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楽天<kobo>、反省3カ月+改善9カ月の1年が終了、紙との統合でAmazon追う

 電子書籍サービス「楽天<kobo>」がサービス開始から1周年を迎えた19日、「今までのkobo。これからのkobo。」と題した記者説明会が開催された。楽天株式会社の舟木徹氏(イーブックジャパン事業長)はじめ、同事業の各分野の担当者が出席。楽天<kobo>の進ちょく状況や今後の戦略などを説明した。

楽天株式会社の舟木徹氏(イーブックジャパン事業長)

 舟木氏はサービスを開始してからの1年について、さまざまな点で反省すべき点が出てきたのがまず最初の3カ月であり、その後、それをじっくりと、かつ着実に改善してきたのが残りの9カ月だったと振り返り、「ユーザーの皆様、出版社の皆様には最初、たいへんご迷惑をおかけしたことを今でも反省している。そこで学んだことを今後に生かしていく」と語った。

 実際に電子書籍事業を手がけてみた感想としては、「電子書籍の市場まだまだ立ち上がっていないと言うのか、まだまだ本格展開していないと感じている。まさに第1ラウンド、まさにこれから」とした上で、ターニングポイントについて「技術が1つの方向性に収れんしていくタイミングから成長期に入る。その技術フォーマットの単一的なものというのがEPUB3ではないか」と指摘。「その前に基礎的なサービスをしっかりと作っておくのが、今後の我々の務め」とした。

問い合わせ件数の推移

 楽天<kobo>の具体的なユーザー数については明らかにしなかったが、閲覧環境として無料アプリ(2012年12月にAndroid版、2013年4月にiOS版)をリリースしてからの増加が著しいという。2013年の6カ月間で、楽天<kobo>の月間ユーザー数は2倍になったとしている。電子書籍端末のユーザー数がほぼ横ばいなのに対して、アプリユーザーは着実に増加しており、7月にはアプリユーザーが半数以上を占める見込みだ。電子書籍コンテンツの販売実績も2013年は、毎月20%以上の成長を継続しているとした。

月間ユーザー数の推移
電子書籍コンテンツ販売実績の推移

 その一方で、同じく昨年日本市場に参入した「Amazon Kindleストア」と比較すると、「現時点でAmazonに劣っていることは事実」と認める。舟木氏は、その最大の原因について、紙の書籍のECと電子書籍が分断されていたことと説明する。すなわちAmazonは、紙の書籍を購入するECのユーザー層がすでに存在しており、その層に対して電子書籍をうまく訴求しているのだという。すでに楽天でもそうした融合を目指し、紙の本のEC事業である「楽天ブックス」の検索結果画面において、紙の書籍とともに電子書籍版も表示する取り組みを進めている。楽天ブックスのユーザーを楽天<kobo>と共有していく狙いだ。今後、楽天ブックスとの統合をさらに進めていくという。

「楽天ブックス」との連携
紙版と電子版の同時発売で、紙・電子ともに売上が増加するとの結果が出ているという

 とはいえ、ECの書籍取扱高を比べてみても、Amazon.co.jpは楽天ブックスの10倍の規模を持っていると舟木氏は説明。「この部分だけで勝負していくのは相当しんどい」とし、その差を認めた上でECユーザーを増やしていくためには、1兆6000億円~1兆7000億円というリアル書店のマーケットに目を向ける戦略が不可欠だという。今後、書店がECや電子書籍を扱っていく際のインフラとして、楽天がシステムや物流を提供していくことが1つの大きなキーではないかとした。「まさにハイブリッド書店。ECや電子書籍になった時には、リアル書店に来ているユーザーに我々の方に来てもらう。そのためにリアル書店に対してどのようなベネフィットを与えられるか」。

 リアル書店との連携の1つとして7月により日本でも開始するのが、koboの電子書籍端末を販売する書店・量販店とのレベニューシェアモデルだ。従来は、電子書籍端末を販売することで販売店にマージンが入るが、それで終わりだった。これに対してレベニューシェアモデルでは、電子書籍コンテンツ販売の売上も書店や量販店に分配するもの。具体的な料率は公表しなかったが、販売した端末の台数に応じて料率も上げていく仕組みとし、書店・量販店のモチベーションを上げていきたいという。書店・量販店でのアクティベーションも含めたカスタマーサポートを充実させるとしており、オフラインにおいても紙と電子の併売施策を強化していくとした。

レベニューシェアモデル
リアル書店・量販店店頭での施策

(永沢 茂)