍、下が血中酸素濃度。実験では、複数のPCのブラウザ画面に同時に動画や心電図の情報が配信されている様子を示していた ヘッドマウントディスプレイとカメラの様子。ヘッドマウントディスプレイにより、視野内に半透明のVGA画面が表示される。左目側にある、小さい黒い棒状の物がディスプレイ。カメラはレンズとレンズの間に装着されている

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(溝内 公紘)

2009/10/5 12:35

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