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「Adobe Creative Cloud」機能強化、ソフトの設定やフォントの同期が可能に

ファイルの履歴管理機能などクラウド連携図る

 アドビシステムズ株式会社は7日、東京都内で「Adobe Create Now MAX 2013速報スペシャルイベント」を開催し、同社が月額会費制で提供しているサービス「Adobe Creative Cloud」の大規模なアップデートを6月に実施すると発表した。「Photoshop CC」など同社クリエイティブ系ソフトウェア製品の最新バージョンを提供するほか、クラウド経由のファイル同期機能や専用デスクトップアプリの提供、クリエイター向けSNS「Behance」の統合などを行う。

「Adobe Creative Cloud」で提供するソフト/サービス

最新バージョンの「Photoshop CC」には手ブレ補正フィルター追加

 クリエイティブ系ソフトの最新バージョンは、シリーズ名称が従来の「CS(Creative Suite)」シリーズに代わって「CC(Creative Cloud)」となり、Adobe Creative Cloud会員のみに提供されるかたちになった(詳細は5月7日付関連記事を参照)。

 CCシリーズとして提供されるソフトは、Photoshop CCのほか、「Illustrator CC」「InDesign CC」「InCopy CC」「Flash Professional CC」「Dreamweaver CC」「Premiere Pro CC」「After Effects CC」「Audition CC」「SpeedGrade CC」「Prelude CC」「Adobe Muse CC」「Adobe Edge Animate CC」「Adobe Bridge CC」「Adobe Media Encoder CC」の全15製品。それぞれ最新バージョンとして新機能の追加や操作性の改善などがなされている。

「CC(Creative Cloud)」シリーズのクリエイティブ系ソフト製品における主な機能強化ポイント

 例えばPhotoshop CCでは、画像のシャープネスを上げる手法の1つとして「ぶれの軽減」(カメラシェイクリダクション)フィルターを装備。撮影時の手ブレがある画像に対して、自動的に解析して補正をかけられるようになった。また、「Camera Rawフィルター」により、「Adobe Camera Raw」の各種現像機能をPhotoshop CCのフィルターとして利用できるようになり、レイヤーに対しても適用可能だとしている。

「Photoshop CC」の「ぶれの軽減」フィルター

 Illustrator CCでは「文字タッチツール」の使い勝手を向上。一連のテキスト文字列としての状態を保持しながら、文字ごとに位置を移動したり、拡大・縮小、回転といった処理を行えるようなった。

「Illustrator CC」の「文字タッチツール」

 After Effects CCでは、動画で人物の背景などを抜くための「ロトブラシツール」においてエッジの調整機能を追加。髪の毛などでも今までより精度を向上させられるとしている。

「After Effects CC」の「ロトブラシツール」および「エッジを調整ツール」

 このほか、CCシリーズ以外の「Edge」シリーズのウェブ制作関連ソフトについてもアップデート。例えば、レスポンシブウェブデザインのためのソフト「Edge Reflow」では、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでのブラウジングをシミュレートするソフト「Edge Inspect」と連携。また、軽量HTMLエディターソフトである「Edge Code」にはライブプレビュー機能を搭載し、コードの変更をファイルに保存することなく素早くウェブブラウザーでプレビューできるようにした。

「Edge Reflow」
「Edge Inspect」との連携機能
「Edge Code」
ライブプレビュー機能

ソフトの設定やフォントがクラウド通して同期

 これらCCシリーズやEdgeシリーズのソフトは、ローカルPCにインストールして使用する点で基本的に従来と変わりないが、ワークフローにおけるクラウドサービスとの密接な連携を図ったことも特徴だという。

 具体的には、ローカルで使用するアプリケーションソフトではあるが、Photoshop CCなど6製品においてサインイン/サインアウトの概念が新しく追加された。これにより、例えばPhotoshopのブラシツールなど、ローカルに保存される各ソフトの設定がクラウドを通じて同期可能になったという。Adobe Creative Cloudの会員が自身のアカウントでサインインすることで、複数のマシンでも環境設定などを統一して作業できるほか、マシンを新調した際にも設定をすぐに移行できるとしている。

「Photoshop CC」の同期設定
「Illustrator CC」の同期設定

 ローカルの環境に左右される要素としては他に、インストールされているフォントがあるが、これについても同期機能を提供する。従来はウェブフォントサービスとして提供してきた「Typekit」について、ローカルのデスクトップフォントとしても使用可能とし、Photoshop CCなどの各種ソフトでデザイン制作する際にも実際にTypekitのフォントを使えるようになった。なお、現時点でTypekitで提供されているのは欧文フォントのみで、日本語フォントの提供は検討中だという。

フォントサービス「Typekit」がデスクトップにも対応

 さらに、Adobe Creative Cloudで提供されるオンラインストレージに保存するファイルについては、簡易履歴機能を追加した。バージョン番号までは付かないものの、ファイルを変更していくと自動的に履歴として保存され、ファイルを過去の状態に差し戻すことができる。グループでファイルを共有して作業する際に重宝する機能と言え、ファイル共有については従来のファイル単位のほか、フォルダー単位での共有設定も可能になった。

ファイルの簡易履歴機能

 専用のデスクトップアプリケーション「Creative Cloud」も用意。Adobe Creative Cloudで提供されているソフトを利用するには、従来はウェブサイトに行ってサインインした上でダウンロードする必要があったが、この専用デスクトップアプリケーションから直接ダウンロードできるようになった。また、従来は個々のアップデートマネージャーソフトやOSの通知機能を利用してソフトごとに行っていたアップデートの管理も、同アプリで一括して受け取ることが可能だという。

「Adobe Creative Cloud」専用のデスクトップアプリケーション「Creative Cloud」

 このほか、クリエイティブに特化したソーシャルメディア「Behance」をAdobe Creative Cloudに統合。会員が作品を公開したりシェアできるようになっている。現在は英語のみの対応だが、日本語も提供したいとしている。

「Adobe Creative Cloud」のアップデート内容を説明したアドビシステムズ株式会社の古村秀幸氏(マーケティング本部デジタルメディア第一部部長)

(永沢 茂)