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救急車をMobile IPv6で接続、患者の画像を病院へ配信


 奈良先端科学技術大学院大学と生駒市消防本部(奈良県)は、救急車をMobile IPv6で接続し、救急隊員に装着したウェアラブルシステムで撮影した患者の画像を病院に配信するシステムの開発に着手した。

 生駒市消防本部では、このたび可搬式ナビゲーションシステムや生駒市統合地理情報システムを組み合わせた「高機能消防指令センター」の運用を開始したが、その完成式典でこの計画が披露された。

 開発するシステムは、救急隊員が装着するウェアラブルシステムとMobile IPv6/NEMO(NEMO=Network Mobility、注参照)を用いた通信システムから構成される。ウェアラブルシステムでは、装着型のカメラ及びコンピュータを採用。これにより、救急隊員の作業を邪魔することなく、患者の様子を撮影することが可能となる。

 撮影された画像は車載サーバーを経由し、指令センターのサーバーに蓄積される。受け入れ先の病院の医師がこの画像を参照して患者の様子を把握することにより、適切な応急措置の指示、受け入れの準備をスムースに行なえるようになることが期待される。


救急隊員と消防隊員によるウェアラブルシステム装着の様子。救急隊員(左)のベストの部分にコンピュータ等が収容されている。デモではVAIO Uが組み込まれていた。消防隊員(右)は防護服内にコンピュータが装着される ヘッドマウントディスプレイとカメラの様子。右側がヘッドマウントディスプレイ。視野内に半透明のVGA画面が表示される。左側の小さい黒い棒状の物がカメラ


 Mobile IPv6/NEMOを用いた通信システムは、WIDEプロジェクト内のKAMEプロジェクトおよびNautilus6プロジェクトで開発されたMobile IPv6/NEMO実装である「Shisa」を元に、インターネットオートモビリティ研究所が開発したモバイルルータを中心に構成されている。

 隊員が装着するウェアラブルシステムを接続するだけでなく、車内に設置されるGPS センサや車載サーバー、各種医療機器を接続しインターネットを通じて司令センターや病院とのやりとりを可能とする。今回のシステムでは、接続技術としてPHS/無線LANを組み合わせてシームレスに通信できるようになっている。さらに、これらのシステムが扱う情報はセキュリティやプライバシーに注意を要するものであり、IPsecを用い安全でセキュアな通信を行なえるよう配慮している。

 現在システムの最終調整が行なわれており、5月上旬には実証実験を開始する予定とのことである。また、本システムは消防車への活用も予定されており、火災現場を把握し消火の指示を的確に行なえるようにすることも期待されているという。


救急車内に設置されたモバイルルータ等の機器(薄緑色の箱がモバイルルータ)。各機器はPower over Ethernet HUBより電源が供給されている モバイルルータ等は助手席後のボックスに設置されている

)【Mobile IPv6/NEMO】
 IPv6 の拡張として移動するノード/移動するネットワークを支援するために開発されたプロトコル。通常のIPではノードあるいはネットワークが移動するとIPアドレスが変わってしまい、通信がいったん途切れることになる。しかし、Mobile IPv6やNEMOを用いることで、移動する自動車に設置されたノードと継続した通信を実現できる。特に、NEMOではモバイルルータのみが対応することによりネットワーク内のノードは通常のIPv6のままで移動しても継続して通信を行なうことができる。
Mobility Support in IPv6 (RFC3775)
Network Mobility (NEMO) Basic Support Protocol (RFC3963)


URL
  ニュースリリース
  http://www.wide.ad.jp/news/press/20050408-IAL-j.html


( 溝内公紘 )
2005/04/08 16:20

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