清水理史の「イニシャルB」

新発明か? それとも迷走か? ルームライト内蔵のWi-Fi 7ルーター「HUAWEI WiFi Mesh X3 Pro」
2026年6月1日 06:00
HUAWEIから、新型のWi-Fi 7メッシュルーター「WiFi Mesh X3 Pro」が発売された。最大の特徴は、「雪に覆われた山頂」をイメージしたルームライトとしても利用できること。むしろ、インテリアに溶け込むオブジェに、Wi-Fiルーター機能を内蔵したと言い換えてもいい本製品の実力を検証した。
「アイデアだけは聞く」製品が実際に出た
最初は「ふざけている」のかと思ったし、クラウドファンディングでは完全にネタとして支援した。
クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」にHUAWEI WiFi Mesh X3 Proが登場したとき、透明のケースに収められた山のオブジェと、それがオレンジに光る様子に「さすがに、これはやりすぎでは?」と思った。が、結局は目標額をあっさり突破し、5月8日に公式発売が決定され、Amazon.co.jpでも販売されるようになった。
HUAWEI WiFi Mesh X3 Proは、「Wi-Fi 7ルーター+ルームライト」という新しい発想で開発された製品だ。
2882Mbps(5GHz)+688Mbps(2.4GHz)のデュアルバンド2ストリーム対応の無線と、2.5Gbps×2の有線を組み合わせたWi-Fi 7ルーターで、内部に光る山を収めた高さ25cmほどのルーターと、同じく内部がオレンジに光る高さ7cmほどの中継機を組み合わせたメッシュ対応の製品となっている。
Wi-Fiルーターなのか? ルームライトなのか? どちらが主従なのかがわからない、というか、それはきっと欲しいと思う人が決めることなのだと思うが、Wi-Fiルーターを主とした視点で見れば、かなり思い切ったデザインを採用した製品ということになる。
「ルーターは『隠す』から『魅せる』へ」というキャッチコピーの通り、おそらく開発の出発点は、既存のWi-Fiルーターのデザインに対する批判だろう。
昨今のWi-Fiルーター、特にメッシュ対応の製品はノイズレスでやわらかい印象のデザインになりつつあるが、それでも、内部の基板やアンテナからにじみ出る独特の「通信機器」感、ピカピカ点滅するLED、主張をやめないロゴなど、Wi-Fiルーターにはひと目でWi-Fiルーターとわかる機能的な文脈がしっかり存在する。
それが、「隠したい」という利用者の心理につながるわけだが、本製品は、こうした通信機器感をなるべく排除し、「飾る」ことに対して積極的になれるようなデザイン的な工夫をしている。
こうしたアイデアは、もちろん既存のWi-Fiルーターメーカーにもなかったわけではない。実際、筆者はメーカー取材の際、「ぬいぐるみカバーを付ける」などといったアイデアを雑談レベルで耳にしたこともある。
本製品の「発明」というか、すごいところは、これを実際に製品として世に出した点にある。まずは、開発チームの発想の豊かさと、実行力の高さを高く評価したい。
スペックを見れば、価格の高さは否めない
この製品の場合、正直、無線のスペックを語るのは野暮な気がするが、実際に買うかどうかの判断には重要なので、まずは基本スペックと市場での位置を確認しておきたい。
本製品は、前述したように、2882Mbps+688Mbpsの無線機能と2.5Gbpsの有線LANを搭載したWi-Fi 7ルーターだ。スペック的には、現状のWi-Fi 7製品のエントリークラスに相当するものとなっており、同等スペックのメッシュ対応製品としてはTP-LinkのDeco BE25(2ユニットで2万4600円)、Amazon eero 7(2ユニットで3万3060円)、Xiaomi BE3600 Pro Mesh(2ユニットで1万9800円)などが存在する。
本製品は、本体+中継機のセット価格がAmazon.co.jpで実売3万7810円と、これまでの最高値のeero 7をさらに上回る高値が設定されている。
正直、Wi-Fiルーター的な視点で見れば、コスパは悪い。個人的に、おすすめか? と聞かれたら、「予算が許すなら」という条件を必ず付ける。
| 価格 | 3万7810円前後(親機+中継機のMeshセット) |
| CPU | - |
| メモリ | - |
| 無線LANチップ | - |
| 対応規格 | IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b |
| バンド数 | 2 |
| 最大速度(2.4GHz帯) | 688Mbps |
| 最大速度(5GHz帯-1) | 2882Mbps |
| 最大速度(5GHz帯-2) | - |
| 最大速度(6GHz帯) | - |
| チャネル(2.4GHz帯) | 1-13ch |
| チャネル(5GHz帯-1) | W52/W53/W56 |
| チャネル(5GHz帯-2) | - |
| チャネル(6GHz帯) | - |
| ストリーム数(2.4GHz帯) | 2 |
| ストリーム数(5GHz帯-1) | 2 |
| ストリーム数(5GHz帯-2) | - |
| ストリーム数(6GHz帯) | - |
| アンテナ | 内蔵×6 |
| WPA3 | 〇 |
| メッシュ | 〇 |
| IPv6 | 〇 |
| IPv6 over IPv4(DS-Lite) | 〇 |
| IPv6 over IPv4(MAP-E) | 〇 |
| 有線(WAN/LAN自動認識) | 2.5Gbps×2 |
| 有線(LAG) | - |
| 引っ越し機能 | - |
| 高度なセキュリティ | HUAWEI HomeSec |
| USB | - |
| USBディスク共有 | - |
| VPNサーバー | - |
| DDNS | - |
| リモート管理機能 | 〇 |
| 再起動スケジュール | - |
| 動作モード | ルーター/AP/ランプモード |
| ファーム自動更新 | 〇 |
| LEDコントロール | 〇 |
| ゲーミング機能 | - |
| サイズ(直径×高さmm) | 本体123.2×250.9/中継機114.8×73.5 |
ハードウェア的には、シンプルとも言えるし、凝っているとも言える。まず、Wi-Fiルーター的な視点で見ればデザインはシンプルだ。通信状況を示すLEDは搭載されず、ロゴも前面下に「HUAWEI」と小さくあるだけだ。
インターフェースも、底面に2.5Gbpsの有線LANポート(WAN/LAN自動判別)と電源ポート、リセットスイッチがあるのみで、何とWi-Fiルーターでは定番の「WPSボタン」すらない。個人的には、LEDは不要だと思っているし、WPSボタンも無くても困らないが、これらを排除するというのは、おそらく通信機器の開発者視点では、相当思い切った判断と言える。
もちろん、Wi-Fiルーターっぽさという点では、外付けアンテナも見えないが、実際にはルーター側の例の山のオブジェの内部にアンテナが仕込まれている。
同社によると業界初の「クリスタルアンテナ」ということで、アンテナのパターンがプリントされた透明の基板上が、本体中央に配置されており、これを囲むように山のオブジェが配置されていることになる。また、アンテナの本数も合計6本となっており、5GHz帯に関しては2ストリーム対応製品なのに4本もアンテナが内蔵されている(ダイバーシティで良好なアンテナを選択して通信できる)。なので、シンプルに見えるが、機能的にはかなり凝っている。
同様に凝った部分としては、底面の排熱システムにも工夫が見える。本製品の底面には車などでも目にするシャークフィン構造が採用されており、底面から吸い上げた空気を効率的に排気できるように工夫している。内部を確認したわけではないため断定はできないが、仮にファンを用いた強制排気であるなら、長期連続稼働が前提の通信機器としては珍しい設計思想に見える。
ただ、こうした工夫は本当に必要だったのか、という疑問も残る。
ルーターとして使わない「ランプモード」は予想外
本製品の出発点が、既存のWi-Fiルーターに対する「隠したい」という心理への批判にあるのだとすれば、本来問われるべきは、通信機器としての機能や機構をどこまで生活空間の中に溶け込ませられるかという点だろう。
その意味では、個人的には、クリスタルアンテナという技術的な見せ場が、結果的にデザインの方向性をかなり規定しているようにも感じた。メーカーとしては、アンテナを透明化することでデザインの自由度を高めた、という考え方なのだろう。しかし、完成した製品を見ると、「アンテナをどう美しく見せるか」という技術起点の発想が、まだ強く残っているようにも見える。
しかも、筆者が本当に驚いたのは、本製品が設定画面からWi-Fi機能を無効化し、ランプとしてのみ動作させる「ランプモード」を備えていることだ。Wi-Fiルーターでありながら、あえてWi-Fiルーターとして使わないモードを用意している点は、非常に珍しい。
もちろん、「雪に覆われた山頂」というイメージそのものはユニークだし、これを実際に製品化した実行力は高く評価したい。ただ、ランプとしてのみ使えるモードまで用意するのであれば、メーカー自身もこの製品を単なる通信機器というより、生活空間に置くオブジェとしての存在に重きを置いているはずだ。
インテリアとして、オブジェとして、あるいはルームライトとして、「これなら部屋に置きたい」と思わせる表現は、もっとあったのではないか? さらに自由な発想を求める余地があったのではないか? もっとブランドに共感できるストーリーを作れたのではないか?
そこに、本製品の面白さと、惜しさの両方があるように感じた。
ルームランプとしての使い勝手は?
ルームランプとしての使い勝手についてだが、明るさそのものはさほど高くない。あくまでも光るオブジェという印象で、せいぜい部屋の一部を照らす間接的な照明という使い方になるだろう。具体的には、中継機を廊下や階段踊り場などに設置しておけば、夜間のフットランプとしては十分に機能するという印象だ。
明るさは、本体上部のタッチセンサーで切り替え可能となっており、「オフ→明るさ低→明るさ高」と、タッチする度に切り替わる。筆者が購入した製品の個体差かもしれないが、ルーター側は若干タッチセンサーの感度が悪く、何度もタッチしないと切り替わらないことがあった(中継機側は問題ない)。
また、管理用のアプリ「HUAWEI AI Life」を利用することで、光り方を細かく調整することも可能だ。標準では、「ゴールデンマウンテン」というモードが設定されており、時間帯などに応じて色合いが自動的に変化する。また、「カスタマイズ」で、明るさと色温度を調整すれば、白っぽい雪山のようにもできる。
また、カウントダウン設定で30分後にオフにしたり、時間帯を指定して自動的にオン/オフを切り替えたりすることもできる。好みに応じて使い分けるといいだろう。
Wi-Fiルーターとしての性能も問題ないが、気になる点も
もちろん、利用者がWi-Fiルーターとして「も」購入する以上は、きちんとした性能も担保している必要がある。その点では、本製品に不満はない。以下は、木造3階建ての筆者宅にて、1階にルーター本体、3階入り口に中継機を設定して、iPerf3による速度を計測した結果だ。
| 通信 | 1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 |
| 上り | 1230Mbps | 343Mbps | 371Mbps | 356Mbps |
| 下り | 2070Mbps | 825Mbps | 480Mbps | 448Mbps |
※サーバー:MINISFORUM MS-01 Corei5-12600H/RAM64GB/1TB NVMeSSD/10Gbps SFP+/Proxmox 9.1 LXC(Ubuntu 24.04)
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
1階で2Gbps以上の実行速度を実現できているうえ、2階でも下りで825Mbpsと高いスピードを実現できている。3階に関しては、まさにメッシュらしい結果となっており、中継機の恩恵で、3階のどこにいても電波状況は良好で、おおむね400Mbpsの速度を実現できた。
個人的には、デュアルバンドのメッシュは効率があまりよくないので好みではないが、実用上の不満は感じられない。前述したように、本製品はライバル勢に比べてコスパ的に不利だが、性能的には文句なしという印象だ。
ただし、上記の結果は、実は標準設定のままでは実現できない。というのも、本製品は標準でWi-Fiの暗号化方式がWPA2に設定されており、このままだとPCやスマートフォンなどがWi-Fi 7に対応していたとしても、リンクされる速度の上限がWi-Fi 6の2401Mbpsまでになってしまう。
このため、前述した結果は暗号化方式をWPA2からWPA3に変更した状態で計測している。本製品を利用する場合は、暗号化方式の変更を検討することを強くおすすめする。なお、本製品は標準でMLOも無効になっている。Wi-Fi 7ならではの機能だが、互換性の問題もあるため、これは無効のまま使っても問題ないだろう。
このほか、気になった点としては回線設定もある。本製品は、国内の複数の通信事業者の通信方式に対応しており、transix(DS-Lite)、クロスパス(DS-Lite)、OCNバーチャルコネクト(MAP-E)、v6プラス(MAP-E)、IPv6オプション(MAP-E)であれば、回線の自動判別によるインターネット接続設定が可能になっている。
筆者宅は、ASAHIネットのDS-Lite方式、もしくはIPIP接続の固定IP接続なので、これらの対象外となっており、DS-Liteの手動設定でも接続できなかった。基本的には、公式に対応している回線環境での利用を推奨する。
なお、余談だが、DHCP方式で接続する場合、NATの方式として「シンメトリック」「コーン」「Full Cone」を選択可能となっていた。このモードが選択できるコンシューマー系のルーターは非常に珍しい。
選ぶ決め手は「好み」かどうか
以上、HUAWEIから発売された「WiFi Mesh X3 Pro」を実際に使ってみた。非常に個性的な製品で、コンセプトにも共感できるうえ、Wi-Fiルーターとしての性能も問題ない印象だ。
今回は詳しく紹介しなかったが、「HUAWEI AI Life」によってリモート管理も可能なうえ、セキュリティ機能や簡易的なペアレンタルコントロール機能も搭載している。さらにヒートマップを作成して電波状況をチェックでき、「スマートチェック」機能ではインターネットの接続状況、Wi-Fiの電波品質など、ネットワークの状態を段階的に自動チェックすることもできる。一般的な使い方なら困ることはない印象だ。
ただ、いかんせん価格が高い。実売3万7000円前後というのは競合製品に対して明らかにワンランク上の価格設定になる。この価格を、「ルームランプとしての価値」として考えられるかどうかが本製品を買うかどうかの分かれ目になるだろう。本製品を買うかどうかの決め手は、「雪に覆われた山頂」という、このデザインを気に入るかどうかの一点と言っても過言ではない。









