電子書籍端末「Lideo」はデバイスでなく、本――書店で販売、「すぐ使える」


 電子書籍ストアサービス「BookLive!」を運営する株式会社BookLiveが7日、電子書籍端末「BookLive!Reader Lideo(リディオ)」の発表会を開催し、その開発/サービスコンセプトを説明した。

 Lideoは、BookLive!専用の端末として12月10日に8480円で販売を開始する製品(詳細は11月7日付関連記事を参照)。6インチのE-Ink電子ペーパーを採用するとともに、UQ WiMAXの通信機能を内蔵。ユーザーは通信料不要でBookLive!の電子書籍ストアに接続し、コンテンツの購入などが行える。「いつでも、どこでも、だれにでも。読みたい本を読みやすく」というBookLive!のコンセプトを実現するために開発したという。

(左から)凸版印刷株式会社専務取締役の大湊満氏、株式会社三省堂書店代表取締役社長の亀井忠雄氏、株式会社BookLive代表取締役社長の淡野正氏、UQコミュニケーションズ株式会社取締役執行役員副社長の片岡浩一氏、日本電気株式会社(NEC)執行役員常務の國尾武光氏

「日本で生まれた、日本の読書好きのための電子書籍」

 BookLive代表取締役社長の淡野正氏はまず、BookLive!が目指すのは「日本で生まれた、日本の読書好きのための電子書籍」と説明した上で、それを追求するためにさまざまな取り組みを行ってきたことを紹介した。

 まず、BookLive!で提供するコンテンツのラインナップについて、「普通の感覚で書籍で流通しているもの」としてカウントすると、11月現在で10万7122冊に上るという。同様のカウント方法で他の電子ストア4社のラインナップをBookLiveが独自計測した数字も示し、最も多いところでも6万9200冊であることから、BookLive!が冊数ベースで他社を大きく引き離して日本最大クラスだとした。

 また、「日本では電子書籍元年と毎年言われているが、実は10年ぐらい前から電子書籍は始まっており、以来、いろいろなフォーマットが存在している」と指摘。BookLive!では基本的に、国内で流通しているあらゆるフォーマットに対応するスタンスをとっており、それら主要なフォーマットを同一インターフェイスで閲覧できるようにビューアー開発も自ら行い、ユーザビリティを追求しているという。

 あわせて、Android、iOS、Windows Phone、Windows PCというマルチOSに対応するとともに、購入した書籍をクラウド書庫に保管して複数端末で同期し、さまざまなシーンで利用できる環境を提供しているとアピールした。

「箱から出して、すぐ使える」

 このようにBookLive!では、電子書籍を「いつでも、どこでも」ということに取り組んできたわけだが、「次に『だれにでも』というところを目指していこう」ということで投入するのが、今回の電子書籍端末Lideoだとした。

 BookLiveが電子書籍を利用する端末についてリサーチした結果からは、スマートフォンを利用するのは若年層であり、読書好きというよりはひまつぶしで本を読む人が多いセグメントだとした。少し年齢が上がると、本に興味のある人がタブレットを利用するという。そして、本当の意味で読書好きの人、あるいは年齢層が上の人に電子書籍を利用してもらうことを追求するならば、電子書籍専用端末が必要になると淡野氏は説明する。「つまり、電子書籍端末を用意するということは、読書好きの方に対応できる製品であるということと、ご年配の方にも利用できる、だれもが利用できるものでなければ電子書籍端末としての意味がない。差別化できない」。

 Lideoは、そうした背景のもと、「BookLiveがサービスとして必要であるから開発した」としている。

 電子書籍をすぐに読めるようにすることにもこだわりを持っているという。紙の本であれば、購入してページを開けばすぐに読むことができるが、従来の電子書籍端末では、電子書籍を購入して読めるようになるまでに、いろいろなセットアップが必要となるため、「読書好きの方やご年配の方に利用してもらうのはかなり無理がある」。

 Lideoは、買ってすぐに使えるように、PCと接続してのセットアップや会員登録、通信設定といった作業が不要で「箱から出して、すぐ使える」。電源投入後の初期設定で必要なのは、誕生日・性別の入力とパスワードの設定だけ。UQ WiMAXの通信エリアであればBookLive!の電子書籍ストアにつながり、さらにクレジットカード情報を登録することで有料コンテンツを購入できるようになる。

 だれにでも使いやすいインターフェイスという観点では、よく使う「本棚」「書店」や「文字」のサイズ変更などは、どの画面を表示している状態でもボタン1つでダイレクトにアクセスできるようにあえてハードウェアボタンとして付けた。

 Lideoを製造・供給するのは、日本電気株式会社(NEC)だ。「日本人のための使いやすい電子書籍を作ろうというコンセプト」で共同開発したという。同社執行役員常務の國尾武光氏は、「スペックひとつひとつというよりも、だれもが簡単に電子書籍を楽しめる、読書を楽しめるということを中心に考えた」と説明する。

「電子デバイスとして売るのではなく、本として売りたい」

 淡野氏は、読書好きなどをターゲットとしていることの表れとして、販売チャネルにについてのこだわりも示す。「Lideoを電子デバイスとして売るのではなく、本として売りたいと思っているため、家電量販店では扱わない。書店で売っていただく」。

 書店での販売は、まずはパートナー企業である株式会社三省堂書店を基幹に展開する。三省堂書店ではすでに4月よりBookLiveと提携し、BookLive!での電子書籍購入時に「クラブ三省堂」ポイントを付与したり、店頭でのBookLive!入会サービスを実施してきた。さらに今回、Lideoの発売に合わせて新たな連携サービスを開始することにした。

 三省堂書店代表取締役社長の亀井忠雄氏は、その柱となるのは、1)新たな本と読者との接点を果たす、2)多彩な決済手段を提供する、3)本好きのための手厚いサポートを提供する――という3点だと説明する。

 新たな本と読者の接点としてはまず、店頭に設置している書籍検索端末に電子書籍の情報を追加。来店者が紙の書籍を検索した際に、電子書籍も同時に検索されるようにする。また、店頭では「電子書籍を棚として表現し、電子コンテンツをリアルに表現していく」という。これは、「電子書籍版あります」「この棚の書籍は電子化されています」といったかたちで紹介するもので、これらのサービスにより「来店者に電子書籍への気付きを提供する」としている。100万人の会員を有するというクラブ三省堂の会員向けに提供している「クラブ三省堂アプリ」において、電子書籍の検索機能も予定している。

 決済手段については、店頭での電子書籍の決済サービスをすでに一部店舗(神保町本店、有楽町店)で開始しているが、Lideoの発売にあわせて順次拡大していくという。「三省堂書店のレジにおいて、紙の書籍を買うように電子書籍を購入していただくことが可能」。現金のほか、店頭で対応している各種決済手段を選択できる。

 3つ目のサポート面に関して亀井氏は、「電子書籍は元来、ネットサービスを基本としているため、まだまだ本来の読書好きのお客様のために十分なサービス提供しているとは言えない」と指摘。そこでLideoの発売を機に、新たな読書スタイルをいち早く三省堂書店の来店者に体験してもらうために、Lideoの販売・初期設定、BookLive!のサービス紹介・入会案内、電子コンテンツの紹介・販売、アフターサービスまでを店頭でトータルにサポートしていく。

 「私たちは本を読みたいお客様に書籍を提供する立場として、この新しい読書スタイルの創出を歓迎している。いつでも、どこでも、だれにでも、本が好きなすべてのお客様に豊かな読書体験をしていただきたい。そのためのお手伝いをできるよう社員教育も進めている。これからも全社を挙げて推進していく。」

 なお、サポート面に関連して、LideoのWiMAX通信回線を提供するUQコミュニケーションズ株式会社は、三省堂書店の全国30店舗における電波環境の整備を進めるとしている。これにより、店頭におけるLideoの端末設定サポートや電子書籍ダウンロード、端末デモなどを快適に行えるようにする。

「意識するのは、Amazonではなく読者」

 淡野氏は、「ソフト、通信、ハード、コンテンツ、販売、サービスを高いレベルでインテグレーションすることで初めて、『いつでも、どこでも、だれにでも』というコンセプトを実現できる」とし、NEC、UQコミュニケーションズ、三省堂書店、凸版印刷株式会社というパートナーと協業してLideoのサービスを作り上げたと説明。最後に、「価格も重要だが、やはり読書の快適性を追求していきたい。いろいろな競合があるが、そうしていくことで最終的に読者に支持されると信じている。パートナーとそういうサービスを作っていきたい」と語った。

 また、発表会の質疑応答で淡野氏は、「Kindle」で日本の電子書籍/端末市場への本格上陸をしたAmazonについて、「Amazonを意識していないというとうそになる。当然、意識はしている」としながらも、「我々はAmazonを意識するのではなくて、やはり意識するのは読者。読者がどういうものを求めているのか、どういうサービスを利用したいと思っているのかが重要」と回答。Amazonはグローバルでサービスを展開しているため、日本の読者に合わせてすべてを作り込むことは難しいのではないかと指摘し、「我々は読者の支持することを粛々と着実にやっていくことで、最終的に支持を受けられる」とした。

株式会社BookLive代表取締役社長の淡野正氏株式会社三省堂書店代表取締役社長の亀井忠雄氏

福井県の新聞と書店が「地方型電子書籍普及モデル」推進

 書店店頭でのLideoの販売は、三省堂書店だけでなく、福井県・石川県の書店グループでも行われる。これは、BookLiveと株式会社福井新聞社が協力して推進することで合意した「地方型電子書籍普及モデル」の一環だ。

 福井新聞社は、同社サイトでLideoを通信販売するほか、Lideo向けの月額制ニュース配信サービス「福井新聞SIESTA」(月額400円、2013年1月末まで無料)を開始する。

 あわせて福井市に本社を構える書店グループの株式会社勝木書店と提携。同社およびグループ会社である株式会社北国書林、株式会社きくざわ書店の店舗を含む、福井県内18店舗、石川県内11店舗の書店店頭でもLideoを販売する。福井新聞社および勝木書店グループで販売するLideoには、福井新聞社が発刊した電子書籍3冊を無料ダウンロードできるデジタル図書が同梱される。

 福井新聞社では、「BookLiveとともに福井県の県紙、福井県を代表する書店チェーンによる地方型電子書籍普及モデルを推進することで、地方の活字文化のさらなる発展に寄与していく」としている。


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(永沢 茂)

2012/11/8 12:00