ニコニコ動画の新バージョンは(原宿)、リアル店舗「ニコニコ本社」をオープン


 株式会社ニワンゴは28日、動画共有サイト「ニコニコ動画」のイベント「ニコニコ大会議2010秋~それはロックか?~」を東京・渋谷のSHIBUYA-AXで開催し、新しい機能を追加した新バージョン「ニコニコ動画(原宿)」を発表。12月には、東京・原宿にスタジオやショップなどを備える「ニコニコ本社」をオープンすることなどを発表した。

ニコ動がポータルサイト化? 3ペイン構成の新トップページ

 ニコニコ動画の新機能や新サービスなどは、イベント「ニコニコ大会議」で発表されることがここ最近の恒例となっている。イベントとしては、ニコニコ動画の人気アーティストによるライブがメインの構成となっており、新バージョンの発表はイベントの冒頭に、ニワンゴ取締役の西村博之氏とドワンゴ取締役の夏野剛氏により行われた。

西村博之氏と夏野剛氏。新たに夏野氏の銅像が製作された

 西村氏と夏野氏は、まずニコニコ動画のリアル店舗「ニコニコ本社」を原宿にオープンし、ニコニコ動画の新バージョンの名称が「ニコニコ動画(原宿)」となることを発表。「原宿」というネーミングに対して来場者から挙がった戸惑いの声に対し、西村氏が「いまさら原宿っていうセンスは昭和だと思ってた」と言い訳しつつ、新バージョンの概要を説明した。

 新バージョンの「ニコニコ動画(原宿)」は、29日から利用可能となる予定で、トップページを大幅にリニューアル。動画を中心としていた従来のトップページから、上位階層の「総合」トップページという位置付けとなり、「ニコニコ生放送」「ニコニコ大百科」「ニコニコ市場」など動画以外の各種サービスを統合。上部に大きな検索ボックスを設置し、3ペイン構成で左側に各種サービスへのリンクを配置、中央ペインの上部に「ニコニコニュース」を配置するなど、ポータルサイト的なデザインとなった。

 ランキングについても、各種のランキングをまとめた「総合ランキング」を新設。従来の動画ランキングに加えて、mixi、Twitter、Amebaといった外部サイトで視聴されている動画ランキングや、生放送のランキングなどを追加した。

ニコニコ動画(原宿)のトップページランキングページもリニューアル

 「ニコニコニュース」は、従来のニコニコ動画関連の話題を紹介するという位置付けから、外部メディアからの記事提供を含む各種ニュースを配信する形にリニューアル。各ニュース記事には、記事に付けられたタグに関連した「関連動画」が表示されるほか、記事に関連するTwitterのツイートを表示。また、ニコニコ生放送などの取材記事といった、ニコニコ動画関連の独自記事も掲載していく。

 従来のトップページは「動画」のトップページという位置付けとなり、動画関連の情報に特化する形でリニューアル。検索数が多いキーワードに基づいて動画をピックアップする「今流行りのキーワード」コーナーや、各ジャンルから新しくコメント投稿された動画を紹介する「新着コメント動画」コーナーを大きく配置。「ニコニ広告」では、指定した日付に宣伝したい動画を動画のトップページに掲載できる設定を追加した。

「ニコニコニュース」に一般ニュースも加わり、各ニュースには「関連動画」も従来のトップページは「動画」のトップページという位置付けに

 ユーザーの「マイページ」もリニューアルし、新機能としてニコニコ動画の利用で「スタンプ」がもらえる機能を追加。動画を見る、生放送をするといったユーザーの行動に応じてスタンプが取得でき、ユーザーのプロフィールページに掲載される。取得したスタンプの数やレア度によって「スタンプ経験値」が貯まり、スタンプ経験値のランキングで他のユーザーと競うこともできる。

 このほか、ニコニコ動画でのユーザーの行動のレポートを表示する「ニコレポ」機能で、他のユーザーのニコレポにコメントを付けられる機能を追加。ユーザーがゲームを作って投稿できる「ニコゲー」と連動するフレンド機能、マイページから動画を直接投稿できる機能などを追加した。

 新たな取り組みとしては、東京・原宿にリアル店舗「ニコニコ本社」を設立することも発表した。新バージョンの名称が「ニコニコ動画(原宿)」となった理由でもあり、リアル店舗により「原宿を『ニコニコ文化』の新たな起点として、ニコニコの情報を発信し続ける」としている。

 ニコニコ本社は、原宿の竹下通りから少し入った場所にオープンし、地上3階、地下1階の建物全体がニコニコ動画関連の施設となる。公開収録も可能なサテライトスタジオや、CDやグッズを販売するストア、カフェなどが設けられる。

「ニコニコ本社」のイメージ

 このほか、「ニコニコ市場」がiTunes Storeに対応することや、iPhoneアプリの高画質化対応、ロッテとの提携によりニコニコ動画公認のお菓子「ニコニコ動菓」を発売することなどが発表された。

 さらにゲストとして、角川グループホールディングスの角川歴彦取締役会長が登場。角川グループとドワンゴのコンテンツ配信に関する業務提携を発表した。角川グループが2011年4月から展開する電子書籍を中心としたコンテンツ配信プラットフォーム「Book☆Walker」とニコニコ動画が連携し、ニコニコ動画では電子書籍ビューアー(仮称:ニコニコビューワ)を提供。ニコニコ動画のユーザーが、Book☆Walkerで提供される電子書籍などのコンテンツの一部を閲覧できるようにすることを明らかにした。

 角川会長は、「コンテンツを見れば作者へのリスペクトがあるかどうかはわかる。愛があればMADもOK」とコメントするなど、ニコニコ動画への理解と期待を示し、「こうした場にはあまり出たがらない」(西村氏)というドワンゴの川上量生会長をステージに招き寄せて握手を交わし、「ニコニコ動画との提携をよろしくお願いします」と挨拶。ステージを去る前にはサプライズとして、アニメ「ストライクウィッチーズ」の劇場版公開が決定したことを初めて発表し、来場者の拍手を集めた。

ニコニコ市場がiTunes Storeの商品にも対応ロッテからは「ニコニコ動菓」が発売
角川グループホールディングスの角川歴彦会長(左から)夏野氏、川上氏、角川氏、西村氏

「誰にでもわかりやすく」「既存ユーザーには感謝の気持ちを」

 ニコニコ動画の1年ぶりとなる今回のアップデートでは、トップページが全面リニューアルされ3ペイン構成となり、左ペインに各種サービスのリスト、中央ペインにはニュースが配置されるなど、ポータルサイト的な構成となった。今回のリニューアルの意図について、ドワンゴ ニコニコ事業本部の中野真氏、坂本将樹氏、亀松太郎氏に話を伺った。

ドワンゴ ニコニコ事業本部の(左から)亀松太郎氏、中野真氏、坂本将樹氏

 今回のリニューアルのテーマは、「より多くの人により使いやすく」「ユーザーに感謝の気持ちを表そう」の2点で、トップページがポータルサイトのようになった理由は前者で、「誰が来てもわかるようなページにしたかった」ことにあるという。

 「これまでのトップページは、ニコニコ動画を良く知っている人にはわかりやすいかもしれないが、一番上のメニューに『やってみた』『殿堂入りカテゴリ』とか並んでいても、初めて来た人には何のことだかわかりづらい」(中野氏)ことから、誰でもわかるトップページを目指したという。

 「結果的に、3ペインのトップページになりましたが、これもわかりやすさを追求した結果。『どこかのポータルサイトみたい』とユーザーにつっこまれるのは覚悟の上です」(中野氏)。

 トップページ中央にニュースを配置したのも「わかりやすさ」の一環で、「ニュースは初めて来たユーザーの入り口としても最適」(亀松氏)であり、各ニュースにニコニコ動画内の「関連動画」が表示されることで、新たなユーザー動線としても期待できるという。「ニコニコ動画のトップページに一般ニュースなんて」というユーザーの反応もあるかもしれないとしながらも、「ニコニコ生放送でも、政治関連のプログラムが常に高い人気になるなど、やってみなければわからないことは多い」として、どのようなニュースが関心を集めるかに期待しているという。

 総合ランキングも、ニコニコ動画内の視聴数ではどうしても特定のジャンルに偏ってしまうため、Twitter、mixi、Amebaといった外部サイトからの視聴ランキングを追加。「テストの段階でも、かなり今までのランキングとは違った動画が上位に上がってきて、サイトごとの傾向の違いなども見られてとても興味深い」(坂本氏)。

 こうした新規ユーザーに向けたリニューアルの一方で、「ユーザーに感謝の気持ちを表そう」という観点から追加されたのが「スタンプ」機能だ。「動画を投稿した、マイリストに動画を追加したといった行動から、人気になった動画を発掘したといったような、細かい条件についてはあえて公開しないようにしようと思っていますが、ニコニコ文化を支えてくれる、貢献してくれているユーザーにもっと光を当てたい」(中野氏)という意図から、第1弾としてスタンプ機能を追加したもので、今後もこうした機能を追加していきたいとした。

 また、ニコニコ動画のユーザーページ「マイページ」も、これまで様々な要素が盛り込まれていたデザインをリニューアルした。「マイページは、使っている人はかなり積極的に使ってもらえている機能だが、さらに多くのユーザーに積極的に使ってもらいたい」(中野氏)という意図から、リニューアルを実施。動画の「マイリスト」や、気になるユーザーを登録できる「ウオッチリスト」、コミュニティの情報などを一覧できる「ニコレポ」をマイページの中心に据え、ニコニコ動画を積極的に利用しているユーザーにとってより使いやすいページを目指したという。

 久々の大幅リニューアルで、トップページの変更などユーザーには戸惑いもあるかもしれない。この点について中野氏は「移行期間として、従来のトップページに切り替えられる機能も用意します」として、「その間に、ユーザーからの意見を参考にしてよりよいページにしていきたいので、ぜひ新しいページへのご意見をお寄せください」と呼びかけた。


関連情報

(三柳 英樹)

2010/10/28 19:30