著作権侵害を防ぐには裁判しかない、東野圭吾氏らが自炊代行業者を再び提訴


 東野圭吾氏や弘兼憲史氏ら作家・漫画家7人は27日、裁断機やスキャナーを用いて書籍を電子化する、いわゆる“自炊”の代行業者7社を相手取り、自炊代行の差し止めと損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に提起した。

 訴えられたのは、「ブックコピー」(相模原市)、「Scan Agent」(大田区)、「00paper.com」(港区)、「PDFBOOKS」(新宿区)、「ヒルズスキャン 24」(港区)、「電子書籍化ドットコム」(江戸川区)、「スキャポン」(葛飾区)の7事業者とその代表者。原告は東野氏、弘兼氏のほか、浅田次郎氏、大沢在昌氏、永井豪氏、林真理子氏、武論尊氏。

 原告側は、不特定多数の利用者から注文を受け、多くの書籍をスキャンして電子ファイルを作成し、納品する行為について、書籍の著作権者の許諾なく行うことは、著作権法21条の複製権侵害に該当すると指摘。2011年9月には、スキャン事業者98社に対して、自らの作品をスキャンして電子化することは許諾しない旨を書面で通知するとともに、サービスの存続意志を質問書で確認していた。

 その結果、被告7社のうち4社は回答せず、1社は「今後も引き続き、原告らの作品について注文があった場合はスキャン及び電子ファイル化を行う」と回答、2社は「原告らの作品についてスキャンしない」と回答していた。実際には被告7社はその後も営業を継続し、原告作品の書籍も受注スキャンしていたことから、原告は著作権法112条1項に基づいて自炊代行の差し止めを請求し、損賠賠償を求めることとなった。

極めて悪質な業者も

 なお、2011年12月には今回と同じ原告7人が、質問状に対して「今後も引き続き、原告らの作品について注文があった場合は、スキャン及び電子ファイル化を行う」と回答した有限会社愛宕およびスキャン×BANK株式会社に対して、自炊代行の差し止めを求める訴えを提起。この裁判は2012年4月、被告会社の解散と請求の認諾により終結した。

 今回訴えた7社について原告側は、自炊代行の違法性を十分承知できる立場にもかかわらず、依然として広く顧客を募り、スキャン事業を継続していると指摘。うち2社は「原告らの作品についてスキャンしない」と回答しながら、実際には原告作品を受注スキャンするなど「極めて悪質」だとしている。

 「被告らによる著作権侵害のおそれを解消するには、裁判による判決を得る以外の方法がないとの結論に達した。」

 原告側は、スキャン事業者により大量に作成される電子ファイルは通常、複製防止処置等(DRM)が施されておらず、誰もが自由に複製できると指摘。そのため、電子ファイルは友人らに転々と複製され拡散されたり、違法なインターネット上へのアップロードやファイル交換ソフトなどにより一気に拡散する危険性があると見ている。

 最近では「リーチサイト」といわれる追跡が困難な海賊版サイトが蔓延するなか、こうしたファイルが、本来の私的複製では到底困難な規模と分量で不特定多数のユーザーに提供されているとも指摘。また、インターネット上では、裁断本の買い取り・販売が後を絶たず、Yahoo!オークションだけでも約2000件が出品されているという。


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(増田 覚)

2012/11/28 13:52