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人間の耳には聞こえない音響通信技術でおもてなし、空港アナウンスの多言語情報を送信、ヤマハが実証実験

「おもてなしガイド」アプリイメージ

 ヤマハ株式会社は24日、成田国際空港株式会社と新関西国際空港株式会社との協働により、ヤマハが開発した音響通信システム「おもてなしガイド」を活用した「音のユニバーサルデザイン化」に関する実証実験を実施すると発表した。プロジェクトはそれぞれ、「成田国際空港×ヤマハSound UD化プロジェクト」「関西国際空港×ヤマハSound UD化プロジェクト」として、9月1日から12月15日まで実施する。

 おもてなしガイドは、放送されているアナウンスの翻訳情報・文字情報を、スマートフォンからリアルタイムで確認できるアプリ。人間の耳には聞こえない周波数帯域を使用した音響通信技術により、信号を載せたアナウンスを館内のスピーカーで放送し、スマートフォンのマイク経由で信号を取得。アナウンスの内容は、アプリ内にあらかじめインストールされているライブラリから、信号に合致する情報を表示する仕組み。

 同アプリにより、日本語が分からない訪日観光客のほか、音声が聞き取りづらい高齢者・聴覚障害者にも空港内のアナウンスを届けることができる。実証実験の期間中は、空港内で対象となるアナウンスが流れている時にアプリを利用することで、インターネット接続なしに、アナウンスの内容を日本語を含む多言語の文字情報で表示する。

「おもてなしガイド」を利用して、日本語のアナウンスを多言語のテキストデータとして表示する

 成田国際空港では第2旅客ターミナル本館3階、国際線の保安検査場が対象エリア。検査場内のインフォメーションを多言語で提供する。関西国際空港では、第1ターミナルが対象エリアとなり、館内での定時案内放送(置き引き注意、館内全面禁煙など)を多言語で放送するが、対象アナウンスによりエリアが異なるとしている。対象言語は、両空港とも日本語、英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、タイ語、フランス語、スペイン語、インドネシア語。

 実験期間中は航空会社の協力を得て、自動放送だけでなく、迷子の情報や飛行機の運行情報など、緊急性が高く係員が肉声で実施するアナウンスの内容も、多言語化された文字情報として提供する実験も予定している。肉声アナウンスへの対応は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)との共同研究によるもので、配信側にアナウンスブックを内蔵し、音声認識により該当する情報をブックから参照してデータ化し、おもてなしガイドに配信する。

 おもてなしガイドのメリットとして、既存の音響設備を利用できるほか、翻訳情報が必要ない人には通常のアナウンスにしか聞こえないため、利便性を損なわないとしている。対応OSはiOS 7.0以上。Android版は現在開発中。空港の放送設備を利用した実証実験は今回が初としている。

(山川 晶之)