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2011年までに全教員に情報モラル指導力を、内閣府の検討会が提言

“青少年ネット規制法"受けた政府の「基本計画」に

 内閣府の「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」が7日、第4回会合を開催し、政府への提言の内容を固めた。情報モラル教育の推進のために、2011年度までに全教員に情報モラル指導能力を身に付けさせることなどを盛り込んだ。

 提言は、4月1日に施行された「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(青少年インターネット環境整備法、いわゆる“青少年ネット規制法”)」に基づき、政府が策定する「基本計画」に盛り込むべき内容をまとめたもの。有識者、保護者、教育関係者、インターネット事業者団体などからなる検討会が2008年10月から議論してきた。


学校における情報モラルの教育・啓発を重視

第4回会合の最後にあいさつした小渕優子内閣府特命担当大臣

第4回会合の終了後に記者会見した、検討会座長の清水康敬氏(東京工業大学名誉教授、左)と藤原静雄氏(筑波大学法科大学院教授、右)
 提言では、青少年インターネット環境整備法の基本理念である、「18歳未満の青少年の適切なインターネット活用能力習得」「青少年の有害情報の閲覧機会の最小化」「民間の自主的・主体的取り組み尊重」という3点を踏まえた上で、1)青少年、2)保護者、3)事業者、4)国民――という4つの立場の者に対しての基本方針を掲げている。

 具体的には、1)青少年が自立して主体的にインターネットを利用できるようにするための教育・啓発の推進、2)保護者が青少年のインターネット利用を適切に管理できるようにするための啓発活動の実施、3)事業者等による青少年が青少年有害情報に触れないようにするための取り組みの促進、4)国民によるインターネット上の問題解決に向けた自主的な取り組みの推進――である。

 具体的な施策としては、「教育・啓発」「フィルタリングの性能向上と普及」「民間団体の支援」の3つを柱とする。

 特に教育・啓発については最も根本的な施策にあたり、中でも学校における施策の推進を最初に挙げた。まず、すべての小・中・高等学校において子供の発達段階に応じて情報モラル教育を実施するとしているが、これは喫緊の課題であるにもかかわらず、教える立場である教員側の能力が追いついていない状況だという。そこで、年配の教員を含む現役の教員における情報モラル指導能力の底上げを図ることとし、2011年度までにおおむねすべての教員に情報モラル指導能力を身に付けるようにするとしている。学校に専門家を派遣して指導主事や教員をサポートするほか、指導主事らに対する研修などを実施する。

 検討会では、目標年度を区切る点について賛否あったが、現場のモチベーションや確実な推進のために具体的に設定した。文部科学省が作成した、「新学習指導要領」に対応した「教育の情報化に関する手引」において、そのうちの1つの章を情報モラル教育について充てて重要視していることなども考慮した。また、“ネットいじめ”に対応する相談窓口の整備も挙げている。

 学校においてはこのほか、入学説明会などでの保護者に対する啓発活動などを求めている。情報モラルに関心のある保護者においては知識の習得や取り組みが進む一方で、最も問題を訴求すべき関心のない保護者にはなかなかアプローチできないままとなっており、格差が拡大することが懸念されることから、保護者全員が集まる場での効果的な啓発活動を実施することとしている。保護者に対してはこのほか、携帯電話の利用に関する親子のルール作り、インターネット利用によるトラブルや犯罪に巻き込まれることを防止する方法、プロフなどを利用する上でのリスクなどの啓発資料を提供し、家庭での取り組みを支援する。

 3本柱以外の施策としては、サイバー犯罪の取り締まりの強化や、捜査のための事業者などとの協力関係の構築などを挙げている。教育・啓発が大事だとしながらも、現在、実際に起きているトラブルや事件に対しては、学校現場などでは対応が難しいとして、検討会の委員からは取り締まりの強化などを求める意見が挙がっていた。


環境整備には、保護者らも関心を持つことが重要

 今回の提言を受けた「基本計画」は、パブリックコメントを経た後、内閣総理大臣を会長とし、関係閣僚からなる「インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議」が6月に決定する予定。

 検討会の第4回会合には、小渕優子内閣府特命担当大臣があいさつし、「提言をしっかり生かし、なんと言っても子供たちが安心してインターネットを使える環境を整備していくよう、政府としても『基本計画』を速やかに策定していく。これからも多くの皆様に関心を持っていただき、それぞれの立場から意見をいただきたい」と述べた。

 また、検討会の座長を務めた清水康敬氏(東京工業大学名誉教授)は、「青少年がよりより形で、効果のあるような形でインターネットを活用していくことが重要。それには、政府、学校教育関係者、民間の事業者、地域のコミュニティや、特に保護者が重要」と訴えた。


関連情報

URL
  青少年インターネット環境の整備等に関する検討会
  http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/kentokai/index.html
  文部科学省 「教育の情報化に関する手引」について
  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.htm

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( 永沢 茂 )
2009/04/08 12:48

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