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医薬品ネット販売禁止の厚生労働省令は違法、ケンコーコムら2社が勝訴

最高裁が国の上告を棄却、2社の販売権を認めた二審判決を支持

ケンコーコムの後藤玄利社長

 一般用医薬品のネット販売を禁止した厚生労働省令は違法だとして、ケンコーコム株式会社と有限会社ウェルネットの2社が販売権などの確認を求めていた裁判で、最高裁判所は11日、2社の販売権を認めた二審・東京高等裁判所の判決を支持し、国の上告を棄却した。

 争点となった改正省令(平成21年厚生労働省令第10号)では、一般用医薬品のうちリスクの高い「第1類」「第2類」の医薬品について対面販売を原則とし、インターネットなどの通信販売を禁止する規定を定めた。これに対してネット販売業者のケンコーコムとウェルネットが、改正省令は薬事法から省令への委任範囲を超えた違法なものだとして、2社に第1類・第2類医薬品の通信販売を行える権利があることや、改正規定が無効であることなどの確認を求めていた。

 一審の東京地方裁判所は2010年3月、2社の訴えを退ける判決を言い渡したが、二審の東京高等裁判所は2012年4月、省令は違法なものだとして2社に通信販売の権利を認める逆転判決を言い渡していた。

 国は二審の判決を不服として上告していたが、最高裁は11日、二審判決を支持し、国の上告を棄却。これにより、2社が医薬品のネット販売を行う権利を有することが認められた。

 判決では、省令は職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らかだとした上で、規定が改正薬事法の趣旨に適合するためには、省令の制定を委任する授権の趣旨が規制の範囲や程度に応じて明確に読み取れることを要すると指摘。一方で、薬事法にはそうした記述は無く、第1類・第2類医薬品の通信販売を一律に禁止する省令までを委任しているとは言えず、違法で無効というべきであるとして、2社の主張を認めた二審判決を支持する判決を裁判官全員一致の意見として言い渡した。

「厚生労働省には明日にでも省令を改正してもらいたい」

 ケンコーコムの後藤玄利代表取締役社長は判決を受け、「本日、皆さんの心温まる支えのおかげで、ケンコーコムとウェルネットは薬の販売の再開を認められました。この感謝の気持ちをどう言葉に表したらいいのかわかりません。これからも安全で便利な販売を続け、健全な社会に貢献していきたいと思います」とするコメントを発表。判決後、ケンコーコムのサイトでは第1類・第2類医薬品の販売を再開した。

 後藤氏は、ケンコーコムで医薬品販売を始めてから10年間、副作用の報告は1件もなかったにもかかわらず販売が禁止され、省令に対しては155万人もの反対の署名があったが何も変わらず、「この4年間、精神的にも経済的にも大変苦しみました」とコメント。また、他の多くの先進国では認められている医薬品のネット販売が日本では駄目だと言われたことに対して、「新しいビジネスを、違法でもないのに突然国がやめさせてしまう。そんな日本では若い人たちが、どうやって夢をもって起業することができるのでしょうか。それも裁判を起こした理由の1つのです」と語った。

 判決を受け、ケンコーコムでは医薬品のネット販売を即日再開した。「今回の裁判は当事者訴訟なので、法理論的には一般の民事訴訟と同じように、効力は当事者のみに及ぶ」(訴訟代理人の関葉子弁護士)ため、判決は他の事業者に対しても医薬品のネット販売を直接的に認めたものではないが、判決中で省令は違法で無効なものだという判断を示しているため、他の事業者も訴訟を行えば同様の判決になることが予想される。

 後藤氏は、「事業者が正々堂々と医薬品のネット販売が行えるよう、厚生労働省には明日にでも省令を改正してもらいたい」とコメント。現在の薬事法の枠組みの中でも、省令の改正により医薬品の安全なネット販売は可能だとして、ケンコーコムが実施している医薬品購入時の事前アンケートや、大量購入防止策を行なっているという事例や、日本オンラインドラッグ協会が定めたガイドラインを紹介した。

(三柳 英樹)