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オープンデータ推進へ、「アーバンデータチャレンジ東京2013」始動
自治体から提供可能なデータとその活用方法を募集
(2013/6/12 06:00)
自治体などが保有するデータの公開や流通促進に向けた取り組みとして、各機関が提供可能なデータやそれらのツール、利活用方法などを募集するプロジェクト「アーバンデータチャレンジ東京2013」がスタートした。
主催しているのは、東京大学空間情報科学研究センターの「次世代社会基盤情報・寄付研究部門」と、産官学の関係機関が連携して社会インフラのデータにかかわる情報の流通環境を整備することを目的とした組織「社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)」。両組織は今後、2014年3月の表彰を目標にコンテストを開催するとともに、それに向けてさまざまな事例紹介、ツール紹介、意見交換のイベントなどを開催する。
6月10日、アーバンデータチャレンジ東京2013のキックオフイベントが東京大学駒場第IIキャンパスにて開催された。「地域のお悩み聞かせてください」というタイトルが付けられたこのイベントには、関東各地の自治体職員のほか、オープンデータに関心のある民間企業や研究機関も加わり、150人以上が集まった。
イベントではまず、アーバンデータチャレンジ東京2013の実行委員会である東京大学生産技術研究所・准教授の関本義秀氏が開催趣旨について説明した。関本氏は、オープンストリートマップや震災復興支援アーカイブ、福井県鯖江市によるオープンデータのプロジェクト「データシティ鯖江」などの例を挙げて、オープンデータの現状を解説。アーバンデータチャレンジ東京2013の基本的な狙いとして「地域の課題とデータの対応付け」を挙げ、「『地域の課題を解決するために何とかデータを用意できないか』という“課題オリエンテッド”のケースと、『データはあるけど、それをいかに活用するか』という“データオリエンテッド”のケースの両方を吸い上げていきたい」と語った。
その上で「普通の自治体が参加できるように、年間を通じた継続的なイベントとして、情報収集目的だけでも顔を出せるようにしたい」「課題提示やデータを提供してくれた自治体には必ず何らかのフィードバックをする」「各分野のプロの知恵を借りるなど、一般企業もビジネスベースで参加できるようにしたい」などと抱負を語った。目標としては、「首都圏350自治体の2割にあたる70自治体が1回以上、何らかのイベントに参加してもらいたい」「コンテストの賞金額も上げて、自治体のウェブサイトで紹介してもらうようにお願いしたい」という2点を挙げた。さらに今回のプロジェクトでは民間からの課題提供やデータ提供も大歓迎であると同時に、首都圏以外からのPRや情報収集、イベント要請なども歓迎していると呼び掛けた。
続いてオープンデータの取り組みの先進事例として、神奈川県横浜市、東京都豊島区、千葉県流山市の3つの自治体が発表を行った。横浜市はオープンデータを推進する意義・目的や基本原則、課題などについて解説し、横浜市において開催されたオープンデータのハッカソンやアイデアソンを紹介した。
豊島区はGIS(地理情報システム)を活用したセーフコミュニティ(怪我や事故の予防に重点を置いて、安全と健康の質を高めていく街作りの活動)の取り組みについて解説。犯罪発生件数のデータや区民からの情報提供支援、パトロール結果情報などを組み合わせた情報共有システムを紹介した。
流山市は「流山市オープンデータトライアル」と題したプロジェクトを紹介。AED設置場所や避難場所、災害用井戸などさまざまなデータをウェブサイトで公開していることを紹介した上で、今後の課題について語った。
その後、今回参加した自治体が、それぞれが抱える問題を発表。「紙ベースの地図の多くがまだデータ化できていない」(東京都町田市)、「オープンデータに厳格な作成基準がない」(東京都日野市)、「全職員利用可能な統計・分析ツールの認知度が低い」(豊島区)、「個人情報は慎重に取り扱う必要があるため地図データの公開が進まない」(神奈川県藤沢市)、「行政内のデータの洗い出しが必要」(茨城県水戸市)、「庁内の各部署間でプラットフォームの統一とデータ共有を図る必要がある」(東京都八王子市)といったさまざまな課題が示された。
ここで示された課題を踏まえて、次に11の自治体に分かれてディスカッションを実施。自治体職員や一般住民、研究者、エンジニアなどさまざまな立場の参加者による活発な意見交換が行われた。議論を通じて具体化した課題や新たに出たアイデアなどを付せんに記載してスチレンボードに貼っていくことにより、自治体が抱える悩みやオープンデータを推進する上での課題が浮き彫りとなった。ディスカッションの終了後は、グループごとに内容の発表も行われた。
アーバンデータチャレンジ東京2013の今後のスケジュールとしては、今回の意見交換を踏まえながら、8月に先進事例およびツールの紹介、悩みリストの公表などを行うイベントを開催し、10月にコンテストの詳細を説明するエディットソンを開催する。その後は2014年2月中旬にコンテストの応募最終締め切り、3月上旬に表彰式を予定している。コンテストは、データそのものや、データを活用するためのツールやアプリ、利活用のアイデアといったジャンルに分けて募集する予定で、民間企業や個人にも幅広く参加を呼びかけていく予定だ。