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SNSは再び一律フィルタリング? 東京都の動きに事業者懸念


ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏(2月5日に行われた決算説明会で)

 携帯フィルタリングサービスにおいて、コミュニティ機能を持つSNSなどが、再び一律的に遮断されてしまうのではないか――。東京都議会で審議中の青少年健全育成条例の改正案に関連して、SNS「mixi」を運営する株式会社ミクシィが懸念を示している。

 今回の条例改正案では、インターネット事業者やフィルタリングソフト事業者が提供するフィルタリングソフト/サービスついて、「青少年がインターネットを利用して自己若しくは他人の尊前を傷つけ、違法若しくは有害な行為を行い、又は犯罪若しくは被害を誘発することを容易にする情報を閲覧する機会を最小限にとどめるものとなるように務めなければならない」との規定を加えた。

 特に厳しいことを言っているようには見えないが、事業者にこのような責務を課すことにした背景には、東京都青少年問題協議会による提言がある。

 同協議会が1月にとりまとめた答申「メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について」では、第三者機関(モバイルコンテンツ審査・運用監視機構:EMA)による“健全サイト”認定を受けた「mixi」などのコミュニティサイトでも、これを利用したことに起因して青少年が犯罪に巻き込まれるなどの被害やトラブルが発生していると指摘。保護者の立場からは、“健全サイト”としてフィルタリングの対象外となっていることに対して疑問の声もあるとして、「望ましいフィルタリングの水準に関する規定を条例に盛り込むなどして、フィルタリング開発事業者及び第三者機関に対して注意喚起を行う必要がある」としていた。

 また、「第三者機関による認定の有無のみにとらわれず、コミュニティ機能を有したサイトについてはフィルタリングにより遮断することを基本とし、第三者機関認定サイトの中で保護者が閲覧しても良いと判断したサイトについてのみ、後から閲覧可能に設定できるような仕様にすることについて検討するよう、携帯電話事業者に対して要請していく」ことを提言していた。

 協議会がコミュニティサイト対策の強化を求めているのは、「出会い系サイト規制法」による規制の対象外であるSNSやプロフサイト、掲示板などを介して青少年が福祉犯罪被害に遭う事例が報告されているためだ。答申では、「mixi」や「GREE」など大手サイト事業者10社に対して、警視庁が2009年2月〜6月、「利用規約に違反して実質的に出会い系サイト化しているコミュニティサイト等」の解消を要請したことを取り上げ、そのうちの6社がEMA認定サイトであり、フィルタリングの対象外だったことを紹介している。

 なお、この条項の新設の意図については、3月2日に行われた民主党・大沢昇議員の代表質問に答えるかたちで、東京都青少年・治安対策本部長の倉田潤氏が「(青少年インターネット環境整備)法施行後も、フィルタリングにより除外されていないサイトを通じて青少年が犯罪被害に遭う事例が見られることを踏まえ、関係事業者に対し、青少年の被害防止に向けたフィルタリングの実効性確保に関する一層の取り組みを促すために置くもの」(平成二十二年東京都議会会議録第二号〔速報版〕)と説明している。

青少年対策は、民間の自主的取り組みを尊重するはずではなかったか?

 ミクシィでは、2月に行われた決算説明会でも代表取締役社長の笠原健治氏がこの答申について触れ、コミュニティサイトが一律に扱われることなど3つの側面で懸念を示していた。

 まず1つめに、国が定めた青少年インターネット環境整備法の基本理念に反する点だ。同法では、青少年が安全に安心して利用できるインターネット環境を整備するために、民間事業者の自主的・主体的な取り組みを尊重するとしている。ミクシィをはじめとしたインターネット企業や通信事業者にとどまらず、業界を超えて組織された安心ネットづくり促進協議会などで、問題解決に向けた取り組みを進めている段階だという。笠原氏は、こうした取り組みの効果が出始めてきている時期にあって、民間の自主的取り組みに対してあまりにも理解がないと指摘する。

 2つめは、青少年といっても小学生、中学生、高校生では保護すべき範囲や程度が異なるとともに、コミュニティサイトにもさまざまなサービスがあるにもかかわらず、それを一律にフィルタリングしようとしていること。mixiでの“出会い”に起因したとされる事件が報道される一方で、同社としては、15〜17歳のユーザーについてはコミュニティ機能を利用禁止にしているほか、プロフィールの検索対象から除外したり、プロフィールページの相互閲覧範囲をマイミクのマイミクまでに制限するなど、青少年保護のための対策を進めているという。

 3つめとして、そうしてコミュニティサイト全般を一律に制限するということになれば、事業者に過度の萎縮効果を与え、自主的取り組みを推進するインセンティブを失う事業者も出てくると指摘。「地下に潜る事業者も出てくるのではないか」とした。

 なお、答申ではフィルタリングの普及・促進についても提言しているが、この考えについてはミクシィも賛同しており、「携帯電話業者などとも協力してフィルタリングの普及・促進に努めるとともに、安心ネットづくり促進協議会などと協力し、ユーザーのリテラシー向上を進めていく」としている。

 答申ではこのほか、「フィルタリング開発事業者や第三者機関がフィルタリングの対象外としていたサイトに起因して青少年が実際に被害・危険に遭った事例等をこれらの事業者等にフィードバックし、青少年が被害に遭わないために実効あるフィルタリング基準への見直し等を要請していく」ことを提言していた。

 条例改正によって東京都が今後、「フィルタリングにより除外されていないサイトを通じて青少年が犯罪被害に遭う事例が見られることを踏まえ、関係事業者に対し、青少年の被害防止に向けたフィルタリングの実効性確保に関する一層の取り組みを促す」というのであれば、単にそうしたサイトをフィルタリングの対象に含めるよう求めるだけでなく、事件が起きた原因や犯罪の手口を含め、東京都や警視庁が把握している情報をサイト事業者などに対してもきちんと「フィードバック」し、再発防止のために連携をとっていく必要がありそうだ。


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(永沢 茂)

2010/3/12 06:00