スマホ利用者情報に対する事業者のリテラシー不足、端末IDの扱いなどが課題に
総務省のWGが中間まとめ案、具体策を今後検討
スマートフォンを経由した利用者情報の取り扱いについて検討している総務省のワーキンググループ(WG)が10日、中間とりまとめ案を報告した。
総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」では、スマートフォンが急速に普及する一方、位置情報などの情報を利用者が意図しない形で外部に送信するアプリなどが問題となっていることから、利用者情報に関する課題について検討の場を設けることを提言。これを受けて、研究会の下に「スマートフォンを経由した利用者情報の取扱いに関するワーキンググループ」が設置され、2012年1月に第1回の会合が開催された。
中間とりまとめは、これまでの4回の会合での発表・議論を踏まえ、スマートフォンにおける利用者情報の現状や、国内外の動向や制度などをまとめたもの。スマートフォンにおける利用者情報へのアクセスの現状については、iOSやAndroidといった各OSにより一定の制限が行われており、アプリについても一定の審査やポリシーが存在するが、ユーザーが十分に理解・把握できないままに利用者情報へのアクセスを同意している現状があると指摘。アプリが端末情報にアクセスすることの通知・同意画面については、5~6割の利用者は理解し確認しているが、「同意しないとアプリが利用できない」「同意・許可した後にどのようなことが起こるのかわからない」といった不満を多くのユーザーが持っているといった意識調査の結果を挙げている。
国外の動向については、EUが1月に公表した個人データ保護規則案で、個人からの求めに応じて個人データの削除を義務化する「忘れられる権利」の導入や、サービス導入に際しプライバシー対策を考慮する「プライバシー・バイ・デザイン」原則の導入などが盛り込まれていることを紹介。また、米国ではホワイトハウスが2月に「消費者プライバシー権利章典」を発表し、行動ターゲティング広告などユーザー行動の追跡を拒否できる仕組みの導入を求めていることなどを挙げている。
事業者が利用者情報をどう取り扱うべきかといった具体的な提言については、ワーキンググループでの議論がこれから行われるため、現時点では今後の最終的な提言に向けた検討課題として、「ただちに氏名に到達できなくても、特定の契約者や端末などに付与された契約者固有のID(IMEI、UDIDなど)についてどのように取り扱うことが適当であるか」「利用者情報の第三者提供は、どのような範囲・方法でなされるべきか」といった個別の論点を列挙している。
また、利用者情報の取り扱いは、関係する事業者において適性に行われるべきものだが、スマートフォンの利用には自己責任が求められる側面もあるとして、利用者側で注意すべき事項を「スマートフォンプライバシーガイド」として別途まとめている。
出席した研究会の構成員からは中間とりまとめ案に対して、「これまでのいろいろな検討の場では、スマートフォンはPCに近いもので、利用者側にもリテラシーが必要だといった意見もあったが、スマートフォンが従来型携帯電話の後継としてこれだけ普及している状況で、そういう位置付けではいけないのではないか。リテラシーという点では、サービス提供側のリテラシーもまったく足りておらず、やってはいけないことが現実に行われているのが実情ではないか。利用者への啓発も大事だが、サービス提供側にきちんとやってはいけないことを示すべき」といった意見が挙がった。
このほか、「個人情報保護法や電気通信事業法といった枠組みだけでなく、国としてこの問題にどう取り組むかを考えていくべき」「現状はプラットフォーム提供事業者とアプリ提供事業者間での取り決めでしかないが、そうしたルールを決めていく場に日本の事業者や行政も加わっていくための取り組みを進めていくべき」といった内容を今後の提言に盛り込んでほしいとする意見が寄せられ、今後のワーキンググループでさらに検討を行なっていくことが確認された。
関連情報
(三柳 英樹)
2012/4/10 17:43
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