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安心協、いじめや性行動などをテーマにネットが青少年に及ぼす悪影響を調査

 民間企業や学識経験者、各種団体などが参加する「安心ネットづくり促進協議会(以下、安心協)」は、協議会配下の調査検証作業部会の活動として、2009年度〜2010年度に行った「インターネット使用が青少年に及ぼす悪影響の問題」に関する実証研究の結果を報告書として取りまとめ、安心協サイトで公開した。

 青少年がインターネットを利用することにより、プラス面だけでなくマイナス面の影響もあるとされているが、調査研究分野においては、インターネットと青少年の社会性について実証的な調査研究を実施し、一定の定量性を持って分析を行った研究成果が非常に少ないことから、安心協は2009年度から3年間の予定で実証的な基礎データを収集し、研究を行った。

 今回の報告書は2010年度までの研究成果となっており、3年間のプロジェクトの中間報告となる。テーマは、しばしばインターネットの悪影響が懸念されながらも、実証研究が乏しかった、(1)いじめ・暴力、(2)性意識・行動、(3)自殺、(4)依存の4つを取り上げ、4班の安心協外部の研究者グループにそれぞれに関する研究実施を委託。調査検証作業部会は、この事業の全体的な企画や、研究進捗の確認などを行った。

 調査検証作業部会の主査は、 お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授の坂元章氏が務めている。

いじめはネット上よりリアルが大多数。高い情報モラルがネット攻撃を抑制か

 「いじめ・暴力」班は、そのため、彼らは、同一の小学生、中学生、高校生に対して、学校を通じて3回の質問紙調査を実施。3回とも回答した小学生は1523名、中学生は3557名、高校生は1979 名。得られたデータを分析した結果、仲間に対して攻撃した加害経験(過去1カ月)は、インターネットを使わない攻撃(28.5〜31.2%)よりも、インターネットを使った攻撃(1.2〜3.6%)は、はるかに少ないことがわかった。

 また調査結果から、高いICTスキルがネット攻撃を増幅する一方で、高い情報モラルがネット攻撃を抑制する傾向が検出された。このため、ネット攻撃を抑制するうえでは、インターネット使用そのものを制限することのほかに、情報モラル教育が成果を挙げることも効果を持ち得ると推論している。

 ただし、現在のところ、全体にケースが限られていることから、引き続きネット攻撃に影響する要因を特定し、対策に生かしていくことが望まれるとしている。

◇インターネット使用といじめ・暴力の関係性に関する研究(PDF)
http://good-net.jp/usr/imgbox/pdf/20121026100114.pdf

インターネット使用が性行動を活発化する可能性

 「性意識・行動」班は、インターネット使用が高校生の性意識や性行動にどのような影響を与えるかなどを検討するため、同一の高校生に対して、学校を通じて3回の質問紙調査を実施。3回とも回答した高校生は 734 名(男子 282 名、女子452 名)。

 得られたデータを分析した結果、インターネットをよく使う高校生のほうが、そうでない高校生に比べて、同年代のセックス経験を高く見積もるようになり、とくに女子においては、デート、ペッティング、コンドームなしのセックス経験が増えることなどが示され、インターネット使用が性行動の活発化につながる可能性が示唆されたという。また、インターネット使用の影響は、パソコンよりも、携帯電話における使用においてよく見られたとしている。

 しかし同時に、インターネット使用が性意識・行動に与える影響よりも、友人・先輩との性的情報交換が与える影響のほうがずっと大きいこともわかった。

◇インターネット利用と性意識・行動の関係性に関する研究(PDF)
http://good-net.jp/usr/imgbox/pdf/20121026100235.pdf

ネット利用で20代では自殺念慮が低減、30〜40代はむしろ悪化

 「自殺」班は、自殺関連サイトの使用が自殺念慮や精神的健康に与える影響を調査。同一の20〜40代のインターネット使用者に対して、4103名の自殺関連サイト使用者と、4000 名の自殺関連サイト非使用者を対象に2回にわたるウェブ調査を実施。

 データを分析した結果、20代の対象者では、「他者に自殺したい気持ちを打ち明ける」「そうした行動に対してリプライをもらう」など、インターネットにおける双方向使用をよく行う対象者のほうが、そうでない対象者に比べて、自殺念慮を低下させる傾向が見られた。

 一方、30〜40代では、インターネット使用者は、非使用者に比べ、自殺念慮や精神的健康がむしろ悪化する傾向があり、とくにサイト閲覧などの一方向的使用によって悪化傾向が見られたといい、インターネット使用の影響は世代によって大きく異なると分析している。

 また、いずれの世代でも、自殺念慮や、精神的健康の問題があると、インターネットの一方向的使用が増加する傾向があったという。自殺関連サイト使用者は、非使用者に比べ、精神的健康が不良であり、また、自殺リスクも低くないと見られることから、こうした使用者を専門的援助者につないでいく必要性も指摘されている。

◇自殺関連行動とネット上の情報との関連についての研究(PDF)
http://good-net.jp/usr/imgbox/pdf/20121026100353.pdf

ネットの長時間使用で依存状態が強まる傾向

 「依存」班は、インターネットの長時間使用が依存状態をもたらすか、また、依存状態にあることが、実際に生活時間や精神的健康に影響しているかなどを調査。東京都の中学生840 名を対象として、学校を介して2回の質問紙調査を行うパネル調査と、1163 名のオンラインゲーム・サイトの使用者に対する、2回にわたるウェブ調査を実施した。

 データ分析の結果、長時間使用によって依存状態が強まる傾向は、中学生調査のパソコン使用や、オンラインゲーム使用者調査で検出された。とくに、中学生のパソコン使用については、長時間使用が依存状態をもたらすとともに、依存状態がさらにパソコン使用を伸ばすという相乗的な傾向が見られた。中学生のパソコン使用においては、SNSや掲示板を使用する場合の影響がより強く見られたという。一方で、中学生の携帯電話使用については、長時間使用の影響は検出されなかった。

 また、中学生やオンラインゲーム使用者が依存状態にあることによって、生活時間や精神的健康の問題が生じうることを示す結果がしばしば得られており、依存を防止する取り組みの必要性を指摘している。元来の人間関係や精神的健康の悪さも、依存状態を引き起こす要因であり得ることも示されたという。

◇インターネット利用と依存に関する研究(PDF)
http://good-net.jp/usr/imgbox/pdf/20121026100601.pdf

(工藤 ひろえ)