米研究者「結婚紹介サイトの出会いアルゴリズムに科学的な証拠なし」


 インターネットでパートナー探しを行うための結婚相手紹介サイトで使用されているマッチングアルゴリズムに科学的根拠がないとする研究論文が米国で発表された。これらサイトのマッチングアルゴリズムでは、膨大な数の候補者から最適のパートナーを見つけることができると一般には喧伝されている。

 この研究は米国ノースウエスタン大学社会心理学准教授Eli Finkel氏を主著者とし、来月号の論文誌「Psychological Science in the Public Interest」に掲載予定となっている。同氏を含む4人の研究者は心理学の観点から恋愛、パートナーシップを築く要素について研究を行ってきている。

 この業界の現状についてFinkel氏が様々な証拠をシステマチックに精査した結果、「現在までに、ネットのマッチングアルゴリズムが効果的であるとする実際的な証拠はない。もし出会いサイトが自らのマッチングアルゴリズムに科学的に根拠があると主張したいのであれば、彼らは科学の標準に準拠しなければならないにもかかわらず、皆一様にそうすることに失敗している。実際にはこの論文で結論づけているように、彼らのアルゴリズムは原理的にうまく動作するとは考えにくいと結論づけている。それは、マッチングを行うためにこれらのサイトが使用している手順の限界によるものだ」と指摘している。

 Finkel氏は、「出会いサイトでは、サイトで簡単に評価できる情報のみを入力し、実際に人間関係科学で長期の人間関係を築くために不可欠だと考えられている情報を無視しているため、こうしたアルゴリズムはうまくいかない」と考えている。

 「現在の人間関係科学の研究結果によれば、2人が長期的な関係を築けるかどうかを予測するための最も強力な因子は、カップルの会話のスタイルや、ストレスにうまく対処して乗り越えていくための方法等が挙げられるとしている。しかし、こうした要素はマッチングアルゴリズムのデータでは考慮されていない。」

 ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校心理学者Arthur Aron氏も懸念を示している。結婚紹介サイトは人々の人生に重大な影響を与えるからだ。Aron氏はFinkel氏の論文に前文を寄せ、各結婚紹介サイトの科学的信頼性をランク付けするためのパネルを作る必要があると提案。同時に結婚紹介サイト業界の努力不足を指摘している。

 とはいえ、同論文では結婚紹介サイトが“全く無意味なわけではないかもしれない”とする要素も挙げている。ひとつは、「独身者がたくさんの潜在的なパートナーと実際に顔を合わせることができる可能性の結果として、恋愛関係を始めることができるかもしれない」という。また、こうしたサイトで「チャットやメッセージによって良い第一印象を受け、その後に実際に顔を合わせることによって関係を深めることができるかもしれない」というメリットも挙げている。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2012/2/13 08:44