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「Photoshop CC」などアドビ製品の新バージョン6月18日提供開始、月額制のみ

 アドビシステムズ株式会社は7日、画像編集ソフト「Photoshop」をはじめとする同社クリエイティブ系ソフトウェア製品の新バージョン「CC(Creative Cloud)」シリーズを6月18日より提供開始予定だと発表した。

アドビシステムズ株式会社のグレイグ・ティーゲル代表取締役社長。7日に東京都内で開催された「Adobe Create Now MAX 2013速報スペシャルイベント」の記者説明会で、同社のビジョンや、「Adobe Creative Cloud」の現況などを説明した

 従来、「CS(Creative Suite)」シリーズとして提供してきた各種ソフトをバージョンアップするとともに、ブランド名称を変更して提供するもの。「Photoshop CC」「Illustrator CC」「InDesign CC」「Dreamweaver CC」「After Effects CC」「Premiere Pro CC」「Flash Professional CC」「Prelude CC」「Muse CC」「Edge Animate CC」など15製品が含まれる。

 アドビでは現在、PhotoshopやIllustratorなど「CS6」シリーズのソフトを売り切り型のパッケージやライセンスで販売する一方、2012年5月からは月額会費制(サブスクリプション制)サービス「Adobe Creative Cloud」において、オンラインストレージ(個人向けでは20GB)や、ウェブ制作ツール群「Edge」シリーズなどとともに提供している。Creative Cloudに加入すれば、そこで提供されているデスクトップアプリケーションソフトをダウンロードして、通常のCS6シリーズのソフトと同様にローカルで利用可能だ。

 新たに提供を開始するPhotoshop CCをはじめとする新バージョンは、Creative Cloud経由のみでの提供となる。売り切り型のパッケージは用意されないため、アドビのクリエイティブ系ソフトの最新バージョンを利用するには、今後はCreative Cloudの有償プランに加入するかたちになる。

新バージョン「CC」シリーズのソフトウェア製品群。これらデスクトップアプリケーションの主要リリースは今後、「Adobe Creative Cloud」経由のみで提供される

 「adobe.com」での価格は、CCシリーズの有償ソフトなどCreative Cloudで提供されているすべてのソフト/サービスを利用できるCreative Cloud個人版(通常版)プランが、月額5000円(年間プランの場合)または月額8000円(月々プランの場合)。必要な単体ソフトだけを利用できるCreative Cloud単体サブスクリプションプランが月額2200円(年間プランの場合)または月額3200円(月々プランの場合)。

 なお、通常版については、CS3シリーズ以降のユーザーであれば、初年度は月額3000円(年間プラン)の特別価格で利用できる。さらに今回、新バージョンの提供形態がCreative Cloud経由へ全面移行するのに伴い、現行バージョンであるCS6のユーザー向けには、初年度が月額2200円(年間プラン)となる特別価格が設定された(7月31日までの申し込みが対象)。また、単体サブスクリプションについても、CS3以降のユーザー向けに、初年度が月額1000円(年間プラン)となる特別価格が新たに設定された(7月31日までの申し込みが対象)。

 Creative Cloudは、adobe.com以外にも販売店やパートナーサイト経由でも販売している。12カ月の一括払いとなり、通常版の市場想定価格は6万3000円。また、PhotoshopとIllustratorは単体サブスクリプションもあり、それぞれ市場想定価格は2万7720円。

 このほか、学生・教職員向けプラン、企業などで導入できるグループ版、大企業向けのエンタープライズ版がある。

「Adobe Creative Cloud」個人向けプランの価格(adobe.com)
「Adobe Creative Cloud」個人向けプランの価格(販売店、パートナーサイト)
「Adobe Creative Cloud」グループ・企業向けプランの価格
「Adobe Creative Cloud」大企業向けプランの価格

必要ならば、旧バージョンとなる「CS6」を使い続けることも可能

 Creative Cloudは2012年5月、CS6シリーズ全ソフトのほか、「Acrobat X」「Muse 1.0」などをラインナップしてサービスを開始。その後、Edgeシリーズなどの無償ソフトの追加提供や、各ソフトのアップデートを逐次行っており、Creative Cloud経由のみで新機能の追加が行われているソフトもある。

「Adobe Creative Cloud」でこれまで提供・追加してきたソフト/サービス

 アドビによると、サービス開始から11カ月時点でのCreative Cloud有償会員数は全世界で50万人。2013年度の目標である125万人に向けて順調に推移しているという。年間プランを選択する会員の割合は92%、(単体サブスクリプションではなく)通常版を選択する割合は81%。このほか、無償ソフト/サービスや機能限定版のみ利用できる無償会員は200万人に上る。

 アドビによると、Creative Cloudはサービス開始後、毎週のペースで何らかのアップデートを行っており、加入期間内であれば各ソフトの最新バージョン/最新機能を利用できる点が売り切り型との大きな違いだ。しかしその一方で、ユーザーからの要望で多かったのが、必ずしも最新バージョンが必要とは限らないということだったという。特に出版業界では印刷会社とのデータの受け渡しで互換性確保のため、制作現場でも旧バージョンが必要になることもあるとしている。

 そこで、Creative Cloudでは、旧バージョンを使い続けたい会員にも配慮。今後、CCシリーズでソフトがバージョンアップされた場合も、旧バージョンをダウンロードして継続して利用できるようにする。対象となるのは、CS6以降のバージョン。例えば、仮に5年後にCreative Cloudに加入したとしても、CCシリーズのその時点の最新バージョンだけでなく、CCシリーズの旧バージョンや、さらに古いCS6シリーズも選択可能。また、1アカウントにつき2台のマシンで利用できるため、1台にはCCの最新バージョン、もう1台にはCS6をインストールするような使い方もできるとしている。

 なお、CCシリーズのバージョンアップのサイクルについては未定で、例えば「CC2」「CC3」のようにシリーズ一括でメジャーバージョンアップしていくかどうか決まっていない。なお、個々のソフトにはバージョン番号が付いており、例えばPhotoshop CCはバージョン「14.0」となる。ウェブ制作ツール系のソフトは逐次アップデートして常に最新バージョンを提供していく方針だが、データ互換性の面で懸念があるPhotoshop CC、Illustrator CC、InDesign CCについては、従来通りマイルストーンを定めてできるだけタイミングを合わせてアップデートしていく方針だ。

「CS6」シリーズも販売は継続するが、新バージョンは予定なし

 Creative Cloud会員向けにCS6シリーズのダウンロード提供を継続するのとは別に、アドビでは売り切り型の製品として、現行のCS6シリーズの販売およびサポートも継続する。紙パッケージの形態については在庫分のみで終了するが、個人向けにはダウンロード形式で、企業向けにはライセンス形式で従来どおり販売していくという。ただし、新機能の追加を含むメジャーアップデートなどはCCシリーズのみとなるため、CSシリーズとしては今後、新バージョンのリリースは予定していない。

(永沢 茂)