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「フレッツ 光」でのIPv6インターネット普及に向け“ネイティブ枠”拡大など


 東日本電信電話株式会社(NTT東日本)と西日本電信電 話株式会社(NTT西日本)は、「フレッツ 光」ユーザー向けのIPv6インターネット接続サービスの普及に向け、VNE(Virtual Netrwork Enabler)事業者の新規参入枠拡大などを含む施策を明らかにした。VNE事業者とは、NTT東西とISPを仲介するかたちで、フレッツ 光で使えるネイティブ方式のIPv6接続サービスをローミング提供する事業者のことだ。このほか、ユーザーにおける申し込み方法の簡素化や初期費用の低廉化なども進める。

 5月17日に行われた総務省の「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」の第18回会合で、NTT東日本の井上福造氏がNTT東西の取り組みとして報告した。

5月17日に開催された「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」第18回会合の様子

 井上氏は、IPv6インターネットの普及・促進には、ユーザー宅に設置するONUなどの回線終端装置(ホームゲートウェイ)、NTT東西のフレッツ中継網、フレッツ 光対応ISPというすべてでIPv6に対応することが必要だと説明。NTT東西としては、これら各階層でIPv4/IPv6のデュアル環境を提供していくとした。

 具体的には、1)IPv6 IPoEサービスの申し込み方法の簡素化、2)IPv6 PPPoEサービスの初期費用の低廉化、3)「Bフレッツ」「フレッツ・光プレミアム」のマイグレーション――の3項目を課題として挙げている。

IPv6 IPoE(ネイティブ方式)とIPv6 PPPoE(トンネル方式)

 NTT東西では現在、「フレッツ 光ネクスト」のユーザーを対象に、ISP各社の提供するIPv6インターネット接続サービスを利用できるようにしており、その方式としてIPv6 IPoE(ネイティブ方式)とIPv6 PPPoE(トンネル方式)の2種類がある。

IPv6 PPPoEとIPv6 IPoE(NTT東日本の2011年5月26日付発表資料より)

 IPv6 IPoEは、ホームゲートウェイからフレッツ中継網(NGN)、ISP(VNE)を経由してIPv6インターネットに接続するまで、IPv6ネイティブで通信する方式。VNE事業者がIPv6アドレスをNTT東西に預けておき、これがNGNからユーザーに対して固定で割り当てられる仕組みだ。

 利用にはISPのIPv6接続サービスへの申し込みのほか、NTT東西の「フレッツ・v6オプション」への申し込みが必要となるが、特別な機器やユーザーによる設定は不要だ。フレッツ・v6オプションは、初期費用が2100円(NTT東日本では、ウェブサイトなどからの申し込みならば無料)、月額利用料が無料となっている。

 一方、IPv6 PPPoEは、ユーザー宅にIPv6トンネル対応アダプターを設置し、IPv6通信はアダプターとISPの間をトンネリングで抜ける方式。IPv6アドレスは、PPPoE接続の都度、ISPから割り当てられる。この方式では、ISPから付与される接続用ID・パスワードをアダプターに設定する必要がある。利用には、ISPのIPv6接続サービスへの申し込みが必要だ。

 アダプターはユーザーが用意する必要があり、NTT東西では「MA-100」という製品を1万479円で販売している。また、IPv6 PPPoEサービスに対応するISPの1つであるOCNでは、アダプター機能を持つ無線LANルーター「DS-RA01」を9240円で販売している。

NTT東西が販売するIPv6トンネル対応アダプター「MA-100」 OCNが販売している、IPv6トンネル対応アダプター機能を持つ無線LANルーター「DS-RA01」

IPv6 IPoEでは申し込み簡素化、IPv6 PPPoEでは初期費用の低廉化と

 まず、1)IPv6 IPoEサービスの申し込み方法の簡素化については、NTT東西とISP別々になっている申し込み手続きを、従来のIPv4サービスと同じようにワンストップで完了する仕組みを6月以降に導入する予定だ。さらにフレッツ 光ネクストの新規申し込み回線では、フレッツ・v6オプションの初期費用を、NTT東日本は5月下旬申し込み分から、NTT西日本は6月上旬申し込み分から無料化する。

 こうした施策により、フレッツ 光ネクストのユーザーをIPv4/IPv6デュアル環境に持っていきたい考えだ。

 さらにIPv6 IPoEサービスについては、VNE事業者枠を拡大する方針が示された。VNE事業者としては現在、BBIX株式会社、日本ネットワークイネイブラー株式会社、インターネットマルチフィード株式会社の3社があり、それぞれがISP各社にIPv6 IPoE対応サービスをローミング提供している。これは、フレッツ 光ネクストでIPv6 IPoEサービスを開始するにあたり、NTT東西が当初、経路数の増加やサポート面での懸念から3社に限定したためだ。

 これに対して今回、NTT東日本の井上氏は、VNE事業者枠の拡大のめどが立ったと報告。具体的に新規参入が可能な数やスケジュール、条件は近日中に発表を目指すが、規模感としては「数十」だという。なお、これは技術的に可能な論理的な数であり、また、手続きなどを考えるとVNE新規事業者が参入するまでは最短でも1年ほどかかるのではないかとの見通しを示した。

 次に、2)IPv6 PPPoEサービスの初期費用の低廉化については、IPv6トンネル対応アダプターのISPによる販売計画を鑑み、ビジネスベースでさらなる低廉化を検討するとした。なお、アダプターは現在1万円を切る販売価格となっているが、無線LANカードとのセットで割賦による提供も実施しており、ボーナス併用12回払いの場合で月額730円だという。

 最後の3)は、IPv6インターネット接続サービスが用意されていない「Bフレッツ」「フレッツ・光プレミアム」の中継網である地域IP網をNGNにマイグレーションするというものだ。すでに2012年度末に中継網部分は完了、追って一部サーバーについて2013年度末めどで完了するとしており、現在はマイグレーション後のIPv6サービス接続サービスの提供方法について検討中だとした。

 井上氏によると、フレッツ 光の全ユーザーのうち6割程度が、これら旧フレッツ 光系の契約者だという。また、研究会が昨年12月にとりまとめた第3次報告書では、BフレッツのユーザーがIPv6インターネット接続サービスを利用可能な状態になれば、日本のFTTHユーザーの少なくとも80%以上がIPv6対応可能になると指摘している。

ISP側のユーザー負担軽減策も必要、IPv6対応は進むも利用は少数

 フレッツ 光を提供するNTT東西における普及策と同時に、フレッツ 光ユーザー向けにIPv6インターネット接続サービスを提供するISP側での施策も必要になる。

 社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)によると、フレッツ 光ネクストで昨年5月にIPv6 PPPoEサービス、7月にIPv6 IPoEサービスが開始され、ISP側の対応も進んだという。例えばNTT東日本(東京エリア)でIPv6 PPPoEに180社、IPv6 IPoEに28社、NTT西日本(大阪エリア)でIPv6 PPPoEに59社、IPv6 IPoEに29社のISPが対応している(4月現在、いずれも予定を含む)。

 しかし、ユーザーはまだ多くないという。JAIPAでは近くNTT東西との協議を再開し、「ユーザー負担の軽減を実現するための方策をはじめとした協議を推進していきたい」と説明している。

フレッツ公式サイトでIPv6接続サービスを提供しているISPのリストが公開されている。これは、NTT東日本(東京エリア)におけるIPv6 IPoE対応ISPの例

 なお、ISPが提供しているIPv6 PPPoE/IPv6 IPoE対応インターネット接続サービスの料金体系は各社まちまちで、IPv4サービスの有料オプションとして対応しているISPもあれば、追加料金不要で提供しているISPもある。

 研究会の第3次報告書では、現状、ユーザーがIPv6インターネット接続サービスを利用するメリットが少ない中で利用を拡大させるためには、「IPv6インターネット接続サービス利用時の料金水準は、IPv4のみによる利用時と比べて同等程度以下であることが望ましい」としていた。

 これを受けて17日の第18回会合では、研究会のメンバーからJAIPAに対し、この方針が現在、各ISPで反映されているかたずねる質問も挙がった。これに対してJAIPAの木村孝氏は「現状はまだ変わっていない」とし、詳しい状況は次回以降の会合で各ISPから報告があると回答するにとどまった。

 IPv6を普及させる必要性は当然ながらISPも認識しているものの、ユーザーメリットを示せない現在の段階で普及・拡大を求められるということで、個々のISPにとっては厳しい面もありそうだ。

IPv6デフォルト提供の「auひかり」、IPv6では世界有数のISPに

 フレッツ 光以外に目を向ければ、すでに広く提供されつつあるIPv6インターネット接続サービスもある。KDDI株式会社は「auひかり」の加入者に対して、申し込みや追加費用、特別な設定変更や機器が不要なかたちで、IPv6アドレスの割り当てを順次開始している。

 同じく研究会の第18回会合において、日本におけるIPv6の対応状況について観測データを報告したグーグル株式会社によると、日本ではユーザーの1.6%がIPv6インターネット接続環境を持っているが、成長は緩やかであり、そのほとんどがKDDIのユーザーだという。KDDIは世界的に見ても最大規模のIPv6サービスを展開しているISPなのだそうだ。

 KDDIは実際のところ、6月6日に世界規模で実施されるイベント「World IPv6 Launch」にISPとして参加を表明した唯一の日本企業だ。これは、ISPとして参加するための条件が、1%のユーザーに対してすでにIPv6を提供済みで、かつ、今後、オプションではなくデフォルトでIPv6を提供することと規定されているためだ。1%に提供済みのISPであれば他にもある模様だが、今後デフォルトで提供していくこととなると、フレッツ 光の問題もあり、ISPにとってハードルは相当高いらしい。

「auひかり」のIPv4/IPv6デュアルスタック方式イメージ図(KDDIの2012年1月24日付発表資料より)

エンドユーザーに求められていないが、IPv6を普及させる必要性

 フレッツ 光では、インターネットには接続できないフレッツ網内用のIPv6環境が以前より運用されており、これに起因して、インターネットのIPv6対応サイトへのアクセスが遅延する「IPv6-Ipv4フォールバック問題」が発生することが知られている。そのため、フレッツ光のユーザーに対してはIPv6を無効化する回避策をとったり、あるいは、そもそも日本向けの主要サイトでは、サイト側がIPv6への対応を控えるといった事態になっている模様だ。

 しかし、長期的にはインターネットはIPv6に徐々に移行していくとされており、6月6日のWorld IPv6 Launchはまさに「IPv6を恒久的に有効化する」始まりとなる日。GoogleやFacebookをはじめとする世界の大手サイトが今後、IPv4に加えて標準でIPv6に対応することを表明している。このように世界でIPv6を普及させていこうと本格的に動き出した時期に、IPv6を無効化せざるを得ない状況にあることが問題であることは確かだ。この状況が長引けば、日本のインターネットが世界とは別の方向に進むことを意味する。

「World IPv6 Launch」公式サイト

 本誌で先日お伝えしたように、こうした状況に対してGoogleは「日本では壊れたIPv6が広まっている」(グーグル株式会社の及川卓也氏)ときつい表現で指摘。かといって、すでにサービスが運用されているフレッツ網内用IPv6を今から取り除くのも現実的ではないとし、これとは別に「正常動作するIPv6」(同)を普及させることが唯一の解決策だと訴えている(詳細は、本誌2012年5月18日付および2012年5月21日付の関連記事を参照)。

 IPv6-Ipv4フォールバック問題の根本的な解決策が「正常動作するIPv6」を提供することであるとの認識は、何もGoogleだけでなく、NTT東西やJAIPAでも一致しているところだ。2011年2月にIPv4アドレスの中央在庫がついに枯渇したことでIPv6の普及が急がれるとはいえ、まだしばらくはIPv4も並行して多く使われているとみられる。IPv6ならではのサービス・機能によるメリットをエンドユーザーにまだ示せない現在の段階で、フレッツ 光におけるIPv6インターネット接続サービスの普及が求められる背景にはこうした事情がある。


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(永沢 茂)

2012/5/23 13:00