電子書籍作成「BCCKS」新サービス、EPUB拡張仕様でページレイアウトを実現


松本弦人氏

 株式会社BCCKSは2日、ウェブ上で電子書籍を作成できるサービス「BCCKS(ブックス)」について、現在開発を進めている新たな電子書籍リーダーと作成ツール、電子書籍フォーマットに関する発表会を開催した。

 BCCKSは、ウェブ上で電子書籍が作成できるサービスとして2008年に開始。これまでに2万8000冊以上の本がユーザーによって作成されており、個人だけでなく法人による利用も広がっているという。

 BCCKSでは現在、縦書きやルビ、リフローレイアウトに対応する新たな電子書籍フォーマットと電子書籍リーダー、作成ツールの開発を進めており、発表会ではBCCKSのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務める松本弦人氏がこれらについて説明を行った。

 松本氏は、「従来のBCCKSは写真やデザインの本が多かったが、これは文字が扱いにくいという問題もあったため。新しいBCCKSは徹底的に文字をターゲットに開発してきた」とコメント。PCやiPadなど複数の端末だけでなく、紙の書籍にも対応できるマルチデバイスを実現するため、フォントやレイアウトの面でもこだわって開発を進めていると説明した。

 新しい電子書籍リーダーとなる「BCCKS Reader」は、7月にPC版とiPad版、8月にAndroid版のそれぞれバージョン0.1を公開予定。PC版はウェブブラウザーから利用できるサービスとなり、iPad/Android版はアプリとなる。まず電子書籍を閲覧するための機能から提供し、販売機能や他サービスからの記事のインポート機能、ソーシャルリーディング機能などはその後順次対応していく予定。

PC版とiPad版を7月に公開するPC版の画面
iPad版の画面リリース予定

 新たなフォーマットに対応する編集ツールも、7月に既存会員の中からモニターを募り、限定公開する予定。BCCKS代表取締役の山本祐子氏は、現在開発中の編集ツールのデモを披露。ウェブブラウザー上でレイアウトを選択し、テキストや写真を入れていくことで簡単に電子書籍が作成できる様子を示した。レイアウトは「二段組」「三段組」などへの変更が即座に行え、マルチデバイス対応の電子書籍が作成できる。

レイアウトを選択見出しや本文、写真を入力
作成した電子書籍段組への変更も容易に行える

 電子書籍フォーマットについては、BCCKSの共同代表に就任予定の竹中直純氏と、ゼロベース株式会社の田中孝太郎氏が、新しいBCCKSで使用するEPUBベースの独自フォーマット「bxml」についての説明を行った。

 田中氏は、「なぜいまさら独自フォーマットなのかと思うかもしれないが、EPUBにはページレイアウトの概念が無く、そのための議論もようやく始まった段階だ」として、EPUBにページレイアウトの機能を加えたものがbxmlだと説明。EPUBの仕様をベースに、sectionタグでページレイアウトを指定する「ページセクション」や、ページレイアウトに関する情報を記述する「ページレイアウトCSS」、複数の端末や画面サイズに対応するための「フォントサイズセット」などの独自拡張を行うことで、電子書籍の作者が求めるページレイアウトを実現するとした。

 竹中氏は、「BCCKSが提供したいのは良い読書体験」で、それを実現するためにbxmlを開発したと説明。「規格の標準化争いに著者や読者が巻き込まれるべきではない。EPUBと敵対するつもりはなく、共存を目指す」として、bxmlも要素技術はEPUBと同じものであるため互換性は高く、EPUB3との相互変換性を進めていくとした。

 新しいBCCKSのPC版のサンプルは、現在BCCKSのサイトで公開されており、実際に確認することができる。PC版の動作環境についてはSafariが推奨されており、Internet Explorer(IE)の場合には「Chrome Frame」プラグインをインストールすることが求められている。竹中氏によると、PC版はWebKitに限定して開発しているわけではなく、今後はIE9やFirefox 4などのモダンブラウザーであれば閲覧できるものになる予定だとしている。

EPUBにページレイアウトの独自拡張を加えた「bxml」をフォーマットとして使用ページセクションの例
ページレイアウトCSSの例デバイスや判型ごとに文字サイズや行間などを定義する「フォントサイズセット」
竹中直純氏田中孝太郎氏

関連情報

(三柳 英樹)

2011/6/3 13:43