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グリー、2013年第4四半期は特損計上で約3億円の純損失

グリー株式会社 代表取締役社長の田中良和氏

 グリー株式会社は14日、2013年6月期第4四半期(4~6月期)の決算説明会を開催した。売上高は370億300万円で、前年同四半期比では8%の減少。営業利益は77億9400万円だったが、一部ゲームタイトル関連資産での減損処理、海外拠点の閉鎖にともなう清算などで約67億円の特別損失が発生した影響から、3億1100万円の当期純損失を計上した。一方、2013年6月期通期(2012年7月~2013年6月)での売上高は1522億3800万円、当期純利益は225億1400万円だった。

営業利益確保するも、海外拠点清算などで特損計上

 2013年6月期の1年間、各四半期ごとの売上額は370億300万~394億700万円の範囲でほぼ横ばい傾向だったが、広告宣伝費や従業員の増員(前期末から634名増え、2364名)などでコストが増加。利益を押し下げる要因となったことから、今後は固定費用の削減にも取り組む。

 特別損失額は約67億円だが、これは投資有価証券売却益などを中心とした34億7900万円の特別利益と、ゲーム関連資産減損処理などの特別損失102億4700万円を合算した数値となっている。

 特別損失の内訳で最も大きかったのが、提供ゲームの終了にともなう「ウェブゲーム関連資産」の減損で48億8100万円。このうち45億3800万円は、国内外スタジオでのネイティブゲーム開発にともなうものだった。このほか、海外展開していたメッセンジャー事業関連の損失が36億8900万円、中国およびイギリスに開設していた拠点の閉鎖・清算にともなう損失が11億6800万円あった。

決算概要
特別損益の内訳

 なお、グリーでは2014年6月期から会計ルールを変更し、売上面で実績ある一部のゲームを除いて、ゲーム関連投資の資産化は行わず、その都度ごとに費用として計上する。このため、今後はゲーム関連の資産は増えない見込みという。

 一方、株式の期末配当金については、14.5%という配当性向自体は前期から引き続き維持する予定。ただし、利益の減少などにともない、1株あたり配当金は14円00銭となる(前年実績は30円00銭)。

 今後の正式な業績予想については、発表を控えた。ただし、グリー株式会社 コーポレート本部長の秋山仁氏は、2014年6月期第1四半期の大まかな見通しとして「前四半期比で売上高は微減、費用はほぼ横ばいになるのでは」とコメントしている。

フィーチャーフォン苦戦も、海外向けネイティブゲームが成果

2014年6月期の事業目標

 グリーでは、ゲームの提供形態別に、フィーチャーフォンとスマートフォンのブラウザで遊ぶ「ウェブゲーム」、各スマートフォンプラットフォームでネイティブ動作するアプリとしてのゲームを「ネイティブゲーム」という2つの事業領域に分け、それぞれ展開している。14日の記者説明会に出席した代表取締役社長の田中良和氏は、「ウェブゲーム事業において、フィーチャーフォン向けの売上が下がっていく中で、スマートフォン向けの売上を伸ばしきれなかった」と振り返った。

 今後については、「選択と集中」戦略を引き続き推進する。田中氏は「フィーチャーフォン向けが下がっていくのは、ある程度、しようがないと思っている。スマートフォンへいかに移行できるかが優先」と、スマートフォン重視の姿勢を見せた。ネイティブゲーム事業については、海外で実績を上げつつあるものの、コスト管理を課題として挙げた。

 グリーでは、ゲーム内有料コンテンツを「コイン」という電子マネーで販売しているが、その消費額がゲームの収益性などを示す。2013年6月期通期の傾向として、フィーチャーフォンにおけるコイン消費額が低減傾向となっているもの、スマートフォンでの消費額は通期で微増ないし横ばいとなった。

有料コンテンツ販売用コインの消費実績
コイン消費はフィーチャーフォンで低減するも、スマートフォンでは堅調

 スマートフォン向けウェブゲームでは「神獄のヴァルハラゲート」(株式会社グラニ)が実績を上げた。「7月のコイン消費額は、4月と比較して2.8倍に伸びた。スマートフォンのブラウザゲームでも、新しくタイトルを作っていけば、数カ月で売上を大きく伸ばせることを立証できたのでは」(田中氏)

 なお、ウェブゲーム事業においては、2014年6月期の上半期に、自社開発タイトル3本、パートナー開発タイトル7本を投入する予定という。また、すでにサービス中のタイトルについても、ゲーム内イベントの見直しやユーザーインターフェース改善によって、コイン消費額を増加させる効果が期待できることから、注力する。

ネイティブゲームは海外マーケットで実績を上げた

 ネイティブゲーム事業については、海外マーケットのうち、米国マーケットで成果が上がっている。iOSおよびAndroidのオンラインストアで配信している「Knights & Dragons」は、2013年第4四半期のコイン消費額は前四半期比で3.8倍になった。新規タイトルについても15作をこの半年で投入する予定。

 グリーではゲーム以外の事業領域として、広告、ベンチャーキャピタルなどを手がけているが、エンターテインメント事業として、グッズの販売なども行っていく。2013年6月にはトレーディングゲーム「ジーククローネ」の第1弾を発売済み。

 また、企業としては固定費用の削減にも取り組む。田中氏は2014年6月期の第4四半期目標として「前年同四半期比で約10%の削減」を目標として掲げる。具体的には、従業員の自然減および採用抑制による人件費削減、不必要な残業代の低減、ゲーム開発タイトルの絞り込みによる外注費の抑制などを推進する。

(森田 秀一)