スマートグリッドにもWi-Fi技術が最適、Wi-Fi Allianceが説明会


Wi-Fi Allianceのマーケティングディレクターを務めるKelly Davis-Flener氏

 Wi-Fi Allianceは20日、スマートグリッドに対するWi-Fiの取り組みや、ピアツーピア接続のための新規格「Wi-Fi Direct」の状況などについての説明会を開催した。

 Wi-Fi Allianceのマーケティングディレクターを務めるKelly Davis-Flener氏は、Wi-Fi機器の相互接続性テストを行うWi-Fi Allianceの活動を紹介し、2000年3月以降、認定機器は7000以上、2009年のWi-Fiデバイスの出荷実績は5億台以上に上ると説明。2010年も16%の成長率で推移する見込みで、Wi-Fiはあらゆる機器に搭載されようとしているとした。

2003年以降、Wi-Fi認定製品は7000以上に2009年のWi-Fiデバイスの出荷実績は5億台以上

 また、配電網(グリッド)の効率向上や、家庭内機器のネットワーク化により省エネやCO2排出量の削減を目指す「スマートグリッド」技術にも、既に多くの機器で利用されているWi-Fi技術は有効だとアピールした。

 スマートグリッドについては、米国でスマートグリッドが最大限の効果を発揮した場合、石炭火力発電所66カ所に相当する4億4200万トンのCO2排出量が削減可能だとする米国エネルギー庁の試算を紹介。オバマ政権も計34億ドルの資金投入を表明しており、インテリジェント化した電力メーター「スマートメーター」も2009年には運用台数が7600万台に上るなど市場が急拡大しているため、機器メーカーや家電メーカーなど日本企業の果たす役割も大きいとした。

スマートグリッドのメリットスマートメーターの採用も世界的に増加

 Davis-Flener氏は、多数の機器をネットワーク化していく上で、Wi-Fiは既に広く利用されている成熟したテクノロジーで、スマートグリッドに欠かせない技術だと説明。また、スマートグリッドにとってプライバシーとアクセスコントロールは何よりも重要だが、Wi-FiにはWPA2の仕組みもあり、相互接続性やセキュリティの面からもWi-Fiを利用するのが最適だと訴えた。

既に成熟したWi-Fi技術がスマートグリッドにも最適とアピールセキュリティ面からもWi-Fiの優位性を強調

 スマートグリッドではこれまで、短距離無線規格の「ZigBee」の利用が想定されていたが、Wi-Fi Allianceは3月17日にZigBee Allianceとの間で協業に合意している。現在は、ホームネットワーク向けのエネルギー管理プロトコル「ZigBee Smart Energy 2.0」にWi-Fiの技術を統合する作業を進めており、政府機関や業界団体との協議も進めていると説明。低消費電力のWi-Fiチップセットの開発も進んでおり、センサーやデバイスからPCまで、幅広い範囲をカバーできるWi-Fiの優位性をアピールした。

各種のデバイス・製品がWi-Fiでスマートグリッドとインターネットの双方に接続ZigBee Allianceとも協業し、エネルギー管理プロトコルにWi-Fi技術の統合を進める

 また、今後注目の技術としては、デバイス同士をピアツーピアで接続するための「Wi-Fi Direct」の仕様策定が完了し、2010年中には製品がリリースされる見通しだと説明した。「Wi-Fi Direct」は、Bluetoothのような近距離での無線通信を想定した、アクセスポイントを介さずにWi-Fiデバイス同士で直接通信を行うための規格。従来用いられてきた「アドホックモード」の利便性を向上させ、WPSやWPA2にも対応する。既存のWi-Fi製品も「Wi-Fi Direct」に対応可能なため、近距離無線通信でもWi-Fi技術の利用がさらに進むとした。

Wi-Fi機器同士を直接接続する「Wi-Fi Direct」対応製品は年内リリースの見通し「Wi-Fi Direct」は短距離の無線通信を想定。既存のWi-Fi機器もサポートする

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(三柳 英樹)

2010/4/20 18:46