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米Google、表現の自由のためのツール3種発表、検閲回避のブラウザー拡張など

 米Googleは21日、表現の自由を守るための活動を強力に支援していくことを同社公式ブログにおいて明らかにし、そのための3種類のツールを発表した。これは近年Googleがネットを代表する他の企業、例えばAmazon、Microsoft、Facebook、Appleなどよりも政治的主張を積極的に行う企業であることを示している好例と言える。

 この発表は、Googleの“think/do tank”(行動するシンクタンク)を名乗る「Google Ideas」を通して行われた。Google Ideasは10月20日から22日まで、「Council on Foreign Relations」「Gen Next Foundation」の2つの財団とともに、「Conflict in a Connected World」と題する会議をニューヨークで開催している。

 この会議では、ハクティビスト、セキュリティ専門家、起業家、反体制派などを招き、世界各地で多発している紛争にインターネットツールが果たしている役割の功罪を議論している。また、インターネット検閲への対応も検討しているという。

 この中で、Googleが支援する3種類のプロジェクトが発表された。「Project Shield」「Digital Attack Map」「uProxy」である。

「Google Ideas」のウェブサイト

 Project Shieldは、DDoS攻撃からウェブサイトを守るシステムだ。Google自ら使用しているそのシステムを、独立系ニュースサイトや人権サイト、選挙監視に関連したウェブサイトなどに対して慈善目的で提供しようとするイニシアチブだ。ウェブページを高速化するGoogleの「Page Speed Service」を利用し、将来このサービスが有料化された場合にも無償あるいは極めて少額の費用で利用できるようにするとしている。

 Digital Attack Mapは、世界中で発生しているDDoS攻撃の生中継を地図上に視覚化するサービスだ。これによって、完全に正確とは言えないものの「表現の自由に対する攻撃」がいつ、どのように、どれくらい発生しているかを視覚的に知ることができるという。これはGoogle Ideasとセキュリティ企業のArbor Networksの共同プロジェクトだ。

DDoS攻撃の生中継を地図上に視覚化する「Project Shield」

 uProxyはChromeとFirefox向けブラウザー拡張機能だ。P2Pテクノロジーを使用したVPNとも言える。検閲やフィルタリングが行われている国の人々は、uProxyを利用すれば、直接信頼している国外の友人とuProxyでVPN接続を確立して、ネットを利用できるという。通常VPNサーバーを立ち上げるのは技術的知識を要するが、uProxyならブラウザー、コンピューター、インターネット接続さえ起動していれば利用できる。トラフィックはプロトコルを偽装しているため、単なるチャットや音声通話にしか見えない。ただし、uProxyで外部接続を提供する場合、相手が行う活動を完全に信頼しなければならず、特に企業内部で社員が利用する際には注意が必要だとしている。

 uProxy技術はワシントン大学とBrave New Softwareが共同して開発し、Google Ideasによる資金提供を受けている。

 今日のGoogle公式ブログでの発表では、「国境なき記者団」のデータを引用し、「今日の世界では3人に1人が、厳しく検閲されている社会に住んでいる」と主張している。

(青木 大我 taiga@scientist.com)