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マンガ学部・学科の学生からデジタル持ち込み求む、コミック誌編集部が講評

「デジタルマンガキャンパスマッチ2014」始動

 大学や大学院、短期大学、専門学校のマンガ学部・マンガ学科などで学ぶ学生とコミック誌編集部との出会いの場を、コンテストを通じて創出する取り組みがスタートする。国内のマンガ関連の教育機関や大手出版社が参加する「デジタルマンガキャンパスマッチ2014」の開催が発表された。学生のデジタルマンガ作品を学校経由で募集し、プロの漫画家やコミック誌の編集部らが審査・講評の上、大賞など選ぶほか、各編集部が自誌にふさわしい推薦作品を選定する。

 募集するのは、ストーリーマンガや1コマ/4コママンガなどの「デジタルマンガ部門」、キャラクターやヒーロー/ヒロインなどの「イラスト・キャラクター部門」、動くマンガや音の出るマンガ、インタラクティブ作品などの「未来のマンガ部門」の3部門。締め切りは12月26日で、来年3月に審査結果を発表する。

「デジタルマンガキャンパスマッチ2014」公式サイト。ロゴは、ペンタブレットのペンをモチーフにしたもの

 審査員は、「デジタルマンガ協会」の会長を務める漫画家の里中満智子氏はじめ、犬木加奈子氏、倉田よしみ氏、つだゆみ氏、山田ゴロ氏が務める。

 出版社からは、「コミック出版社の会」の会員企業の主要コミック誌編集部が参加する。秋田書店、KADOKAWA、講談社、集英社、小学館、少年画報社、日本文芸社、双葉社、芳文社など11社から30誌が参加予定だという。

 教育機関としては、京都精華大学、東京工科大学、大阪芸術大学、東京デザイナー学院、日本工学院専門学校、日本アニメ・マンガ専門学校、日本マンガ芸術学院など約40校が参加予定。応募は、それぞれ所属する学校・学科・コースごとにとりまとめ、教員の推薦で提出するかたちだ。「デジタルマンガ部門」「未来のマンガ部門」では、推薦を受けたいコミック誌の編集部を指定して応募する。

 なお、審査の結果、編集部の推薦作品として選ばれた作品であっても、各誌への掲載が保証されるものではないという。

 また、応募作品はデジタルデータでの受付となるが、特に電子出版向けの作品やインタラクティブ作品に対象を限定しているものではない。制作過程でデジタルツールを使用しており、最終的にデジタルデータで提出できるものであれば応募可能だ。紙での出版を想定して「ComicStudio」「CLIP STUDIO」のようなソフトで制作した作品やペンタブレットで描いた作品のほか、ほぼ手書きで制作した原稿をスキャンし、吹き出し内のフォントなど一部だけにデジタルツールを活用したような作品も含まれるという。

 デジタルマンガキャンパスマッチ2014の開催事務局によると、こうしたマンガ制作用のデジタルツールはプロの漫画家においても活用されており、導入率はカラー作品で6割、モノクロ作品で4割程度とみられる。また、現在では国内にマンガ分野を扱う教育機関が60校から100校あるとしており、早いところでは2001年ごろからマンガ制作用のデジタルツールの教育に取り組んでいるという。

 しかし、デジタルツールでマンガを制作することを学んだ学生にとって、そうしたキャリアを生かせる“出口”となるビジネス機会はあまり提供されていないのが実情。デジタルツールで制作される同じビジュアル作品でも、挿絵などのニーズのあるイラスト絵師が増えているのと対照的だとしている。マンガを成長産業と位置付けている日本において、今後、マンガの教育機関・学生とプロのコミック出版の現場をつなぐことが、未来のマンガを担う才能を育てるために不可欠と判断した。

 デジタルマンガキャンパスマッチ2014には、ComicStudio、CLIP STUDIOを販売するセルシス、ペンタブレットを販売するワコムのほか、eBookJapanなどの電子書籍ストアの運営企業も協賛する。

「出口の整備こそが人材育成につながる」と里中満智子氏

 9月3日、デジタルマンガキャンパスマッチ2014のキックオフミーティングが東京都内で開かれ、参加校や審査員、協賛企業の関係者らが集まった。

株式会社ヒューマンメディア代表取締役社長の小野打恵氏

 デジタルマンガキャンパスマッチ2014の事務局を務める株式会社ヒューマンメディアの代表取締役社長である小野打恵氏は、「マッチ」という名称について、プロの世界と学校を結ぶ「マッチング」と、学校対抗あるいは作家・学生対抗の「マッチ」を掛け合わせたものと説明。今年は初回ということで、まずは学校単位での募集としたが、来年度は同人作家や独学で学んだ人などにも開かれたコンテストにすることも検討しており、その時には「オープンマッチ」としたいと語った。

慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏

 実行委員長は、慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏が務める。小さいころに漫画家を目指していたという中村氏だが、20年前と比べてマンガにかかわる教育機関が増え、マンガ産業やコンテンツビジネスが活性化してきているかというと、そうではないと指摘。毎年、政府が作成する知財計画の中にコンテンツの人材育成が重要項目に入っているが、次のフェーズとして、育った人材によってマンガ産業、コンテンツビジネスが豊かになるかどうかの成果が求められているという。デジタルマンガキャンパスマッチは、民間だけでデジタル時代にふさわしい取り組みを行い、成果を上げていくという意義のある企画とした。

日本工学院クリエイターズカレッジカレッジ長の佐藤充氏

 日本工学院クリエイターズカレッジカレッジ長の佐藤充氏は、デジタルコミックやデジタルマンガと産業界を結ぶ企画として今回の取り組みがスタートしたことを説明。産業界と学校組織が直接結び付き、より多くの才能ある学生がチャンスを得られる場にしたいとした。

株式会社小学館常務取締役の横田清氏

 株式会社小学館常務取締役の横田清氏によると、これまではそれぞれの編集部で、マンガ学校の協力を得て出張編集を行ったりするなど、若い才能と出会う機会を探ってきたという。また、デジタルの時代になり、出版社が新人・若い才能とどう出会い、次の世代にどう繋げるのか、出版社の役割について各社が目覚めてきたと説明する。デジタルマンガキャンパスマッチ2014では、純粋に新しくて若い、今まで見たことがない才能と出会えるのを編集者が楽しみにしているとした。

審査員を務める漫画家の里中満智子氏

 漫画家の里中満智子氏は、「国の文化を発展させるには若手の人材育成が大事と言われているが、育成されるべき人材が自分の歩むべき道に夢と希望を持たないと人は育たない」「いくら腕や表現力を高めても、世に出る道が狭いと思ってあきらめてしまう人も多いため、出口の整備こそが人材育成につながる」とし、その出口の1つがデジタルだと指摘する。物流の問題などがある紙の出版物と違い、デジタルの出版物では一か八かの作品でも載せやすいという。デジタルマンガキャンパスマッチ2014を通し、若い人たちが自信と夢を持って存分に表現してもらいたいとした。

審査員を務める漫画家の先生方(左から山田ゴロ氏、犬木加奈子氏、つだゆみ氏、倉田よしみ氏)

(永沢 茂 / 山川 晶之)