清水理史の「イニシャルB」

Qualcomm「NCM865」チップ採用、MSIのPCIe Wi-Fi 7アダプター「HERALD-BE WIFI 7 MAX」を試す

MSIの「HERALD-BE WIFI 7 MAX」

 MSIの「HERALD-BE WIFI 7 MAX」は、PCIe接続に対応したデスクトップPC向けのWi-Fi 7アダプターだ。グローバルでは2024年に発表された製品だが、ようやく2026年4月から国内での販売が開始された(なお、筆者が購入したのは「HERALD-BE WIFI 7 MAX」だが、同等モデル「HERALD BE9400 WiFi 7 PCIe Card」も同じく4月に国内販売が開始されており、Amazon.co.jpなどでの販売価格は、こちらの方が安いようだ)。

 本製品の最大の特長は、Qualcommチップが搭載されている点になる。AMD環境でも利用可能なPCIe接続Wi-Fiアダプターの選択肢が広がったことになる。

意外に少ないPCIe接続の選択肢

 「HERALD-BE WIFI 7 MAX」は、手元のデスクトップPCにWi-Fi機能を追加できる拡張アダプターだ。

 最近では、オンボードに標準でWi-Fiを搭載するマザーボードも珍しくないため、わざわざPCIeスロットを占有する本製品のようなカードのニーズは高くないが、それでもPCを無線化したいという場合のひとつの選択肢になる。

 実は、PCIe接続のWi-Fiアダプターの選択肢は、さほど広くない。現状、国内で購入できる製品をざっと挙げると、下表のようになる。

 5製品中、6GHz帯が320MHz幅に対応しているのは、今回のMSI HERALD-BE WIFI 7 MAXと、ASUSのPCE-BE92BT、TP-LinkのArcher TBE550E/Aの3製品。このうちASUSのPCE-BE92BTは製品情報ページに大きく「Intel製マザーボードのみ対応」となっている。

ASUSのPCE-BE92BTのように、Intelチップ搭載のWi-FiアダプタはAMD環境と相性が悪い

 Intel製Wi-Fi 7アダプターはAMDプラットフォームとの組み合わせで相性の問題が発生することが知られている。このため、AMDプラットフォームを利用しているユーザーは、これまでPCIe接続でかつ320MHz対応のWi-FiアダプターがTP-Link Archer TBE550E/A(メーカーは公表していないがMediaTekチップ)一択だったのに対して、ようやく、Qualcommチップを採用した新たな選択肢として、今回の製品を選べるようになったことになる。

 もちろん、デスクトップPCの無線化、という広い視点で見れば、USB接続のアダプター、もしくはメッシュ子機や中継機、Wi-Fiルーターのブリッジモードなども選択肢になる。

 ただ、USB子機は、TP-LinkのArcher TBE400U、TBE400UH、UGREENのBE6500 Wi-Fi 7 USB Adapterのいずれも6GHz帯の320MHz幅がサポートされていない。また、メッシュ子機や中継機、Wi-Fiルーターのブリッジ化も6GHz帯対応のトライバンド製品を選ぼうとすると2万円以上と価格が高くなってしまう。

 そういった意味で考えると、今回のMSIの製品は、6GHz帯と320MHz幅に対応し、AMDプラットフォームで、1万円を切る価格と、いくつものハードルを越えられる製品ということになる。

PCIe 1x接続でBluetoothはUSB 2.0接続

 それでは、実機を見ていこう。

 前述したように本製品はPCIe接続の製品となっており、PCIeカード形状の本体と独立型の外付けアンテナという構成になっている。

正面
背面

 アンテナは、マグネットで固定可能な台座部分と、アンテナ本体を組み立てて利用するタイプとなっているが、台座とアンテナの接続部分は固定式で、角度や方向などを調整することはできない。向きを調整したい場合は、台座ごと方向を調整するとか、PC本体の側面に固定するとか、物理的に位置を調整する必要がある。

アンテナは外付けタイプ

 最近はアルミ製のPCケースも多いので、側面に付けたい場合などは意外に苦労しそうだ。

 アンテナ内部は分解できなかったので構造は不明だが、ある程度の幅があり、2系統それぞれのアンテナが内部にうまく配置されていると推測される。

 ただ、どうせ独立型の外付けアンテナにするのであれば、他社製品のように1系統ずつ独立させた方がよかったのではないかと思える。

 内部的に近い位置に配置されていると、指向性が近くなり、MIMOで空間多重した際の性能が確保しにくい。実際、後述するパフォーマンステストでも、PCIeの外付けアンテナという点を考えると、さほど性能が高いとは思えない結果になった。

 カード本体は、金属製のカバーでおおわれているが、取り外すと内部のモジュールが見えるようになっており、QCNCM865というモデルが確認できた。

QualcommのNCM865を採用

 なお、本製品はBluetooth 5.4にも対応しているが、Bluetoothを利用するにはカード上のピンヘッダとマザーボード上のUSB 2.0端子を付属のケーブルで接続する必要がある。PCIe接続のみではWi-Fiのみの利用となる。

AMDプラットフォームでの動作を確認

 Intel以外のチップということで、AMD環境で実際に試してみた。テストしたのは、以下の環境だ。

  • MB:JGINYUE B550I GAMING AM4 Mini-ITX
  • CPU:AMD Ryzen 5 5800GT
  • RAM:DDR4 32GB
  • SSD:480GB SATA接続

 PCIe x16スロットに今回のMSI HERALD-BE WIFI 7 MAXを装着し、BluetoothもUSBケーブルで接続したところ、システム上で問題なく認識され、MSIのサポートページからダウンロードしたドライバーにて動作することを確認できた。

▼MSIのサポートページ
MSI HERALD-BE WIFI 7 MAX

 今回の検証では、接続先としてアイ・オー・データ製のトライバンドWi-Fiルーター「WN-7T94XR」(同じくQualcommチップ採用機)」を利用したが、この組み合わせでは、何の問題もなく動作している。

 ただし、筆者宅には、これ以外にUbiquitiのUniFi U7 Pro XGSを利用した環境があるのだが、こちらとの接続で何度か動作が安定しないことがあった。具体的には、MLO(5GHz+6GHzのeMLSR)接続の際、IPv4のアドレスをDHCPサーバーから取得するのに時間がかかったケースがあった。再現性が低いので、たまたま電波の状況が悪かっただけの可能性もあるが、一応、報告しておく。

ノートPC内蔵と互角か?

 気になるパフォーマンスだが、思ったより速くない。以下は、木造3階建ての筆者宅の1階にWi-Fiルーター(アイ・オー・データ機器WN-7T94XR)」を設置し、本製品を装着したPC(Mini-ITXの小型PC)を使って、各ポイントでiPerf3の速度を計測したものとなる。比較対象として、ノートPC内蔵のIntel BE201D2Wでの結果も掲載する。

HERALD-BE WIFI 7 MAX ベンチマーク結果
デバイス通信1F2F3F入口3F窓際
HERALD-BE WIFI 7 MAX上り206064223930.2
下り203091328951
Intel BE201D2W
(ノートPC内蔵)
上り233063121937.5
下り211079327790.9

※単位:Mbps
※ルーター:アイ・オー・データ機器 WN-7T94XR
※サーバー:MINISFORUM MS-01 Corei5-12600H/RAM64GB/1TB NVMeSSD/10Gbps SFP+/Proxmox 9.1 LXC(Ubuntu 24.04)
※クライアント:Ryzen 5 5800GT/RAM32GB/480GB SATASSD/NCM865/Windows11 24H2

 今回使用したWi-Fiルーターがそもそも、そこまでハイパフォーマンスというわけではないため、特に長距離での速度が低いが、それでもノートPC内蔵のモジュールに負ける部分もあり、外付けアンテナのアドバンテージがそこまで出ていない。

 1階の近距離は上り、下りともに2Gbpsオーバーなので、速度的に不満はない。冒頭で触れたように、PCIe接続(USB接続も)のWi-Fiアダプターの中には、6GHz帯が160MHz幅の最大2882Mbps止まりの製品も少なくないが、本製品は320MHz幅の5764Mbpsで通信できることが生きている印象だ。

2階も下りで900Mbpsを超えているので、遮蔽物が少なく、距離が近い環境なら十分なパフォーマンスを発揮できていると言える。

 同じ環境で、ノートPC内蔵のIntel BE201D2Wは、1階でHERALD-BE WIFI 7 MAXを上回る下り2110/上り2330Mbpsを達成できたが、2階は下りが793Mbpsだったので、900Mbpsを超えたHERALD-BE WIFI 7MAXが勝利している。

 ただし、ポイントは3階だ。3階入り口は、多少の差はあるが、ほぼ互角と言っていい。一方で、3階窓際もほぼ互角と言っていいが、若干、ノートPC内蔵のIntel BE201D2Wが上回っている。

 今回のHERALD-BE WIFI 7 MAXは、外付けアンテナなので、長距離が弱い6GHz帯でもある程度のパフォーマンスを発揮できることを期待したが、ノートPC内蔵に比べて、そこまで大きなアドバンテージはなく、互角か、場所によっては若干劣る場合もあるという結果になった。

 あくまでも筆者の個人的な推測だが、最近のノートPCは、アンテナの配置などが最適化され、性能が高くなっていることも影響しているが、本製品は、外付けとは言え、アンテナ2本が独立せず、一つの筐体に詰め込まれていることで、そこまで高いMIMO性能や受信性能が期待できないのではないかと考えられる。

 もちろん、一般的な利用で不満はなく、MLOも利用可能となっているが、高い性能を期待するほどではないという印象だ。

無難な選択肢

 以上、MSIのPCIe接続のWi-Fi 7アダプター「HERALD-BE WIFI 7 MAX」を実際に試してみた。パフォーマンスが突出しているというわけではないが、ノートPC内蔵と互角の性能で使えるので、不満のない製品と言っていいだろう。

 同等モデル「HERALD BE9400 WiFi 7 PCIe Card」は1万円を切る価格で販売されており、6GHz帯の320MHz幅やMLOに対応でき、AMDプラットフォームでも利用できるため、デスクトップPC用のWi-Fi 7アダプターとしては無難な選択肢と言えそうだ。デスクトップPCの無線化を検討している場合は、候補のひとつとなりそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中