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“完全変形”するPSYCHO-PASSのドミネーター、Cerevoが開発、2015年度内に発売
「From screen to the real」としてスマート玩具参入
(2015/7/20 06:00)
株式会社Cerevoは18日、アニメ「PSYCHO-PASS(サイコパス)」に登場する「ドミネーター」を再現したスマート玩具「DOMINATOR MAXI(仮)」を2015年度内に発売すると発表した。
PSYCHO-PASSは、人間の心理状態や性格を数値として計測できる「シビュラシステム」が導入された2112年の日本を舞台としたアニメ。監視社会において発生する犯罪を抑圧するための組織「公安局」で働く「刑事課一係」のメンバーたちの姿を描いている。劇中では、数値の中でも犯罪に関するものを「犯罪係数」として計測し、罪を犯していない人でも犯罪係数の数値が規定値を超えると裁かれる。ドミネーターは、「携帯型心理診断鎮圧執行システム」として、シビュラシステムと接続し、犯罪係数の計測と鎮圧・排除を行う特殊拳銃で、刑事が治安維持活動を行うためのアイテムとして登場する。
DOMINATOR MAXIは、劇中のドミネーター同様変形機構を備え、「パラライザー」から「エリミネーター」への変形、またはその逆が可能。変形時間も設定資料の2秒程度を実現しているが、作中ではもう少し短く描写されており、設定資料とアニメの間程度の変形時間にチューニングしている。観賞用にゆっくり変形するモードも搭載する。また、劇中同様に日高のり子さんによる100種類以上の録り下ろしボイスを内蔵。グリップを握ったり、特定の人に向けた場合に内蔵スピーカーから発声する。
カメラとWi-Fiモジュールを内蔵。スマートフォンを「シビュラシステム」としてDOMINATOR MAXIを接続することで、スマートフォンから変形を操作できるほか、カメラから取得した映像を元に顔認識を行い犯罪係数をAR表示(値はランダムあるいは指定可能)し、犯罪係数に応じて自動でモード変形する機能のほか、非執行時にはトリガーをロックする機能を搭載する。スマートフォンでカメラの映像をストリーミング表示することも可能。また、タッチセンサーを搭載。本体のグリップを握るだけで効果音を鳴らすことができる。
本体には100個以上のフルカラーLEDを搭載。通常時、変形時、執行時に合わせて発光状態が変化する。LEDの仕様では1677万色の発光が可能だが、劇中以外の色は発光しないとしている。なお、DOMINATOR MAXIを持った人を識別する機能はないとしているが、特定のボイスを再生するようプログラム可能で、「次の人が持ったら不正ユーザーとして利用できなくする」といった劇中同様のギミックも設定可能。
DOMINATOR MAXIのパーツや基板はオリジナルで設計。元オーディオメーカーや玩具メーカー、家電メーカーのエンジニアが集結しているCerevoの強みを活かし、ほぼ自社でメカニカル機構から基板まで作り上げている。重さはプロトタイプで800g程度。内部のギアやフレームには一部金属を用いているほか、外装はABS樹脂、あるいはポリカーボネート樹脂を利用する予定。今年の4月あたりから本格的に開発を開始したという。
PSoCを採用した基板(量産時には変更予定)は、組み込み用Linuxが動作し、ドミネーターの各動作を制御するほか、Wi-Fi経由での制御、内蔵カメラが取得した映像のリアルタイム伝送に利用する。プロトタイプはカメラを搭載していないため、Wi-SUN規格を利用しているが、量産時には2.4GHz帯のWi-Fiを利用する予定。ただし、舞台など特殊ユースでは混線を防ぐためにWi-SUN規格モデルを出す可能性があるとしている。
価格は、「個人の方が趣味で買える範囲内。10万円は絶対超えない価格で販売したい」(Cerevo代表取締役社長の岩佐琢磨氏)としている。アニメ業界では、某等身大ポップが2万数千円で売られていることもある中で、「紙ではなく(DOMINATOR MAXIのような)ある程度のレベルの商品でそれなりのお値段がするものでも、受け入れてもらえるのではないか」としている。販売方法は今のところ未定だが、限定数を設けての販売はしないとしている。
「From screen to the real」として今後も継続して商品投入予定
Cerevoでは18日、DOMINATOR MAXIの発表会を東京・秋葉原の「DMM.make AKIBA」で開催し、Cerevo代表取締役社長の岩佐琢磨氏が、PSYCHO-PASSに登場するキャラクター「宜野座伸元」のコスプレ姿で登場した。
同社は「XON SNOW-1」という、スマートフォンと接続するスノーボード用品を発表しており、電子機器やネットコネクティビティに強い家電業界と、これまで縁遠かったスポーツ用品業界をブリッジする製品を提供。今回のDOMINATOR MAXIも同様に、家電業界と縁遠かった玩具業界をつなぐ製品になるという。また、海外では家電の技術を玩具に持ってくる取り組みも活発化しており、“スマートトイ”が大きな潮流になっていると説明している。
もう1つ、DOMINATOR MAXIを製品化する背景として、趣味の逸品など、本当にいいものにはお金を惜しまない傾向があり、そういったものを出して欲しいという意見をいただく機会もあったという。また、アニメなどの作品内に登場するアイテムも高度に情報化しており、アイテムを玩具として世に出す際に、これまでの「音が出る」「光る」玩具から一歩抜き出た“Connected Toy”として、Cerevoが持つノウハウや技術が必要になってきたという。
Cerevoでは、今回の取り組みを「From screen to the real(S2R)」として展開。アニメやゲーム、映画なども対象としながら、劇中に出てきたアイテムを実際のユーザーが手に取ることができ、一品物の展示品ではなく普通に購入できるプロジェクトとして継続的に行うとしている。第1弾となる製品として「一番ヤバそうなものをやろう。システム的に複雑そうなものをやろう」という中で、DOMINATOR MAXIを制作した。
劇中に登場するアイテムは、昨今では3Dデータで制作されることが多く、DOMINATOR MAXIでも、製作委員会が3Dデータを提供している。ただし、映像での使用を想定した3Dデータには、どのような変形機構で構成されているのか、どのような金具で結合されているのか定義されてないほか、パーツに厚みが無かったり、電子部品を埋め込むスペースなど、実際に変形する構造物として制作するにはさまざまな壁があったという。「一番大変だったのはちゃんと動くこと」と述べており、アニメでの動きをうまくデフォルメしつつ違和感のない動きを実現した。
発表会には、司会としてニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏が登壇。事前にどのような商品か知らされてなかったというが、DOMINATOR MAXIを見て感嘆の声を上げた後、「PSYCHO-PASSは好きな作品で、アニメも全話視聴し、関連イベントでも司会者をさせていただいたが、ドミネーターを正面から見るのはこれが初めて」と興奮した様子。また、吉田氏は「IFTTTと連携させたい」と語り、「APIを提供することも技術的には可能」と岩佐氏もこれに応えた。
「なぜ大手メーカーをやめてハードウェアスタートアップをやるか」を端的に表した製品
Cerevoでは、一部の製品で大手メーカーとのコラボレーションを行っている。ドミネーターも複雑な機構を搭載した玩具ではあるが、一部を除きほぼ協業なしに製品化にこぎつけている。岩佐氏は「ここまでぶっ飛んだものは他社とやらないほうがいいかなと。こういったものが出てくると、どうして大手企業を辞めてこういう企業をやっているのかを説明しやすくなる。大手のメーカーでは作らない商品」として、ハードウェアスタートアップのメリットにつなげた。
複雑な機構を搭載するため価格帯も高価であり、数を見込めない商品でもある。しかし、中国のパーツベンダーと直接取引するといったハードウェアスタートアップとして培ってきた少量生産ノウハウもここで活きてくるという。EMSなどで設計からすべて丸投げではなく自社設計のため、工場と直で取引できる。また、小ロットでも、ある程度原価を掛けて定価も少し高くして、欲しい人に行き届くよう提供すれば、事業上黒字も達成できるようになったという。
ドミネーターの開発にあたっては、Cerevoが入居する「DMM.make AKIBA」を運営するDMM.comから話があり、PSYCHO-PASS製作委員会など関係各所と協力して製作にこぎつけたという。また、ドミネーター製作時に、製作委員会にも実機を披露したというが、「みなさんとっても目を丸くされるんですよね」(岩佐氏)としたほか、メカニカル機構が奏でる独特のサウンドも高い評価を得たという。