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角川とニコニコ動画が連携、将来は「ニコニコ発」の出版デビューも


ドワンゴ会長の川上量生氏(左)と角川グループホールディングス会長の角川歴彦氏(右)

 「ニコニコ静画(電子書籍)」の発表会が8日午後、東京・原宿の「ニコニコ本社」で行われ、その模様が「ニコニコ生放送」でも中継された。サービスの概要や新創刊の「角川ニコニコエース」に関する説明の後、角川グループホールディングス会長の角川歴彦氏とドワンゴ会長の川上量生氏によるトークセッションが行われ、角川会長が米Amazonとの電子書籍販売に関する交渉について述べる一幕もあった。

 説明会の冒頭には、「BOOK☆WALKER」を運営する株式会社角川コンテンツゲートの安本洋一取締役が挨拶に立ち、「昨年12月のニコニコ大会議で両社の提携を発表したが、周辺の環境も整い、ついにこのサービスを実現できることになった。コメントという新しい価値が付くことで、本の新しい価値が生まれると信じている」とコメント。「BOOK☆WALKERでは今後、角川グループ以外の作品も取り扱っていくことを予定しており、ニコニコ静画(電子書籍)にも新しいコンテンツをどんどん提供していきたい」と語った。

電子書籍にユーザーがコメントができる PC(Flash)とiPhone/iPadでサービスを開始

 株式会社ドワンゴ ニコニコ事業本部企画開発部の伴龍一郎氏は、「ニコニコでもっと気軽に本と出会う」というサービスコンセプトを紹介し、無料提供されるコンテンツを読むだけでなく、BOOK☆WALKERで販売されている電子書籍もアカウントの連携によりニコニコ静画(電子書籍)で読むことができる点を説明。「出版社発のコンテンツを読むという一方向の展開だけでなく、将来的にはニコニコ静画のユーザー投稿作品から出版デビューというような双方向の展開も目指していきたい」と語った。

 現在、「BOOK☆WALKER」ではPC向けのビューワーについては今後提供予定となっているが、ニコニコ静画(電子書籍)とアカウント連携を行うことで、BOOK☆WALKERで購入した書籍をPCでも閲覧できるようになる。ただし、「編集部や著者によっては、どのようなサービスかを見極めたいという意向もある」という理由で、現時点ではすべての作品がニコニコ静画(電子書籍)との連携には対応しておらず、今後対応作品を増やしていきたいとした。

BOOK☆WALKERで購入した書籍をニコニコ静画で閲覧できる 将来的には「ニコニコ発」のデビューといった展開も目指す

 ニコニコ静画(電子書籍)で無料配信されるウェブコミック誌「角川ニコニコエース」を担当する角川書店電子書籍編集部の多田年礼編集長は、新雑誌では「そらのおとしもの」「デッドマン・ワンダーランド」「ケロロ軍曹」「TIGER&BUNNY」といったアニメ化作品を中心に、角川書店各マンガ誌のおすすめ作品を掲載していくと説明。また、「次代の作家をみなさんと育てていきたい」として、ユーザー投票による新人作品の勝ち抜きコンテスト「ニコニコAコミック総選挙」を開催することを発表。このほか、イラストコンテストキャラクター人気投票や、ニコニコ生放送なども実施していきたいとした。

ウェブコミック誌「角川ニコニコエース」を無料配信 マンガ「テルマエ・ロマエI」など期間限定の無料配信作品も用意
「角川ニコニコエース」掲載予定ラインナップ 新人作品のコンテストなどイベントも実施していく

角川・ドワンゴ両会長が対談、角川氏「Amazonとは1年ほど交渉している」

 説明会の後半には、メディアジャーナリストの津田大介氏の進行により、角川グループ会長の角川歴彦氏とドワンゴ会長の川上量生氏によるトークセッションが行われた。

 川上氏は、角川グループとの提携にあたっては、「コンテンツの利用方法はユーザーが選べるようにならなければダメだと思っている。提供側が決めるのはよくない。どこで買ったものでも、ユーザーが持っているものであればニコニコで楽しめるようにしてくださいとお願いした」と説明。電子書籍には他にも様々なプラットフォームがあるが、「自分たちは販売プラットフォームを提供するつもりはなく、楽しむためのプラットフォームを提供したい」と語った。

 角川氏は、ニコニコ静画(電子書籍)で配信する自身の著書「グーグル、アップルに負けない著作権法 PREVIEW EDITION」について、「21世紀に入りネット環境も変わる中で、19世紀型の著作権法をどう変えたらいいのかということで、法体系だけでなく著作権法について書きたいと思った」として、書籍で行った川上氏との対談も「とてもエキサイティングだった。著作権法に興味のある人は面白いと思う」とアピール。自身でも、ニコニコ静画(電子書籍)のコメント機能を使って、注釈の形で本にコメントを入れたことを明かし、様々な使い方ができるプラットフォームだと期待を述べた。

津田大介氏の司会により、角川氏・川上氏のトークセッションが行われた 角川氏が自身で入れた書籍へのコメント

 トークセッションの前に2人の対談を読んだという津田氏も「とても面白い対談だった」として、今後の著作権法のあり方について2人に質問。対談中では「コンテンツの寿命はどんどん短くなっているが、コンテンツの改変を認めることで寿命は延びる」と語っていたが、具体的にはどういうことかという問いに対して、川上氏は「コンテンツ自体は1年前のものでも、それを引用したコンテンツは新しい情報になる。初音ミクなどの盛り上がりがずっと続いているのも、二次創作の連鎖が続いているから」と説明した。

 角川氏もこれに同意し、「コンテンツを改変してはいけない、ということになったのはここ100年ぐらいの話。それまでは、物語が語り継がれる中で内容が少しずつ変わっていったように、みんなで話を作っていった。それは決して作家のクリエイティブ性や作家へのリスペクトを損なうものではないと思う」と語った。

 質疑応答では、米Amazonが日本での電子書籍販売に向けて出版社との交渉を行なっていることについて、角川氏が「Amazonも商売としてやっていることであり、決して一部の報道で言われているような、出版社がまったく呑めない条件を突きつけているといったことはないと思う」と回答。角川グループでも「1年ほどずっと交渉しており、条件は11項目ぐらいまで詰まってきている」とAmazonとの交渉を認め、「Amazonの取り分が55%だという話も、電子化まですべてをAmazonに依頼した場合の数字だと把握している。本来は電子化までやるのが出版社の役目だと思う」と語った。

 川上氏は、「iモードのようなビジネスモデルは世界でも展開されたが、キャリアの取り分はドコモは10%程度だったのに対して、他の国では50%や70%といった契約もあったという。力関係から言えばそうなるのだろうが、結果としてコンテンツ市場が発展したのは日本だけだった」として、「夏野さんは少し後悔しているようだったが、あまり取り過ぎない方がいいのではないか」と持論を述べた。

 サービスについて川上氏は、「まだ始まりにすぎないが、スタートとしてはインパクトのあるものを用意できたと思う」とコメント。角川氏は、「電子書籍はどれだけ(読者に)リーチできるかが問題だと思う」として、ニコニコ動画のような多くのユーザーを抱えるサービスとの提携に期待したいと語った。


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(三柳 英樹)

2011/11/8 20:37