業界一丸で健全化を、GREEやDeNAなどが「ソーシャルゲーム協会」発足
株式会社グリーや株式会社ディー・エヌ・エーなど6社は8日、「一般社団法人ソーシャルゲーム協会(Japan Social Game Association:JASGA)」を発足させた。ソーシャルゲームに対する自主規制やカスタマーサポートの品質向上などを通じて、ユーザーが安心してソーシャルゲームを楽しめる環境を作ることが狙い。
JASGAは2社のほかに、NHN Japan株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社ドワンゴ、株式会社ミクシィも含めたソーシャルゲームのプラットフォーム運営6社、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、日本オンラインゲーム協会(JOGA)、ソーシャルゲーム提供会社(SAP)関連の約50社の賛同を経て発足した。
共同会長・代表理事には、グリー社長の田中良和氏とディー・エヌ・エー社長の守安功氏が就任。理事にはミクシィ社長の笠原健治氏、ドワンゴ取締役の夏野剛氏、サイバーエージェント社長の藤田晋氏、NHN Japan社長の森川亮氏、JOGA会長の権田修平氏、CESA会長の鵜之澤伸氏らが名を連ねる。事務局長は慶應義塾大学教授の中村伊知哉氏が務める。
左から事務局長の中村伊知哉氏、グリーの田中良和氏、JASGA諮問委員会メンバーで一橋大学名誉教授の堀部政男氏 |
●「自主規制」「啓発」「カスタマーサポート向上」で業界健全化を
ソーシャルゲームをめぐっては消費者庁が5月18日、いわゆる「コンプガチャ(コンプリートガチャ)」と呼ばれるアイテム販売の手法について、景品表示法に基づく告示で禁止されている「カード合わせ」に該当するという見解を表明。これを受けプラットフォーム運営6社は5月25日、コンプガチャの提供禁止を盛り込んだガイドラインを策定し、同月末には提供を終了した。
コンプガチャの問題以前にも、ゲーム上のキャラクターやアイテム、カードなどを現実の通過で売買する「リアルマネートレード(RMT)」の対策や、未成年ユーザーへの利用限度額の設定の必要性などが指摘されており、6社はこれらの問題に対応するためのガイドラインを自主的に策定してきた。
JASGAの発足にあたっては、プラットフォーム運営6社に加えて、有識者や学識経験者が参加し、7月から「準備委員会」を開催。その議論を受けてJASGAは、「ソーシャルゲームに対する自主規制」「青少年等に対する啓発活動」「カスタマーサポート品質の向上」の3点に中心に活動していく。運営費は年間で約1億円、当初の専任スタッフは2人という。
自主規制の概要 |
ソーシャルゲームに対する自主規制の内容は今後検討していくが、まずは6社がこれまでに策定したガイドラインに沿って運用する。RMTを行う事業者や、アイテムが売買されるオークションの運営事業者に対しては、「命令する立場ではなく(ガイドラインに従うよう)協力を要請していく」(中村伊知哉氏)。
自主規制ではさらに、プラットフォーム事業者の書面審査やソーシャルゲームのパトロールも実施。ソーシャルゲームは膨大なタイトルがリリースされているが、JASGAの自主規制委員会委員長を務めるグリー副社長の山岸広太郎氏は「すべての事前チェックは難しい」と認めた上で、ユーザーからの情報提供に対応することで実効性を担保したいと話す。
●呉越同舟で足並みが乱れる?
8日に都内で行われた記者会見では、ソーシャルゲームの自主規制は、同産業で収益を追求することと矛盾するのではないかという指摘があった。この点についてグリーの田中氏は「健全にすることが業界拡大につながる」と反論。業界の健全化については中村氏も「かつてさまざまなエンターテインメント業界が歩んできた道」と語る。
さらに田中氏は、これまでにプラットフォーム運営6社が独自のガイドラインを策定してきたことを紹介。JASGAについては「さらに大きな枠組みを作って業界一丸となって継続的に取り組んでいく」と抱負を語り、「今日は私が6社の代表理事として話しているが、6社が同じ気持ちで進めている」とアピールした。
なお、会見では参加を予定していたディー・エヌ・エーの守安功氏が「諸事情により」(JASGA事務局の説明)急きょ欠席。会場からは「ライバル関係で争う状態の中で守安社長が欠席しているが、JASGAの足並みは揃うのか心配。両社が争った時に健全な方向に持っていけるのか?」という指摘もあった。
この意見について中村氏は「田中社長は言いにくいでしょうから」と前置きした上で、「そこ(足並みを揃えること)は事務局が汗をかかなければならない。ただ、(会見の)数十分前に理事会で議論をしたが、ビジネスでは競合でも具体的な連携策を取ろうとなった」と述べ、JASGAが一枚岩で業界健全化に取り組む姿勢をアピールした。
JASGAは、12月までにガイドラインやプラットフォーム審査基準を策定するとともに、2013年1〜2月にはプラットフォーム審査業務やソーシャルゲームのパトロール、啓発活動リーフレット作成などを開始。今後はAppleやGoogleなど海外のプラットフォーム事業者との連携も視野に入れているという。
関連情報
(増田 覚)
2012/11/8 20:10
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