「デジタル教科書教材協議会」MSやソフトバンクなど70社で設立


 マイクロソフト株式会社代表執行役社長の樋口泰行氏やソフトバンク株式会社代表取締役社長の孫正義氏らが発起人となり準備が進められてきた「デジタル教科書教材協議会」が27日、設立された。当初の会員は70社で、アップルやソニー、NEC、富士通、NTTドコモ、KDDI、セガをはじめとするIT関連企業のほか、出版社や新聞社、シンクタンクなど幅広い業種の企業が名を連ねている。

 協議会の目標は「すべての小中学生がデジタル教科書・教材を持つ環境」を実現すること。活動内容としては、デジタル教科書に使用するタブレット端末などのスペックを検討してガイドラインをまとめるほか、実際に教育現場でそれを使って実証実験を行う。こうした活動を通じてデジタル教科書の普及・啓発を図り、政策提言も行うとしている。


デジタル教科書教材協議会の会員企業。幹事会員19社、一般会員51社の計70社が参加しており、今後も会員を募る

 同日行われた設立総会において、発起人の1人でもある株式会社三菱総合研究所理事長で元東京大学総長の小宮山宏氏が会長に選出された。総会後に開催したシンポジウムでは、小宮山氏のほか、原口一博氏総務大臣も駆け付けあいさつしたほか、樋口氏と孫氏が講演してデジタル教科書の必要性をアピールした。


デジタル教科書教材協議会会長に選出された株式会社三菱総合研究所理事長で元東京大学総長の小宮山宏氏原口一博氏総務大臣
マイクロソフト株式会社代表執行役社長の樋口泰行氏ソフトバンク株式会社代表取締役社長の孫正義氏

 樋口氏は、国際競争力を高めるために個人に求められるスキルとして、英語や第3外国語、ICTスキルという基礎スキルに加え、問題解決力、コミュニケーション力、創造力という実践スキルがあると説明。この実践スキルを伸ばすのに、シミュレーション機能や音声・動画、描画、共有、共同作業、プレゼンテーション、ノート/メモ、検索、分析といったデジタルならではの機能が活用できるとした。


実践スキルを養うために活用できるデジタルならではの機能マイクロソフトの考えるデジタル教材の機能
マイクロソフトが制作したデジタル教材のデモデジタル教科書・教材の将来像
マイクロソフトのデモでは、東芝のLibretto W100やCM1が用いられた

 孫氏もまた、国際競争力をキーワードに講演した。現在、日本の技術力や知識が世界市場で競争力を失っている中、もう一度競争力を取り戻すためには、30年後に企業の中核を担う子どもたちにとって、30年後に役立つことを教えるべきと強調。30年後の企業人に求められる要素として、リーダーシップ、競争意識、知的能力、グローバル交渉力、プレゼンテーション能力、思考力、検索能力、分析力を挙げる。

 しかし、現在の教科書で教える内容は丸暗記中心であり、「今から30年後に役に立たないことが多すぎる」と批判。教育改革が必要であり、それには紙の教科書では不十分だと訴える。今年度中にもモデル校を選定して実証実験を進め、2015年には小中高校にデジタル教科書を配備するマイルストーン案を示した。


日本の国際競争力低下として孫氏が挙げた一例デジタル教科書の財源としては子供手当の一部を提案
孫氏はiPad用に制作した教材をデモしたあらゆるデジタル教材をクラウド上で共有できるようにしたいという



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(永沢 茂)

2010/7/27 17:37