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マネーフォワードとSBIホールディングスが資本提携、FinTechの新技術・新サービス共同開発

 SBIホールディングス株式会社は25日、家計簿アプリやクラウド型会計ソフトなどを提供する株式会社マネーフォワードへ出資することで合意したと発表した。あわせて、FinTech(Finance×Technology)事業領域での新技術・新サービスをの共同開発で業務提携することに合意した。

(左から)SBIホールディングス株式会社代表取締役執行役員社長の北尾吉孝氏、株式会社マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏、住信SBIネット銀行株式会社代表取締役社長の円山法昭氏

 マネーフォワードが実施する総額約10億円の資金調達で、同社の既存株主であるジャフコのほか、今回新たにSBIホールディングスと株式会社静岡銀行が出資することで合意した。なお、具体的な出資額の内訳は非公開。

 業務提携では、住信SBIネット銀行株式会社およびSBIベネフィット・システムズ株式会社とマネーフォワードとの協業を発表した。

 まず、住信SBIネット銀行については、同行の顧客専用の家計簿サービス「マネーフォワード for 住信SBIネット銀行(仮称)」を11月をめどに提供開始する。独自機能も搭載する予定だが、詳細は未定。

 また、住信SBIネット銀行が公式APIを提供。同APIを用いてマネーフォワードと公式連携することで、よりセキュアで便利なサービスを開発できるとしている。APIの具体的な機能は今後検討するが、銀行が公式APIを他業種に提供するのは国内銀行ではおそらく初めてだとしており、世界的に見ても先進的な取り組みだという。住信SBIネット銀行では25日付けで「FinTech事業企画部」を設置し、マネーフォワードとの連携に向けて活動していく。

株式会社マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏

 あわせて、マネーフォワードは今後の事業戦略として「Open Bank API」の実現を目指すことを表明した。銀行が保有している顧客の資産残高情報や入出金履歴などのデータを、銀行および顧客の同意のもとで銀行外のサービスで利用できるようにする仕組みだ。正確なデータをセキュアにリアルタイム連携できるため、例えば住宅ローンの借り換えやリアルタイム融資など、新しい金融サービスを提供できるようになるという。

 マネーフォワードによれば、Open Bank APIの実現に向けては法制面での調査が必要だとしているが、住信SBIネット銀行と開発チームを組成するとともに、大手金融SIベンダーや他の銀行とも協議中だとした。

 なお、マネーフォワードが金融機関の提供するAPIで公式連携するのは、クレディセゾンに続く第2弾。マネーフォワードでは今後、こうした公式連携をさらに推進していくという。

 このほか、住信SBIネット銀行では、マネーフォワードが展開する個人事業主・中小企業向けクラウド型業務ソフト「MFクラウド」のユーザー向けに、融資やビジネスカードなどの金融サービスを提供する連携も行う。

 一方、SBIベネフィット・システムズは、確定拠出年金(401k)におけるレコードキーピング業務を行う会社。同事業領域における新技術・新サービスをマネーフォワードと共同開発し、企業・個人の確定拠出年金への加入促進や“確定拠出年金の見える化”に取り組んでいく。

 マネーフォワードはこのほか、今回新たに資本提携した静岡銀行とも業務提携。両社の経営資源を活用した新たなFinTechサービスの共同開発などに取り組む。

 25日に行われた記者会見に出席したSBIホールディングス代表取締役執行役員社長の北尾吉孝氏は、マネーフォワードとの資本・業務提携について、SBIグループの“W FinTech”戦略の第1弾と表現した。

SBIホールディングス株式会社代表取締役執行役員社長の北尾吉孝氏

 北尾氏によると、SBIグループの金融生態系は、第1ステージの「インターネット金融生態系の構築」、第2ステージの「生態系内のシナジー効果の具現化」を経て、第3ステージの「国内外の専門的FinTech企業との資本業務提携による企業生態系の充実」を目指す段階だという。すなわち、W FinTechとは、グループ内のFinTechとグループ外部のFinTechを連携させるという意味だ。

 そのため、例えばグループ内の家計簿サービス「MoneyLook」については今後、投信アプリと統合させて資産管理ツールとして提供するなど、マネーフォワードとサービスが重複する既存サービスの方向転換も進めていくという。

 さらにマネーフォワードとは今後、住信SBIネット銀行やSBIベネフィット・システムズにとどまらず、グループ各社を包括した家計簿サービスやMFクラウドとの連携サービスを開発・提供していく考えだ。また、SBIグループが出資する世界の金融機関とも連携し、マネーフォワードの海外戦略にも協力していくとした。

(永沢 茂)