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「CEATEC AWARD 2025」発表、低軌道衛星通信、「痛み」の感覚の共有、マスクの振動による音声認識が大臣賞受賞

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は10月7日、「CEATEC 2025」にて展示される技術・製品・サービスなどを対象とする「CEATEC AWARD 2025」の、大臣賞ならびに部門賞を発表した。ここでは、先行展示された内容をもとに、主要な受賞展示を紹介する。

 CEATEC 2025は、10月14日~17日の4日間、千葉県千葉市の幕張メッセで開催される。

小型・軽量な5G NTN通信対応のLEO衛星通信ユーザー端末
シャープ「電子制御式フェーズドアレイアンテナ搭載 小型・軽量LEO衛星向けユーザー端末試作機」

LEO衛星通信ユーザーターミナル(左)、LEO衛星通信ユーザー端末試作機(右)

 シャープ株式会社は、「電子制御式フェーズドアレイアンテナ搭載 小型・軽量LEO衛星向けユーザー端末試作機」を展示する。この展示は総務大臣賞を受賞した。

 LEO(Low Earth Orbit:低軌道)衛星通信は、海上や山地、被災地などのセルラー通信が困難な場所においても、衛星からの電波を利用することで通信を可能にする手段の1つ。

 現在の衛星通信においては、各事業者が独自の通信方式を採用しており、通信規格の標準化が普及に向けた課題になっている。同社によると、5G通信の技術をLEO衛星通信に活用することで、途切れにくいネットワークの実現やアンテナ部材の小型・軽量化、セルラー通信との部材共通化による低コスト化が可能になるという。同社は衛星通信の5G化に向け、国際標準規格の策定を主導している。

5G NTN通信対応 LEO衛星通信ユーザーターミナルの概要
5G NTN実現に向けた取り組み

 総務大臣賞の選評では、既存のLEO通信端末と比較して大幅な小型、軽量化の実現や5G NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)への対応により、今後の社会インフラを支える技術として評価されたほか、次世代通信規格において日本の存在感を示せる将来性に期待できるとされた。

「痛み」を共有することで相互理解を深める
NTTドコモ「“痛み”の共有による相互理解の深化を実現するプラットフォーム」

プラットフォームの概要

 株式会社NTTドコモは、「“痛み”の共有による相互理解の深化を実現するプラットフォーム」を展示する。この展示は経済産業大臣賞を受賞した。

 「痛み」は、人によって感じ方がそれぞれ異なるため、客観的評価や言語化が難しい。このプラットフォームは身体的・心理的な痛みを、脳波を解析することで数値化し、共有するもの。現時点では外的な痛みに限定されているが、将来的には心理的・内面的な痛みの検知、嗅覚や味覚の刺激への応用も目指しているという。

 経済産業大臣賞の選評では、「人間拡張基盤」という蓄積されたデータをもとに共有元と共有先の個人差を比較・評価し、共有先にとって最適化された形で感覚や動きを共有するオリジナル技術や、そのプラットフォーム化が評価された。

マスク表面の微細な振動で音声入力を実現
村田製作所「AI時代の信頼できる音声入力を実現するマスク装着型デバイス mask voice clip」

マスク装着型デバイス「mask voice clip」

 株式会社村田製作所は、「AI時代の信頼できる音声入力を実現するマスク装着型デバイス mask voice clip」を展示する。この展示はデジタル大臣賞を受賞した。

 話したときにマスク表面で発生する微細な振動を、圧電フィルムセンサーで検出するデバイス。一般的なマイクでは、周りに複数話者がいる環境や騒音下では、音声認識の精度に悪影響を及ぼしてしまう。マスクの微細な振動を検知することで、話者本人の声のみを取り出すことができ、より高精度な音声認識を実現できるという。

mask voice clipの概要

 デジタル大臣賞の選評では、製造業や病院といった、騒音環境下やマスク着用が必要な状況での音声入力の次世代インタフェースとして、その活用性が評価されたほか、マスクデバイス以外でのソリューションやサイレントスピーチ(声を発さずに音声入力を行う技術)への応用など、将来的な可能性にも期待が寄せられた。

CEATEC AWARD 2025 受賞一覧

 CEATEC AWARD 2025において各賞を受賞した展示は以下の通り。なお、グローバル部門賞は会場審査のため、CEATEC 2025の会期中に発表される。

総務大臣賞

  • 電子制御式フェーズドアレイアンテナ搭載 小型・軽量LEO衛星向けユーザー端末試作機(シャープ株式会社)

経済産業大臣賞

  • “痛み”の共有による相互理解の深化を実現するプラットフォーム(株式会社NTTドコモ)

デジタル大臣賞

  • AI時代の信頼できる音声入力を実現するマスク装着型デバイス mask voice clip(株式会社村田製作所)

イノベーション部門賞

  • 様々な素材をタッチパネルやスイッチに変えるセンサー / ZINNSIA(ジンシア)(株式会社ジャパンディスプレイ)
  • 多言語同時通訳とマルチスポット再生技術(国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT))
  • エッジ向けアナログリザバーAIチップを用いたリアルタイム学習機能付きセンサシステム(TDK株式会社)
  • 次世代AIエージェント「Frontline Coordinator - Naivy」(株式会社日立製作所)
  • AIの進化に貢献する、環境配慮型チップオンウエハダイレクト接合技術の開発(ヤマハロボティクス株式会社/産業技術総合研究所/東京理科大学)
  • 入浴中の心拍センシング(リンナイ株式会社)

ネクストジェネレーション部門賞

  • 触れて感じる、次世代の4D映像体験(TouchStar(東北大学事業化プロジェクト))
  • リアラボAI ― 探索からラボ実験まで、研究の現場を動かす自律型AIエージェント(ロート製薬株式会社/株式会社フツパー)

コ・クリエイション(共創)部門賞

  • ビューティ&ヘルスケアを変革する、産業を越えた共創 ― RNAで繋がる花王・アイスタイル・キリンによる未来創出 ―(RNA共創コンソーシアム)

モビリティ部門賞

  • ハンズフリー半自動車いす「Feeling」(Humonii)