ニュース

グーグル、マルチデバイス時代のユーザー行動を新たな軸で分析

年代・性別は無関係、全行動データから分類される5グループとは

 グーグルは、マルチデバイス環境が進展する中で、テレビやスマートフォンなどマルチスクリーンを利用するユーザーの行動や傾向を分析し、結果を明らかにした。

 調査はグーグルではなくインテージが行ったもので、調査対象として参加した同一の個人から、複数種類のデータを追跡・収集する「シングルソースデータ」が用いられている。アンケート調査では難しい、ユーザーの詳細な行動データを調査できるのが特徴で、パソコンとスマートフォンについては常駐アプリケーションでアクセスしたURLなどの情報を収集し、テレビについてはスピーカーから出た音声を録音し定期的に送信する機器を使い、視聴している番組を判定する仕組みを用いている。

 調査対象者は関東在住で、テレビ、パソコン、スマートフォンの3つを所有する約500人。調査期間は6月1日~30日の1カ月間で、期間中の「メディア行動」がグーグルにより分析された。

グーグル マーケットインサイト統括部長の小林伸一郎氏
マルチデバイス環境が進展、その行動を分析した。タブレットは普及率が低く、今回は除外されている
マルチスクリーンの使い分けやトレードオフはどうなっているのか
シングルソースデータとして、アンケート調査では難しい、調査に参加した個人の行動データを詳細に分析

 調査結果をグーグルが分析したところ、「メディア行動」の似ている人を分類すると、特異な集団が出ることなく、5つのグループに分けられたという。ただし、分類しただけではどういった性格のグループか分からないため、ここで性別・年代、メディア行動などのデータのほか、事前に調査された購買行動などの意識調査を合わせて、各グループを特徴付ける「性格」が明らかにされた。

 発表を行ったグーグル マーケットインサイト統括部長の小林伸一郎氏は、自身が長く調査・分析に携わってきたことを振り返りながら、まず同氏が驚いた事実として、メディア行動の傾向で分けられた5つのグループには、性別・年代など、伝統的なマーケティングで使われるデモグラフィック属性が、ほぼ関係がなかったことを挙げた。すべてのグループに各年代が含まれており、この時点ですでに、性別や年代だけでメディア行動の傾向を語るのが難しいことが明らかになっている。一方で、分けられたグループにより、メディアに接触する総量は異なり、メディア行動そのものには大きな差が現れている。

5つのグループに分類されたため、これをクロス集計で分析し性格付けを行った
行動で分類した各グループには各年代が含まれた。一方、メディア接触総量には大きな差も

 以下の5項目は、小林氏が分析し、性格付けを行った5つのグループ。

キマジメ大食らい(22%)

キマジメ大食らい(22%)

 デバイスの利用の傾向は、全体的に利用時間が長く、テレビ番組はなんでも見て、情報番組も好き。スマートフォンでちょこちょこと情報はチェックし、雑誌の購読数は多い。購買行動はじっくりと比較検討する慎重派で、人付き合いはこれ以上広げなくてもいいと思っている。メディアは取捨選択せず追加していくタイプ。小林氏は「情報に対してアップアップの状態かもしれない」と付け加えている。

ハラハチブ自由人(15%)

ハラハチブ自由人(15%)

 テレビを見るのは夜のみで、パソコンも夜に利用。スマートフォンの利用も比較的少なく、パソコンを使う。雑誌はあまり読まない。地元意識や仲間意識のようなものが強く、広く浅い人付き合いは好まない。SNSも騒がしい空間と感じている。購買行動ではいちいち比較検討せず、リアル店舗よりもオンラインで予約を済ませるタイプ。小林氏は、「ものを買うのに熱意がなく、コミュニケーションも難しい。ガラケーでもよかったのに、という行動もある。(マーケティングにより)意識を変えるのが難しいタイプ」とした。

ヒマツブシ貴族(30%)

ヒマツブシ貴族(30%)

 持っているデバイスは常時オン。テレビもつけっぱなしで、テレビ番組はワイドショーが好き。パソコンやモバイルは調べるよりも、楽しむもの。時間があればパソコンやモバイルで動画やゲームを楽しむ。スマートフォンで写真や動画を頻繁に撮影。人の目が気になり、衝動買いが多い。生活の充実感はリアルな人間関係でも感じていたいタイプで、交際のための支出は削れない。小林氏は、「社会的なプレッシャーを強く感じている。LINEでいえば、“既読スルー”(既読だが反応しないこと)をできない人たちで、メディア行動は教科書的な部分が多い」と分析している。

探索ナルシスト(22%)

探索ナルシスト(22%)

 パソコンをほぼ使わず、メインデバイスがスマートフォンに移行。気になったことはすぐに調べ、家に帰ってもパソコンを立ち上げる前にスマートフォンで検索する。価格・情報サイトをスマートフォンから積極的に活用するが、ネットショッピングはパソコンの画面で慎重に行う。テレビは気になった番組だけをチェック。他人にどう見られるかではなく、自分の価値観を重視し、世間的なブランドとは一線を画したい。テレビで取り上げられると、避ける傾向。

社交的ハンター(12%)

社交的ハンター(12%)

 テレビよりもスマートフォン、パソコンの利用時間が長く、23時以降の深夜帯に利用が多いのが特徴。スポーツ番組は見るが、ワイドショーは見ない。テレビのニュースよりオンラインのニュースを活用。SNSの利用がとにかく活発で、オンラインはつながるためのもの、情報を得るためのものという位置付け。アクティブに情報を収集し、発信。自分が薦めたものは周りの人も買う。小林氏は「情報の受信ではなく、発信者として位置付けるのが有効」としている。

「情報・社会に対する考え方が行動に反映されている」

 小林氏からはさらに、テレビやスマートフォンなどを同時に利用するマルチスクリーンについても分析結果が明らかにされた。それによれば、テレビの総視聴時間のうち、パソコンやスマートフォンを同時に利用している時間は24%で、「パソコンが普及してテレビが見られなくなった」あるいは「モバイルが普及してパソコンが使われなくなった」というような、単純なトレードオフは見られないとした。

 小林氏は、「5つのグループは、情報や社会に対する考え方が、行動に反映されている。男性だから、女性だからといったものではない。“F1”とか“M1”と考えるが、そんな人はいない」と述べ、広告やメディアプランなどのマーケティングでは、こうしたメディア接触や行動に合ったプランニングが必要であるとした。グーグルではこうした分析をさらに進め、自社や広告クライアント向けに提供していく方針。

5つのグループの傾向と、広告を配信する際の対策など
テレビ視聴中のマルチスクリーン率
グループによりマルチスクリーン率は異なる
6月のサッカー代表戦の例。全体的に視聴が多くテレビ番組というよりイベントに参加という感覚に近いという。日本のピンチやゴールでSNSが活発になり、オーストラリアの好機には検索が活発化している
まとめ

(太田 亮三)