小・中学生の携帯電話所有率が低下、高校生にはPC離れの兆し?


 内閣府がとりまとめた「青少年のインターネット利用環境実態調査報告書」によると、小・中学生における携帯電話の所有率や携帯インターネットの利用率が低下傾向にあるらしいことがわかった。一方、高校生においてはパソコンの使用率が低下傾向を示しており、わずかだが小・中学生の使用率を下回った。

 調査は、2009年10月22日から11月8日まで、10歳から17歳までの2000人を対象として、調査員による個別面接方式で実施。1369人から有効回答を得た。内訳は、小学生が496人、中学生が524人、高校生が346人、高校中退など在学中でない人が3人。

 携帯電話(PHSを含む、以下同)の所有率(自分専用と家族共用の合計)は、小学生が21.8%、中学生が46.8%、高校生が96.0%だった。

 比較のために、前回、内閣府が2007年に実施した「第5回情報化社会と青少年に関する意識調査」のデータから当時の使用率を換算してみたところ、小学生が31.3%、中学生が57.6%、高校生が96.0%だった。内閣府では、データの取り方が異なるため単純比較はできないとしながらも、小・中学生で携帯電話の所有者が減少傾向にあると考えられるとしている。

 携帯電話所有者のうち、インターネット(メール、サイトへのアクセス)を利用しているとしたのは、小学生が76.9%、中学生が97.6%、高校生が99.4%だった。小学生では通話のみの利用者が2割以上いる一方で、中学・高校生は携帯電話所有者のほとんどがインターネットを利用していることがわかる。

 なお、携帯電話の非所有者を含めた回答者全体における携帯インターネット利用率は、小学生が16.7%、中学生が45.6%、高校生が95.4%となる。前回調査では小学生が27.0%、中学生が56.3%、高校生が95.5%だったため、こちらも小・中学生における利用率が低下傾向にあることになる。

 携帯電話の所有率と携帯インターネットの利用率が高校生ではほとんど変化していない一方で、小・中学生で低下傾向にあるのだとすれば、文部科学省が2009年1月に出した通達の結果、小・中学校への携帯電話の持ち込みを原則禁止とする施策が徹底されたことの影響も考えられそうだが、報告書では要因については特に言及していない。

 パソコンの使用率は、前回調査で小学生が77.4%、中学生が81.2%、高校生が88.6%だったのに対し、今回は小学生が84.1%、中学生が87.0%に上昇。逆に高校生は82.4%へと低下している。

青少年が携帯電話を持つこと・ネットを使うこと前提の施策を

 内閣府は7日、「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」の第6回会合を開催し、報告書について説明した。内閣府では、小・中学生における携帯電話の所有率が減少傾向を示したことに関連して、「内閣府としては、持たないということが賢いということにはしたくない。今回はたまたまこういう調査結果になったが、やはり広い意味で必需品であるため、持った上で賢く使っていくこと、持った上でリテラシーを高めていくことが必要と考えている」との方向性を示した。また、利用実態調査については2010年も実施し、正確な比較ができるよう進めていく予定だとした。

 会合では、検討会のメンバーであるPTA関係者から、小・中学校への携帯電話持ち込み原則禁止を示した文部科学省の指針が、保護者や学校関係者に勘違いを生み出す原因になっているといった指摘も挙がった。小・中学生には持たせなければいいのだという風潮につながったり、さらには、持っていないはずなのだから、保護者や学校は携帯電話のリテラシー問題にタッチしなくてもいいといった誤解につながるという。

 その一方で、子どもの安全のために連絡手段として持たせる必要があると主張する保護者が存在し、また、すでに携帯電話を持っている小・中学生が現実にいる以上、保護者や学校がきちんと目を向けなければ、子どもたちはリテラシーのないまま陰で携帯電話を使い続けることになる。持ち込みは認めるが校内での使用は制限するとの指針が示されている高校生と、持ち込みじたいを原則禁止する小・中学生を明確に分ける考え方が、現実的にはすでに厳しくなっているとの指摘もあり、内閣府が今回、青少年が携帯電話を持つことを前提にするとのスタンスを明確に示していることについて評価する声もあった。

 なお、小・中学生の携帯電話所有率が低下しているという調査結果については、PTAの現場の感覚からすれば疑問だという声もあり、調査の仕方にもよるのではないかとの指摘もあった。また、保護者が注意を向けていない携帯ゲーム機からもインターネットを利用できるようになっていることから、携帯電話だけを規制したところで対処できていないとの意見もあった。


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(永沢 茂)

2010/4/8 11:21