Twitterをコミック化、気持ちが伝わるクライアント「Feel on!」


「Feel on!」iPhone用アプリのイメージ

 Twitterで交わされるツイートに含まれる感情を解析し、タイムライン(TL)をコミック風に表示するクライアント「Feel on!」が人気だ。4月8日に無償のiPhoneアプリを公開して以来、2週間で7万ダウンロードを達成。現在もダウンロード数は1日数百件ペースで増えているという。5月13日にはPC向けのウェブブラウザー版も公開した。

 TLをコミック化する技術の裏側には、独自開発のソーシャル感情エンジン「SEE(Social Emotion Engine)」がある。SEEはツイートを自動解析し、「愛情」「喜び」「興味」「期待」「悲しみ」「驚き」「怒り」「その他」の8種類に分類し、最適な感情に割り当てたイラストやカラーで表現している。

 さらに詳しく言うと、分類した感情に対しては、「とても」「ふつう」「あまり」という3段階で重み付けを行う。その上で、ツイートの中から「笑う」「うれしい」「美味い」といった状態表現を抽出し、最後にアイテムや出来事などを抽出することで、ツイートの内容に即したコミック化を実現している。

ソーシャル活用で言葉とイラストの整合性を向上

ソーシャルエモーションエンジン(SEE)のイメージ
東日本大震災に関連するツイートには「PRAY FOR JAPAN」というメッセージを掲げるなどのチューニングを行った

 ソーシャルを活用するのがSEEの大きな特徴でもある。具体的には、新規ツイート時に自分の気持ちに合ったイラストを選んで投稿できる「イラスト選択送信」のデータをSEEにフィードバックすることで、言葉とイラストがマッチする精度を向上させている。この仕組みについて、Feel on!を運営する株式会社L is Bの横井太輔CEO代表取締役は次のように説明する。

 「例えば、『ヤバイ、ラーメンうまい』と『ヤバイ、ラーメンまずい』の『ヤバイ』は機械では肯定的か否定的か判断できません。しかし、イラスト選択送信では、ユーザーがまずいと感じたときにはネガティブなイラストを選んでくれる。こうした情報をデータベースに学習させていけることがSEEの肝なのです。」

 今後は、琴線に触れたツイートに“チェックイン”する機能も実装する予定。ユーザーとしては、感動したツイートをログに残せることがメリット。一方、チェックインされたツイートは、言葉とイラストが整合している証拠でもあるため、Feel on!としてもチェックイン情報をSEEに反映させれば、さらにマッチングの精度を高められるというわけだ。

 イラストに関しては2週間に1回のペースで入れ替えを行っている。例えば、4月にはお花見のイラストを追加し、お花見のシーズンが終わると削除するといった具合だ。最近では、「iPad 2」に関するツイートを投稿すると、スティーブ・ジョブズ氏の似顔絵が登場するなど、話題性に応じてイラストを追加している。

 こうしたイラストは、前述のSEEによって言葉とマッチングさせているが、スタッフが手動でチューニングすることもある。例えば、東日本大震災の深刻な内容のツイートに対しては、イラストに登場するキャラクター「シモン君」の表情を隠したり、笑った表情を出さないように配慮。応援メッセージには「PRAY FOR JAPAN」というメッセージを掲げた。

 Feel on!の魅力について横井氏はこう説明する。「昨今はソーシャルサービスが全盛。しかし、テキストだけでは自分の気持ちが伝わらないこともある。Feel on!はイラストで表現することにより、『ありがとう』や『ごめん』といった簡単な言葉でも、より相手に気持ちを伝えられるのです。」

SEEを活用したB2B事業も

株式会社L is Bの横井太輔CEO代表取締役

 収益確保にも動き出している。5月にはiPhone用アプリで有償課金を開始。「おはよう」や「お腹すいた」などの“決めゼリフ”をワンタップでツイートできる「インスタントTweet機能」、ツイートを翻訳できる「ツイート翻訳ボタン」、ツイートに含まれるリンク先を「Read it Later」や「Instapaper」に保存できる「後で読む」ボタンを各230円で提供している。

 ビジネスモデルとしては、SEEのAPIを提供することも考えている。「ECサイトやウェブサービス事業者、マーケティングコンサルタント、企業のプロモーション部門と共同で、感情を軸としたさまざまな新しいサービスを生み出し、ユーザーに付加価値を提供していきたいです」。

 6月28日にはサンフランシスコで、日本のネットベンチャーを対象にしたイベント「第2回SF New Tech JapanNight」にも参加する。同イベントには19社がエントリーし、地元のベンチャーキャピタルらが最終的に6社を選出。イベントには、Facebookの友達と無料で通話できるiPhoneアプリ「Reengo」を提供する株式会社カヤックなども出場する。

 「我々のオフィスは海のすぐ近くなのですが、ここを選んだ理由のひとつが、海外を志向していたためなんです。シモン君も、人種や性別、国籍にとらわれないキャラクターとなっています。今回の米国デビューをきっかけに海外にも展開するとともに、Facebookやmixiボイス、中国の新浪微博(ウェイボ)での展開も検討していきたいですね。」


関連情報


(増田 覚)

2011/6/20 06:00