Akamai、「World IPv6 Day」のトラフィックをリアルタイムで可視化
アカマイ・テクノロジーズ合同会社は、6月8日に実施されるIPv6の大規模トライアル「World IPv6 Day」を前に、IPv6のウェブトラフィック状況をアルタイムにグラフ表示するサイトを公開した。
アカマイIPv6統計データ |
World IPv6 Dayは、参加企業が自社のサイトを1日だけIPv4/IPv6のデュアルスタック対応とし、その影響を探るためのトライアル。グリニッジ標準時で6月8日0時(日本時間では同日9時)からの24時間にわたって行われる。GoogleやYouTube、Facebookなど世界有数のサイトが参加を表明しており、日本でもYahoo! JAPAN、NECビッグローブ、NTTコミュニケーションズグループなどが参加を表明している。
当日は、IPv4であればそれらの参加サイトに通常通りアクセスできるため特段変わりはないが、IPv6環境のユーザーであれば、一時的に多くのサイトがIPv6でアクセスできるようになる(ネットワーク環境やOS、アプリケーションによっては不具合が発生する可能性もある)。
米Akamai Technologiesがグローバルに運用しているコンテンツ配信ネットワーク(CDN)では現在、インターネット全体のトラフィックの20~30%をさばいており、そのトラフィック量は6Tbps以上、1700万ヒット/秒を超えるという。しかし、通常ではIPv6のトラフィックは1%にも満たない。World IPv6 Dayの当日には、これが増加することが予想されている。
今回、Akamaiが開設したサイトは、同社のCDNで処理されたIPv6ウェブトラフィックを統計データ化するもので、世界全体または地域別に視覚的に確認できる。これを見ると、7日時点ではトラフィックは非常に少なく、ピーク時でも世界全体で50ヒット/秒程度にとどまっている。地域別では北米が多く、次いで欧州、アジアの順。一方、南米、アフリカ、オーストラリアではトラフィックが確認されていない。トラフィック量のほか、IPv6の遅延とパケット損失率も確認できる。
AkamaiのCDN内はすでにIPv6対応済みで、IPv6環境のエンドユーザーから接続要求があった場合にも、CDNの顧客企業のウェブサイトに対してIPv6で透過的にアクセスできるようになっている。通信キャリアなどに対してベータサービスとして提供中で、Akamaiの顧客企業のうち約40社が利用しているという。World IPv6 Dayの当日にはさらに多くの顧客企業がIPv6に対応することになる。
Akamai TechnologiesのEMEA/APAC/South America担当副社長兼ジェネラルマネージャのGreg Lazar氏 | Akamai TechnologiesのチーフネットワークアーキテクトのPatrick Gilmore氏 |
7日には、Akamai TechnologiesのEMEA/APAC/South America担当副社長兼ジェネラルマネージャのGreg Lazar氏と、チーフネットワークアーキテクトのPatrick Gilmore氏が出席して記者説明会が開催された。Lazar氏は「企業は危機感とスピード感を持ってIPv6に対応すべきだが、すべて移行するには10年単位の時間がかかる」と説明。今から移行準備にとりかかることの必要性を強調するとともに、Amkamaiでは同社CDNにおけるIPv4/IPv6デュアルモードのサービスをすべての顧客に提供できるよう準備を進めているとした。
Gilmore氏は、IPv4、IPv6ネイティブ方式、IPv6トンネル方式のネットワークで遅延とパケット損失率を測定・比較した興味深いデータを紹介した。まず、Akamaiが米国の3拠点から6800以上のネームサーバーに対してpingを実行した際の平均遅延は、IPv4とIPv6ネイティブ方式ではどちらも200ミリ秒強で、IPv6ネイティブ方式がわずかに遅延が大きかった程度だったのに対して、IPv6トンネル方式では300ミリ秒を超えた。
グローバルでパケット損失率を計測した結果は、IPv4が3.0%程度だったのに対して、IPv6ネイティブ方式は1.0%強と少なかった。しかしIPv6トンネル方式では7.0%近くに上った。Gilmore氏は、この結果について正確な原因までは分析できていないとしながらも、IPv6ネイティブ方式はまだトラフィックが少ないこと、IPv4ネットワークと直接つながっていないことから、パケット損失率が低いものとみている。
IPv4、IPv6ネイティブ方式、IPv6トンネル方式のネットワーク遅延の測定結果 | IPv4、IPv6ネイティブ方式、IPv6トンネル方式のネットワークのパケット損失率の測定結果 |
Lazar氏とGilmore氏は、8日に千葉県の幕張メッセで開幕するイベント「INTEROP Tokyo 2011」において、初日8日の午前10時30分から基調講演を行い、IPv6への対応について語る予定だ。
アカマイ・テクノロジーズではこのほか、SNS「GREE」を運営するグリー株式会社がWorld IPv6 Dayに先立ち、IPv4/IPv6クライアント間の相互接続テストをAkamiのネットワーク上で実施し、異種混在ネットワーク環境間での相互接続性を検証したことも発表した。
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(永沢 茂)
2011/6/7 18:20
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